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地域とインフラ

地域公共交通の維持とは? バスや鉄道が減ると何が起きるのか

地域公共交通とは、路線バスやローカル鉄道、タクシーなど、だれでも使える地域の移動手段のことです。利用者と運転者の両方が減り、減便や廃止が各地で続いています。車を運転しない高校生や高齢者にとっては、通学や通院ができるかどうかに関わる問題です。

データ確認日:

原因から影響までの流れ

  1. 人口減少・利用者の減少
  2. 運転者の不足
  3. 減便・路線の廃止
  4. 通学・通院・買い物が難しくなる

矢印は、統計的に証明された因果関係ではなく、主な伝わり方を示しています。

いま何が起きている?

国土交通省は、だれもが使える移動手段がない、または使いづらい地域を「交通空白」と呼び、市区町村に調査をしています。2026年5月15日時点の集計では、何らかの対応が必要な「交通空白」地区は全国で2,740地区、892市区町村にのぼりました。[1]

この数は、2025年の調査より683地区増えています。国土交通省は、市区町村が地域の課題をより細かく調べるようになったことが、増加の一因だと説明しています。[1]

担い手も減っています。バスの運転者は2019年度から2022年度のあいだに約2.4万人減りました。国土交通省は、運転者の確保を「喫緊の課題」としています。[3]

数字で見る

「交通空白」地区の対応状況 (2026年5月15日時点の集計、計2,740地区)
  • 実施中 (取組に着手) 1,274地区
  • 準備中 (方針は決定) 1,124地区
  • 検討中 (方針をこれから検討) 342地区

出典: 国土交通省「交通空白」解消本部「「交通空白」解消に向けた取組方針2026」

2,740地区のうち、すでに取組を始めている地区は1,274地区 (46.5%) です。方針をこれから検討する地区も342地区 (12.5%) 残っています。[1]

このほか、いまは「交通空白」ではないものの、対策がなければ将来そうなる可能性が高い「要モニタリング地区」が1,498地区あります。[1]

鉄道も厳しい状況です。新幹線や大都市の路線などを除いた、中小の鉄道会社や第三セクターの鉄道を地域鉄道といいます。2023年度は96社のうち80社が、鉄軌道業の経常収支で赤字でした。2019年度も95社のうち74社が赤字で、長く続いている状態です。[2]

なぜ起きる?

主な伝わり方は、需要と供給の両方にあります。需要の面では、人口が減り、通勤や通学で乗る人が少なくなると、運賃収入が減ります。収入が減ると便数を減らさざるをえず、不便になるとさらに利用者が離れるという循環が起きやすくなります。

供給の面では、運転者が足りません。国土交通省は、人口減少や運転者などの担い手不足によって、バス路線などの減便や廃止が相次いでいるとしています。[5]

一方で、移動手段を必要とする人は増えています。高齢者の運転免許の返納や、学校・病院の統廃合によって、遠くまで通う必要がある人が増えているためです。[5]

つまり「乗る人が少ないから減らす」だけでは説明できず、必要とされているのに運ぶ人がいない、という面もあります。どの要因が大きいかは、地域によって違います。

よくある誤解

よくある誤解

「赤字なのは、その会社の経営努力が足りないからだ」

実際は

2023年度は、地域鉄道96社のうち80社が鉄軌道業で赤字でした。約8割の会社に共通していることから、個々の会社の努力だけでは解決しにくい、構造的な問題だと考えられます。[2]

よくある誤解

「給料を上げれば、運転者はすぐに集まる」

実際は

バス運転者の平均年間給与は、2022年の399万円から2024年には463万円に増えました。それでも国土交通省は、運転者の確保は依然として喫緊の課題だとしています。賃金だけでなく、働く世代そのものの減少も関係します。[3]

よくある誤解

「「交通空白」は、山あいの一部の集落だけの話だ」

実際は

対応が必要な「交通空白」地区は892市区町村にあり、その地区に住む人は合わせて1,720万7千人です (2026年5月15日時点の集計)。多くの人に関わる問題です。[1]

どんな選択肢がある?

