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医療と健康

地方の医療不足・医師偏在とは? 医師は増えているのに足りない理由

医師偏在とは、医師が地域や診療科によってかたよっていることです。日本全体の医師の数は増えていますが、人口あたりの医師数は都道府県によって約1.8倍の差があり、近くに医療機関がない地区は2025年に増加に転じました。お産や救急など、いざというときの医療を住んでいる場所で受けられるかどうかに関わる問題です。

データ確認日:

原因から影響までの流れ

  1. 人口減少・都市への集中
  2. 医師の勤務地と診療科のかたより
  3. 地方の医療不足
  4. 通院の負担・住み続けにくさ

矢印は、統計的に証明された因果関係ではなく、主な伝わり方を示しています。

いま何が起きている?

2024年12月31日時点で届け出のあった医師は34万7,772人で、2年前より4,497人 (1.3%) 増えました。このうち病院や診療所で働く医師は33万1,092人です。[1]

しかし、医師がどこで働いているかにはかたよりがあります。病院や診療所で働く医師の数を人口10万人あたりで見ると、全国では267.4人ですが、最も多い徳島県は345.4人、最も少ない埼玉県は189.1人でした。[1]

山間部や離島では、医療機関そのものがない地区もあります。無医地区とは、おおむね半径4kmの中に50人以上が住んでいるのに医療機関がなく、ほかの医療機関にも簡単には通えない地区のことです。2025年10月末日時点で575地区あり、13万4,753人が暮らしています。[2]

数字で見る

人口10万人あたりの医師数 (医療施設で働く医師、2024年12月31日現在)
  • 徳島県 (最多) 345.4人
  • 長崎県 333.8人
  • 京都府 333.2人
  • 全国 267.4人
  • 千葉県 213.3人
  • 茨城県 198.1人
  • 埼玉県 (最少) 189.1人

出典: 厚生労働省「令和6(2024)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」

診療科によっても動きが違います。2024年の医師数を2年前と比べると、小児科は1万8,009人で1.3%増えましたが、産婦人科・産科は1万1,690人で1.2%減、外科 (消化器外科などを含む) は2万6,885人で2.7%減でした。[1]

お産ができる施設も減っています。2023年9月の1か月間にお産を扱った施設は、一般病院が886施設、一般診療所が880施設でした。3年前の調査と比べて、病院は60施設、診療所は119施設少なくなっています。[3]

無医地区の数と、そこに住む人の数 (各年10月末日現在)
調査年無医地区住んでいる人
2009年705地区13万6,272人
2014年637地区12万4,122人
2019年590地区12万6,851人
2022年557地区12万2,206人
2025年575地区13万4,753人

出典: 厚生労働省「令和7年度無医地区等及び無歯科医地区等調査の結果」

無医地区は長く減り続けてきましたが、2025年の調査では前回 (2022年) より18地区増えました。[2]

なぜ起きる?

主な伝わり方は3つあると考えられています。1つ目は、医師が働く場所の決まり方です。日本では、医師がどの地域で、どの診療科で働くかは、基本的に本人が選びます。症例や研修の機会が多い都市部の病院や、家族の暮らしやすい地域に、医師が集まりやすくなります。

2つ目は、人口減少です。患者が減ると病院や診療所の経営が成り立ちにくくなります。厚生労働省は、人口が減る速さよりも医療機関が減る速さのほうが早い地域があるとして、重点的に対策する区域を設ける方針を示しています。[4]

3つ目は、地域の診療所を支える医師の高齢化です。2024年の医師の平均年齢は、大学病院などを除く病院では47.9歳ですが、診療所では60.1歳でした。後を継ぐ医師が見つからなければ、その地域の診療所はなくなります。[1]

診療科のかたよりには、夜間や休日の呼び出しの多さや、働き方についての希望の変化などが関係するといわれています。どの要因がどれだけ効いているかは、はっきりとは分かっていません。

よくある誤解

よくある誤解

「日本は医師の数が減っている」

実際は

医師の総数は増えています。2024年末は34万7,772人で、2年前より1.3%増えました。問題になっているのは、総数よりも、地域や診療科によるかたよりです。[1]

よくある誤解

「医師が足りないのは過疎地だけだ」

実際は

人口あたりの医師数が最も少ないのは、埼玉県 (189.1人)、茨城県 (198.1人)、千葉県 (213.3人) と、首都圏やその近くの県です。ただし、人口あたりの数だけでは、年齢構成や面積、通いやすさの違いまでは分かりません。国は、こうした点も加味した「医師偏在指標」を作り、下位3分の1の地域を「医師少数区域」としています。[1][5]

よくある誤解

「医師の総数を増やせば、足りない診療科も自然に埋まる」

実際は

2022年から2024年にかけて医師全体は1.3%増えましたが、外科は2.7%、産婦人科・産科は1.2%減りました。総数が増えても、足りない地域や診療科に医師が向かうとは限りません。[1]

どんな選択肢がある?

