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食料とエネルギー

エネルギー安全保障とは? 日本はなぜ燃料の輸入に頼っているのか

日本は、使うエネルギーの8割以上を海外からの輸入に頼っています。遠い国の紛争や為替の動きが、電気代やガソリン代、ものの値段を通じて毎日の暮らしに届きやすい仕組みになっています。

データ確認日:

原因から影響までの流れ

  1. 国内に資源が少ない
  2. 化石燃料を輸入に頼る
  3. 国際価格・為替・輸送路の影響を受ける
  4. 電気代・燃料代・物価に波及

矢印は、統計的に証明された因果関係ではなく、主な伝わり方を示しています。

いま何が起きている?

エネルギー自給率とは、国内で使うエネルギーのうち、国内で生み出せる分の割合です。資源エネルギー庁によると、2024年度の日本の自給率は16.3%でした (確報)。前の年度より1.1ポイント上がりましたが、東日本大震災前の2010年度 (20.2%) より低い水準です。[1]

使っているエネルギーの中身を見ると、石油・石炭・天然ガスといった化石燃料が80.1%を占めます (2024年度・確報)。[1] これらはほとんどが輸入で、とくに原油は約95.1%を中東地域に頼っています (2024年)。[2]

この弱さは2026年に実際に表に出ました。資源エネルギー庁によると、中東の情勢によってタンカーがホルムズ海峡を事実上通れない状況になり、2026年3月以降、中東から日本への原油輸入が大幅に減りました。政府は同年3月、国が蓄えている原油 (国家備蓄) の放出を決め、3月26日から放出を始めました。国家備蓄の放出は、制度ができてから2回目です。[3]

数字で見る

エネルギー自給率の推移 (年度)
  • 1960年度 58.1%
  • 1973年度 9.2%
  • 2010年度 20.2%
  • 2014年度 6.3%
  • 2023年度 15.3%
  • 2024年度 16.3%

出典: 資源エネルギー庁「令和6年度(2024年度)におけるエネルギー需給実績(確報)」

自給率は、原子力発電所がすべて止まっていた2014年度に過去最低の6.3%まで下がりました。その後、原子力発電所の再稼働と、太陽光などの再生可能エネルギーの拡大によって少しずつ上がっています。なお、1990年度以降は計算方法が変わっているため、それ以前との単純な比較には注意が必要です。[1]

発電に使われた電源の割合 (2024年度・確報)
電源割合
火力 (化石燃料)67.5%
再生可能エネルギー23.1%
原子力9.4%

出典: 資源エネルギー庁「令和6年度(2024年度)におけるエネルギー需給実績(確報)」

石油備蓄の日数 (国家備蓄・民間備蓄・産油国共同備蓄の合計)
時点備蓄日数区分
2026年1月末248日分実績
2026年4月末210日分実績
2026年10月6日202日分推計値の速報

出典: 資源エネルギー庁「石油備蓄の現況 (令和8年6月公表分、および石油備蓄の状況・推計値の速報)」

備蓄日数は、国内の石油消費量をもとに石油備蓄法の基準で計算した値です。2026年1月末の数字は資源エネルギー庁の解説記事によります。[3] 放出が始まったあとは、4月末に210日分、10月6日時点で202日分 (推計値の速報) となっています。[4]

なぜ起きる?

いちばんの理由は、日本の国内に石油や天然ガスなどの資源がほとんどないことです。経済が成長してエネルギーをたくさん使うようになるにつれて、自給率は1960年度の58.1%から1970年代初めにかけて急速に下がりました。[1]

1970年代の石油危機のあと、日本は石油への頼りすぎを減らそうとして、原子力や再生可能エネルギーなど、石油以外のエネルギーを増やしてきました。石油依存度は1990年度の56.0%から2024年度には34.5%まで下がっています。しかし、2011年の東日本大震災のあと原子力発電所が止まり、その分を火力発電で補ったため、化石燃料への依存がふたたび高まりました。[1]

輸入に頼ると、燃料の値段は国際価格と為替で決まります。さらに、原油の輸入先が中東に集中しているため、輸送路で何かが起きると影響が大きくなります。備蓄はそのための備えですが、使えば減っていくので、時間をかせぐ手段にとどまります。

よくある誤解

よくある誤解

「石油の備蓄が200日分以上あるから、輸入が止まっても心配ない」

実際は

備蓄は使えば減ります。2026年1月末に248日分あった備蓄は、3月の放出開始後、10月6日時点で202日分 (推計値の速報) になっています。備蓄は、別の調達先を探したり使う量を減らしたりするまでの時間をかせぐ手段です。[3][4]

よくある誤解

「再生可能エネルギーが増えたので、もう輸入燃料には頼っていない」

実際は

2024年度 (確報) に発電された電気のうち、再生可能エネルギーは23.1%で、67.5%は火力発電です。エネルギー全体で見ても、化石燃料が80.1%を占めています。[1]

よくある誤解

「自給率が低いのは、電気を使いすぎているからだ」

実際は

一人あたりのエネルギー供給量も、GDPあたりのエネルギー供給量も、2024年度は1990年度以降でもっとも少なくなっています。自給率が低いおもな理由は、使う量よりも、使うエネルギーの種類と調達先にあります。[1]

どんな選択肢がある?