どれかひとつが正解というわけではありません。それぞれに、期待できることと、負担や副作用があります。

税金で路線を支える

期待できること
運賃収入だけでは続かない路線でも、通学や通院の足を保てます。
負担・副作用
自治体や国の財政負担が続きます。利用者が減り続ける場合、どこまで支えるかの線引きが必要になります。

小さな車両や予約制の交通に切り替える

期待できること
予約に応じて走る乗合タクシーや、住民などが自家用車で有償で運ぶ「公共ライドシェア」は、利用者が少ない地域でも続けやすい方法です。
負担・副作用
予約の手間がかかり、大人数を一度に運ぶことはできません。運転を担う人を地域で確保する必要があります。

スクールバスや施設の送迎と一体で運行する

期待できること
地域にすでにある車両と運転者を活用できます。2026年6月に公布された改正法は、自治体が主導してこうした協力を進める事業を新たに設けました。[4][5]
負担・副作用
学校、病院、福祉施設など、目的の違う関係者の調整が必要です。自治体の担当者の人手やノウハウも求められます。

運賃を上げて、運転者の賃金を上げる

期待できること
賃金が上がれば運転者を確保しやすくなり、路線を保ちやすくなります。
負担・副作用
利用者の負担が増えます。値上げで利用者がさらに減るおそれもあります。

これから見るべき指標

「交通空白」地区の数と対応状況
国土交通省が市区町村に調査しています。2025年度から2027年度が「集中対策期間」とされています。

出典: 国土交通省「交通空白」解消本部「「交通空白」解消に向けた取組方針2026」

地域鉄道の赤字事業者の数
鉄軌道業の経常収支が赤字の会社の数です。国土交通省のページで年度ごとに示されます。

出典: 国土交通省「地域鉄道対策」

バス・タクシーの運転者数と賃金
運転者が増えているか、給与が上がっているかを、国土交通白書などで確かめられます。

出典: 国土交通省「令和7年版 国土交通白書 第II部 自動車運送事業等の動向と施策」

改正地域交通法の施行と活用状況
2026年6月10日に公布され、一部を除き公布から6か月以内に施行されることになっています。

出典: 参議院「議案情報 地域公共交通の活性化及び再生に関する法律の一部を改正する法律案 (第221回国会)」

ほかの問題とのつながり

この課題は、次の課題の原因や結果になっています。つながりは「主な伝わり方」であり、統計的に証明された因果関係とは限りません。

  • 人口と家族

    人口が減った地域では利用者が減って路線を保ちにくくなり、移動が不便になるとさらに人が離れやすくなります。

  • 暮らしと経済

    労働力不足

    記事あり

    バスやタクシーの運転者の不足が、減便や廃止の直接のきっかけになっています。

  • 地域とインフラ

    インフラ老朽化

    記事あり

    線路や橋、トンネルなどの古くなった設備を直す費用が、鉄道会社の経営の負担になります。

  • 暮らしと経済

    外出の手段がなくなると、人と会う機会が減り、高齢者が孤立しやすくなります。

出典・更新日

データ確認日:

  1. [1] 国土交通省「交通空白」解消本部「「交通空白」解消に向けた取組方針2026」 公表: 2026年6月 / 確認: 2026年10月11日
  2. [2] 国土交通省「地域鉄道対策」 確認: 2026年10月11日
  3. [3] 国土交通省「令和7年版 国土交通白書 第II部 自動車運送事業等の動向と施策」 公表: 2025年 / 確認: 2026年10月11日
  4. [4] 参議院「議案情報 地域公共交通の活性化及び再生に関する法律の一部を改正する法律案 (第221回国会)」 公表: 2026年6月 / 確認: 2026年10月11日
  5. [5] 国土交通省「「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律の一部を改正する法律案」を閣議決定」 公表: 2026年3月 / 確認: 2026年10月11日

誤りや古い数字を見つけたら、GitHub でこの記事のデータを直して Pull Request を出すか、Issue で教えてください。