どれかひとつが正解というわけではありません。それぞれに、期待できることと、負担や副作用があります。

医師が少ない地域で働く医師への手当を厚くする

期待できること
収入や勤務環境の面で、地方で働くことを選びやすくなります。厚生労働省は2024年12月の対策パッケージで、重点的に対策する区域の医師への手当を増やす支援を打ち出しました。[4]
負担・副作用
費用は保険料などで広く負担することになります。お金だけで勤務地を決める医師は多くないともいわれ、効果の大きさは分かっていません。

医師が多い地域での開業に条件をつける

期待できること
都市部への集中をゆるめる効果が期待されます。2026年4月から、外来の医師がとくに多い区域で新しく診療所を開く人に、事前の届け出を求め、地域で足りない医療を担うよう要請できる仕組みが始まりました。[5]
負担・副作用
医師が働く場所を選ぶ自由をせばめることになります。新しい診療所が入りにくくなり、すでにある診療所との競争が弱まるという見方もあります。

地元で働くことを条件にした医学部の枠 (地域枠) を使う

期待できること
その地域で一定期間働く医師を、計画的に育てることができます。
負担・副作用
医師として働き始めるまでに長い年月がかかります。若い医師の進路を長くしばることにもなります。

病院の役割を集約し、オンライン診療や巡回診療で補う

期待できること
少ない医師でも、救急やお産などの機能を地域全体で保ちやすくなります。
負担・副作用
身近な病院や診療科がなくなる地域が出て、通院の距離が長くなります。画面越しの診療では対応できない病気やけがもあります。

これから見るべき指標

人口10万人あたりの医師数 (都道府県別)
2年に1度、12月31日時点の届け出をもとに集計されます。2024年分は2025年12月に公表されました。

出典: 厚生労働省「令和6(2024)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」

無医地区の数と人口
近くに医療機関がない地区の数です。直近では2019年、2022年、2025年に調べられ、2025年分は2026年7月に公表されました。

出典: 厚生労働省「令和7年度無医地区等及び無歯科医地区等調査の結果」

お産を扱う施設の数
3年に1度の詳しい調査 (静態調査) で分かります。2023年分は2024年11月に公表されました。

出典: 厚生労働省「令和5(2023)年「医療施設(静態・動態)調査」、「病院報告」の結果」

医師偏在指標と医師少数区域
地域ごとの医師の足りなさを比べるための国の指標です。2027年度からの次の計画に向けて、見直しが検討されています。

出典: 厚生労働省「医師偏在の是正に向けた総合的な対策パッケージ」

ほかの問題とのつながり

この課題は、次の課題の原因や結果になっています。つながりは「主な伝わり方」であり、統計的に証明された因果関係とは限りません。

  • 医療と健康

    医師だけでなく看護や介護の担い手も足りなくなると、病院や診療所を続けることがさらに難しくなります。

  • 人口と家族

    医療機関がなくなると住み続けにくくなり、人口の流出が進みやすくなります。人口が減ると、医療機関の経営はさらに厳しくなります。

  • 地域とインフラ

    近くの医療機関がなくなると、遠くの病院まで通う手段が必要になります。バスや鉄道が減ると、通院そのものが難しくなります。

  • 人口と家族

    高齢化

    記事あり

    高齢になるほど病院にかかる機会が増えます。高齢者の多い地域ほど、身近な医療の必要性が高まります。

出典・更新日

データ確認日:

  1. [1] 厚生労働省「令和6(2024)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」 公表: 2025年12月 / 確認: 2026年10月11日
  2. [2] 厚生労働省「令和7年度無医地区等及び無歯科医地区等調査の結果」 公表: 2026年7月 / 確認: 2026年10月11日
  3. [3] 厚生労働省「令和5(2023)年「医療施設(静態・動態)調査」、「病院報告」の結果」 公表: 2024年11月 / 確認: 2026年10月11日
  4. [4] 厚生労働省「医師偏在の是正に向けた総合的な対策パッケージ」 公表: 2024年12月 / 確認: 2026年10月11日
  5. [5] 厚生労働省「医師偏在対策について (第123回社会保障審議会医療部会 資料1-2)」 公表: 2026年1月 / 確認: 2026年10月11日

誤りや古い数字を見つけたら、GitHub でこの記事のデータを直して Pull Request を出すか、Issue で教えてください。