どれかひとつが正解というわけではありません。それぞれに、期待できることと、負担や副作用があります。

再生可能エネルギーを増やす

期待できること
国内でつくれるので、輸入燃料と国際価格への依存を減らせます。発電時に二酸化炭素を出しません。
負担・副作用
天候で発電量が変わるため、送電網や蓄電池への投資が必要です。設置場所をめぐる地域との調整も必要です。

原子力発電を活用する

期待できること
少ない燃料で長く発電でき、天候に左右されません。発電時に二酸化炭素を出しません。
負担・副作用
事故への備えと安全対策に大きな費用がかかります。使い終わった燃料の処分という課題もあります。

化石燃料の調達先を分散し、備蓄を厚くする

期待できること
今ある設備をそのまま使えます。特定の地域で問題が起きたときの影響を小さくできます。
負担・副作用
輸入に頼る構造そのものは変わりません。備蓄の維持には費用がかかり、二酸化炭素の排出も続きます。

省エネルギーで使う量を減らす

期待できること
輸入量も排出量も同時に減らせます。家庭や企業の光熱費も下がります。
負担・副作用
断熱改修や設備の入れ替えにははじめに費用がかかります。減らせる量には限りがあります。

これから見るべき指標

エネルギー自給率
資源エネルギー庁が総合エネルギー統計で年度ごとに公表します。速報のあとに確報が出るため、数字が少し変わることがあります。

出典: 資源エネルギー庁「令和6年度(2024年度)におけるエネルギー需給実績(確報)」

化石エネルギー依存度・石油依存度
使っているエネルギーのうち化石燃料が占める割合です。2024年度 (確報) は80.1%、石油だけでは34.5%でした。

出典: 資源エネルギー庁「令和6年度(2024年度)におけるエネルギー需給実績(確報)」

発電に使われる電源の割合
政府は2040年度の見通しとして、再生可能エネルギー4〜5割程度、原子力2割程度、火力3〜4割程度、自給率3〜4割程度を示しています。

出典: 経済産業省「第7次エネルギー基本計画の概要 (2025年2月18日閣議決定)」

石油備蓄日数
資源エネルギー庁が「石油備蓄の現況」として毎月公表し、推計値の速報も出しています。

出典: 資源エネルギー庁「石油備蓄の現況 (令和8年6月公表分、および石油備蓄の状況・推計値の速報)」

ほかの問題とのつながり

この課題は、次の課題の原因や結果になっています。つながりは「主な伝わり方」であり、統計的に証明された因果関係とは限りません。

  • 食料とエネルギー

    再生可能エネルギーは国内でつくれるので自給率を上げますが、天候で発電量が変わります。送電網や蓄電池の整備が追いつかないと、十分に生かせません。

  • 食料とエネルギー

    原子力発電所の再稼働は自給率を押し上げる要因になっています。一方で、安全性や廃棄物の扱いについては意見が分かれています。

  • 世界と安全保障

    地政学リスク

    記事あり

    原油の約95.1%を中東に頼っているため、その地域の紛争や海上輸送路の混乱が、日本の燃料の確保に直接ひびきます。

  • 暮らしと経済

    燃料の輸入価格が上がると、電気代やガソリン代、輸送費を通じて、生活にかかるお金が増えます。

  • 食料とエネルギー

    農業機械の燃料、ハウスの暖房、肥料の製造や輸送にもエネルギーが必要です。燃料の値上がりは食料の生産コストにも伝わります。

  • 気候・自然・災害

    化石燃料を燃やすと二酸化炭素が出ます。エネルギーの安定供給と排出削減をどう両立させるかが、共通の課題です。

出典・更新日

データ確認日:

  1. [1] 資源エネルギー庁「令和6年度(2024年度)におけるエネルギー需給実績(確報)」 公表: 2026年4月 / 確認: 2026年10月11日
  2. [2] 資源エネルギー庁「2025—日本が抱えているエネルギー問題(前編)」 公表: 2026年6月 / 確認: 2026年10月11日
  3. [3] 資源エネルギー庁「今こそ知りたい、日本の「石油備蓄」のしくみとは?」 公表: 2026年4月 / 確認: 2026年10月11日
  4. [4] 資源エネルギー庁「石油備蓄の現況 (令和8年6月公表分、および石油備蓄の状況・推計値の速報)」 公表: 2026年10月 / 確認: 2026年10月11日
  5. [5] 経済産業省「第7次エネルギー基本計画の概要 (2025年2月18日閣議決定)」 公表: 2025年2月 / 確認: 2026年10月11日

誤りや古い数字を見つけたら、GitHub でこの記事のデータを直して Pull Request を出すか、Issue で教えてください。