世界と安全保障
半導体・重要物資の供給網依存とは? 届かなくなると困るもの
半導体、電池の材料、薬や肥料の原料など、暮らしと産業に欠かせないものの多くを、日本は海外から仕入れています。仕入れ先が限られた国や地域に集まっていると、災害や国どうしの対立で供給が止まったときに、工場が動かない、薬が足りないといった影響が出ます。政府は16の物資を「特定重要物資」に指定して、備えを進めています。
データ確認日:
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特定重要物資に指定された物資
16物資
2026年10月時点 (直近の追加は2025年12月)
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特定重要物資の安定供給のための予算総額
2兆5,643億円
2022年度補正〜2026年度当初の累計 (2026年10月9日時点の資料)
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肥料原料 (りん安) の輸入に占める中国の割合
72%
2024肥料年度 (2024年7月〜2025年6月)
原因から影響までの流れ
- 国際的な分業・資源のかたより
- 仕入れ先の集中
- 供給が止まるリスク
- 生産の停止・価格の上昇
矢印は、統計的に証明された因果関係ではなく、主な伝わり方を示しています。
いま何が起きている?
原料から部品、製品までが国境をこえてつながる流れを供給網 (サプライチェーン) といいます。政府は2022年に成立した経済安全保障推進法にもとづき、海外に頼る度合いが大きく、止まると影響の大きい物資を特定重要物資に指定しています。[1]
指定は2022年12月の11物資から始まりました。半導体、蓄電池、重要鉱物、肥料、抗菌薬 (抗菌性物質製剤)、天然ガスなどです。2024年2月に先端電子部品、2025年12月に人工呼吸器、無人航空機、人工衛星、ロケットの部品が加わり、16物資になりました。[1]
国は、国内の工場づくりや備蓄などの計画を認定して支援しています。2026年10月9日時点で認定された計画は167件、予算の総額は2兆5,643億円です。[2]
数字で見る
| 原料 | 輸入量 | 主な輸入先 |
|---|---|---|
| 尿素 | 25.6万トン | マレーシア76%、ベトナム11% |
| りん安 | 37.0万トン | 中国72%、モロッコ21% |
| 塩化加里 | 22.8万トン | カナダ78%、イスラエル7% |
内閣府の資料によると、手術や重い感染症の治療に使うβラクタム系抗菌薬は、原材料のほぼ100%を海外に頼っています。強い磁石に欠かせないレアアースのうち重希土類は、ほぼ100%を中国に頼っているとされています。[3]
- 蓄電池 10,052億円
- 半導体 8,062億円
- クラウドプログラム 1,366億円
- 船舶の部品 1,306億円
- 重要鉱物 1,183億円
この予算は、経済安全保障推進法にもとづく支援の分です。最先端の半導体工場への支援などは、別の法律にもとづく基金で行われており、ここには含まれていません。[3]
なぜ起きる?
主な伝わり方は3つあると考えられています。1つ目は、資源のある場所がかたよっていることです。肥料の原料になるりん鉱石は、経済的に採掘できる埋蔵量の68%がモロッコにあります。日本は肥料の原料のほとんどを輸入に頼っています。[3]
2つ目は、国際的な分業です。それぞれの国や企業が得意な工程を受け持つことで、安く大量につくれるようになりました。その結果、鉱物を精製する工程などが特定の国に集まっています。[3]
3つ目は、国内でつくる力の変化です。内閣府の資料は、半導体について、各国が積極的に投資するなかで日本企業の競争力が下がり続けてきたとしています。蓄電池も、市場が広がるにつれて日本のシェアが下がりました。[3]
こうした依存は、ふだんは安さや効率という利点をもたらします。問題になるのは、災害、感染症、輸出の規制、紛争などで流れが止まったときです。たとえば電池の材料になる黒鉛は、2023年12月から中国が輸出を管理する措置をとっています。[3]
よくある誤解
よくある誤解
「すべて国産にすれば解決する」
実際は
資源そのものが国内にほとんどない物資があります。国内でつくると費用が高くなる物資もあります。そのため、国内生産だけでなく、仕入れ先を増やすこと、備蓄、リサイクル、使う量を減らす技術などを組み合わせる方法がとられています。りん安の輸入に占める中国の割合は、2020肥料年度の90%から2024肥料年度には72%に下がりました。[3]
よくある誤解
「日本は一方的に頼っているだけだ」
実際は
日本が供給する側に立つ物資もあります。内閣府の資料は、半導体をつくる装置や部品・素材について、日本が一定の強みを持ち、他国から供給を期待されているとしています。供給網は、たがいに頼り合う関係です。[3]
よくある誤解
「半導体だけの問題だ」
実際は
特定重要物資には、抗菌薬、肥料、人工呼吸器、船舶の部品、天然ガスなども含まれます。認定された計画の数は、蓄電池が42件、半導体が30件、航空機の部品が19件、船舶の部品が18件です (2026年10月9日時点)。[2]
どんな選択肢がある?
