食料とエネルギー
食料安全保障とは? 日本の食料自給率はなぜ低いのか
日本で食べられている食料のうち、国内でつくられているのはカロリーで見ると4割弱です。残りは輸入に頼っているため、海外の不作や紛争、円安などが、食べものの値段や手に入りやすさに影響しやすくなっています。
データ確認日:
-
食料自給率 (カロリーベース)
37%
2025年度
-
食料自給率 (生産額ベース)
66%
2025年度
-
飼料自給率 (家畜のえさのうち国産の割合)
24%
2025年度
原因から影響までの流れ
- 食生活の変化と輸入の拡大
- 穀物・飼料・肥料を海外に依存
- 低い食料自給率
- 海外の不作・紛争・円安が国内の価格と供給に波及
矢印は、統計的に証明された因果関係ではなく、主な伝わり方を示しています。
いま何が起きている?
食料自給率とは、国内で消費される食料のうち、国内で生産された分の割合です。農林水産省が2026年8月に公表した2025年度の値は、カロリーベースで37%、生産額ベースで66%でした。カロリーベースは前の年度より1ポイント下がり、生産額ベースは2ポイント上がっています。[1]
2つの数字が大きく違うのは、ものさしが違うからです。カロリーベースは食べものの熱量で、生産額ベースは金額で計算します。野菜のようにカロリーは低くても値段が高い品目は、生産額ベースのほうに大きく表れます。[2]
輸入先は少数の国に集まっています。2025年度に日本で供給されたカロリーは、国産 (37%) と、アメリカ (26%)、カナダ (11%)、オーストラリア (10%) からの輸入を合わせると、全体の84%になります (農林水産省の試算)。[2]
数字で見る
- 1965年度 73%
- 1985年度 53%
- 2005年度 40%
- 2025年度 37%
自給率は長いあいだ下がり続けてきましたが、2000年代に入ってからはおおむね横ばいです。直近10年 (2016〜2025年度) のカロリーベースは37〜38%で動いています。[1][2]
| 品目 | 自給率 |
|---|---|
| 米 | 96% |
| 野菜 | 73% |
| 大豆 | 25% |
| 畜産物 | 17% |
| 小麦 | 16% |
| 油脂類 | 4% |
畜産物の17%という数字には注意が必要です。国内で育てた牛や豚、鶏でも、輸入したえさで育てた分は「国産」に数えていません。えさの輸入を考えずに計算した「食料国産率」では、畜産物は66%になります。家畜のえさの自給率 (飼料自給率) は24%です。[2]
なぜ起きる?
いちばん大きな理由は、食生活の変化です。自給できる米を食べる量が減り、えさや原料を輸入に頼る畜産物や油脂類を食べる量が増えました。農林水産省も、自給率が長く下がってきた理由としてこの変化を挙げています。[2]
2025年度も同じ流れが見られます。1人が1年に食べる米の量は53.3kgから52.0kgに減り、これがカロリーベースの自給率を下げる主な要因になりました。[2]
食料をつくるための材料も輸入に頼っています。化学肥料の主な原料である尿素、りん安、塩化加里は、ほぼ全量が輸入です。資源のある場所が世界的にかたよっているため、輸入先もかたよっています。[5]
このため、海外で不作や紛争、輸出の制限が起きたり、円安が進んだりすると、食料そのものだけでなく、えさや肥料の値段を通じて国内の生産コストにも影響が伝わります。
よくある誤解
よくある誤解
「自給率37%ということは、輸入が止まると食べものの6割がなくなる」
実際は
37%は、ふだんの食生活 (1人1日あたり2,237kcalの供給) を基準にした割合です。ふだんの生活に必要な熱量 (1,850kcal) を基準にした「摂取熱量ベース」では45%になります。また、輸入が減ったときは食べるものの組み合わせも変わるため、単純に6割がなくなるという計算にはなりません。[2]
よくある誤解
「カロリーベースの自給率だけを見れば、日本の農業の力がわかる」
実際は
カロリーベースでは、野菜や果物のようにカロリーが低い品目は小さくしか表れません。生産額ベースでは66%です。どちらか一方ではなく、複数の指標を合わせて見る必要があります。[1][2]
よくある誤解
「食料供給困難事態対策法は、農家に増産を強制し、従わないと罰金を科す法律だ」
実際は
農林水産省によると、国が指示できるのは生産などの「計画」の作成と届出で、増産そのものは強制しません。20万円以下の罰金は、計画を届け出なかった場合に限られます。この法律は2025年4月1日に施行されました。[4]
どんな選択肢がある?
どれかひとつが正解というわけではありません。それぞれに、期待できることと、負担や副作用があります。
国内生産を増やす (麦・大豆・飼料作物など)
- 期待できること
- 輸入が減ったときの備えになり、農地と農業の担い手を保つことにもつながります。
- 負担・副作用
- 輸入品より生産コストが高い品目が多く、価格の上昇か、税金による支援が必要になります。農業をする人が減る中で、だれがつくるのかという課題もあります。
輸入先を分散し、安定した輸入を確保する
- 期待できること
- 国内でつくりにくい品目を、比較的安く安定して確保できます。1つの国で問題が起きたときの影響を小さくできます。
- 負担・副作用
- 世界全体で不足したときや、輸送路が止まったときには効果が限られます。為替の影響は残ります。
備蓄を増やす
- 期待できること
- 短い期間の輸入の遅れや不作をしのぐことができます。
- 負担・副作用
- 保管と入れ替えに費用がかかります。長く続く不足には対応できません。
食べ方や無駄を見直す (食品ロスの削減、米や国産品の利用)
- 期待できること
- 必要な輸入量を減らせます。新しい設備や農地がなくても始められます。
- 負担・副作用
- 何を食べるかは個人の自由であり、強制はできません。効果が出るまで時間がかかります。
これから見るべき指標
- 食料自給率 (カロリーベース・生産額ベース・摂取熱量ベース)
- 農林水産省が毎年8月ごろに前年度の値を公表します。国の目標は2030年度にカロリーベース45%、生産額ベース69%、摂取熱量ベース53%です。
- 飼料自給率・食料国産率
- えさの輸入にどれだけ頼っているかがわかります。2025年度の飼料自給率は24%、カロリーベースの食料国産率は46%です。
- 米の1人あたり消費量
- 自給できる米の消費が減ると、カロリーベースの自給率が下がります。2025年度は52.0kgでした。
- 肥料原料の輸入先
- 農林水産省が「肥料をめぐる情勢」で、原料ごとの輸入相手国の割合を公表しています。
ほかの問題とのつながり
この課題は、次の課題の原因や結果になっています。つながりは「主な伝わり方」であり、統計的に証明された因果関係とは限りません。
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食料とエネルギー
農業就業者高齢化・農地維持
記事あり国内で食料をつくり続けるには、農業をする人と農地が必要です。国の基本計画は、49歳以下の担い手の数を今の水準で保つことを目標にしています。[3]
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気候・自然・災害
気候変動・猛暑影響
記事あり高温や大雨は作物の収穫量や品質に影響します。輸入先の国で異常気象が起きた場合も、価格や調達に影響が出ます。
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食料とエネルギー
エネルギー安全保障
記事あり農業機械の燃料、ハウスの暖房、肥料の製造、食料の輸送にはエネルギーが必要です。燃料の値上がりは食料の生産コストに伝わります。
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世界と安全保障
半導体・重要物資の供給網依存
記事あり肥料の原料は産出国がかたよっていて、ほぼ全量を輸入しています。半導体などと同じく、特定の国への依存をどう減らすかが課題です。[5]
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世界と安全保障
地政学リスク
記事あり2021年秋以降、中国による肥料原料の輸出検査の厳格化や、ロシアによるウクライナ侵略の影響で、肥料原料の輸入がとどこおりました。[5]
出典・更新日
データ確認日:
- [1] 農林水産省「令和7年度食料自給率を公表します」 公表: 2026年8月 / 確認: 2026年10月11日
- [2] 農林水産省「食料自給率について (令和7年度食料自給率 参考資料)」 公表: 2026年8月 / 確認: 2026年10月11日
- [3] 農林水産省「食料・農業・農村基本計画 (2025年4月11日閣議決定)」 公表: 2025年4月 / 確認: 2026年10月11日
- [4] 農林水産省「食料供給困難事態対策法について」 公表: 2025年 / 確認: 2026年10月11日
- [5] 農林水産省「肥料をめぐる情勢 (令和8年8月)」 公表: 2026年8月 / 確認: 2026年10月11日
誤りや古い数字を見つけたら、GitHub でこの記事のデータを直して Pull Request を出すか、Issue で教えてください。