どれかひとつが正解というわけではありません。それぞれに、期待できることと、負担や副作用があります。
国内の生産能力を補助金などで増やす
- 期待できること
- 海外からの供給が止まっても、国内である程度まかなえるようになります。工場ができる地域には雇用も生まれます。
- 負担・副作用
- 大きな公費が必要で、海外より高い費用でつくることになる場合があります。どの産業をどこまで支えるかの線引きも難しくなります。
仕入れ先を増やし、友好国と協力する
- 期待できること
- 1つの国や地域で問題が起きても、ほかから調達しやすくなります。国内でつくるより費用を抑えられる場合があります。
- 負担・副作用
- 代わりの仕入れ先は価格が高かったり、量が足りなかったりすることがあります。資源のある場所そのものがかたよっている物資では限界があります。
備蓄を増やす
- 期待できること
- 供給が止まっても、しばらくは生産や医療を続けられます。肥料の原料や抗菌薬で進められています。[3]
- 負担・副作用
- 保管の費用がかかり、品質が落ちる前に入れ替える必要があります。長く続く供給の停止には対応しきれません。
リサイクルや代わりの材料の開発を進める
- 期待できること
- 輸入する資源の量そのものを減らせます。レアアースを減らした磁石などの開発が進められています。[3]
- 負担・副作用
- 実用化までに時間と研究費がかかり、成功するとは限りません。回収の仕組みを整える必要もあります。
効率を重んじ、国の関与は最小限にとどめる
- 期待できること
- 企業が最も安く調達できる先を選べるため、製品の価格を抑えやすく、公費もかかりません。
- 負担・副作用
- 供給が止まったときの影響を、個々の企業の備えだけでは防ぎきれないおそれがあります。
これから見るべき指標
- 特定重要物資の指定数と認定計画数
- 内閣府が随時更新しています。2026年10月9日時点で16物資、認定計画は167件です。
- 肥料原料の輸入先の割合
- 特定の国への集中が和らいでいるかを見る数字です。肥料年度 (7月〜翌年6月) ごとにまとめられます。
- 物資ごとの予算額と支援の進み方
- どの物資にどれだけ公費が使われ、いつから供給が始まるかが、内閣府の資料で示されます。
- 制度の見直し
- 2026年6月に改正法が公布され、物資の供給に欠かせないサービスへの支援や、安定供給に向けた協力の要請などが加わりました。
ほかの問題とのつながり
この課題は、次の課題の原因や結果になっています。つながりは「主な伝わり方」であり、統計的に証明された因果関係とは限りません。
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世界と安全保障
地政学リスク
記事あり国どうしの対立が深まると、輸出の規制や物流の混乱で、物資が届かなくなるリスクが高まります。
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食料とエネルギー
エネルギー安全保障
記事あり天然ガスも特定重要物資の一つです。液化天然ガス (LNG) は発電のおよそ4割を支えており、全量を海外に頼っています。[3]
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食料とエネルギー
食料安全保障・低い食料自給率
記事あり肥料の原料の大部分は輸入です。届かなくなると、国内の農業生産に影響します。
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技術と未来
サイバーセキュリティ
記事あり供給網のどこか1社がサイバー攻撃で止まると、取引先の生産や出荷まで止まることがあります。
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技術と未来
研究力・博士人材の弱体化
記事あり代わりの材料やリサイクルの技術、次の世代の半導体や電池を生み出すには、研究開発の力が欠かせません。
出典・更新日
データ確認日:
- [1] 内閣府「サプライチェーン強靱化の取組 (重要物資の安定的な供給の確保に関する制度)」 公表: 2026年10月 / 確認: 2026年10月11日
- [2] 内閣府「特定重要物資の安定供給確保の取組について (2026年10月9日時点)」 公表: 2026年10月 / 確認: 2026年10月11日
- [3] 内閣府「各特定重要物資に関するサプライチェーンの分析と取組内容」 公表: 2026年4月 / 確認: 2026年10月11日
- [4] 内閣府「サプライチェーン強靱化に関する制度全般や技術流出防止について」 公表: 2026年9月 / 確認: 2026年10月11日
誤りや古い数字を見つけたら、GitHub でこの記事のデータを直して Pull Request を出すか、Issue で教えてください。