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暮らしと経済

実質賃金とは? 給料が上がっても暮らしが楽にならない理由

給料の額は増えているのに、物価がそれ以上に上がり、買えるものの量が減る年が続いています。毎日の買い物や家計に直接かかわる問題です。

データ確認日:

原因から影響までの流れ

  1. 食料・エネルギーなどの値上がり
  2. 物価の上昇
  3. 賃上げが追いつかない
  4. 実質賃金の低下
  5. 消費の手控え

矢印は、統計的に証明された因果関係ではなく、主な伝わり方を示しています。

いま何が起きている?

実質賃金とは、給料の額 (名目賃金) を物価の動きで割り引いて、「その給料でどれだけのものが買えるか」を表した数字です。給料が2%増えても、物価が3%上がれば、買える量は減ります。

2025年 (確報) の1人あたりの現金給与総額は月平均35万5,941円で、前年より2.3%増えました。しかし物価の上昇のほうが大きく、実質賃金は前年より1.3%減りました。実質賃金が前年を下回るのは、2022年から4年連続です。[1]

年度で区切った2025年度 (確報) でも、実質賃金は前年度より0.5%減でした。一方、月ごとに見ると、2026年7月分 (確報) は前年の同じ月より2.0%増えています。月ごとの数字はボーナスの時期などで大きく動くため、1か月だけで判断せず、流れを見る必要があります。[3][4]

数字で見る

賃金と物価の前年比 (事業所規模5人以上、暦年、確報)
年名目賃金物価 (持家の帰属家賃を除く総合)実質賃金
2021年+0.3%−0.3%+0.6%
2022年+2.0%+3.0%−1.0%
2023年+1.2%+3.8%−2.5%
2024年+2.8%+3.2%−0.3%
2025年+2.3%+3.7%−1.3%

出典: 厚生労働省「毎月勤労統計調査 2025(令和7)年分結果確報」

名目賃金は2021年から5年続けて増えています。それでも実質賃金がマイナスなのは、物価の上がり方がそれを上回っているからです。[1]

2025年の現金給与総額を働き方別に見ると、フルタイムなどの一般労働者は月平均46万5,923円 (前年比2.9%増)、パートタイム労働者は11万4,527円 (同2.3%増) でした。パートタイム労働者の時間あたりの給与は1,394円で、3.8%増えています。[1]

消費者物価指数 (総合、年平均、2020年=100)
  • 2021年 99.8
  • 2022年 102.3
  • 2023年 105.6
  • 2024年 108.5
  • 2025年 111.9

出典: 総務省統計局「2020年基準 消費者物価指数 全国 2025年(令和7年)平均」

2025年平均の物価を品目別に見ると、食料が前年比6.8%上昇と、全体 (3.2%) より大きく上がりました。なかでも米などの穀類は21.9%の上昇です。[2]

なぜ起きる?

主な伝わり方は、「物価が先に上がり、賃金があとから追いかける」という順番のずれです。消費者物価指数 (総合) の前年比は、2021年は−0.2%でしたが、2022年以降は毎年2〜3%台の上昇が続いています。[2]

日本は食料やエネルギーの多くを輸入に頼っているため、海外での値上がりや円安は、国内の物価を押し上げる方向にはたらきます。一方、賃金は物価のように毎月変わるものではないため、追いつくまでに時間がかかりがちです。

また、値上がりが大きいのは食料のように毎日買うものです。支出に占める食費の割合が大きい世帯ほど、同じ物価上昇でも負担を重く感じやすくなります。[2]

よくある誤解

よくある誤解

「給料の額が上がっていないから、暮らしが苦しい」

実際は

名目賃金 (給料の額) は2021年から5年続けて前年を上回っています。実質賃金がマイナスなのは、物価の上昇がそれより大きいためです。[1]

よくある誤解

「実質賃金の数字はひとつしかない」

実際は

厚生労働省は、物価の測り方がちがう2種類の実質賃金を公表しています。2025年は、持家の帰属家賃を除く総合で計算すると1.3%減、総合で計算すると0.8%減でした。どちらの数字かを確かめて読む必要があります。[1]

よくある誤解

「実質賃金は、自分の手取りの増減を表している」

実際は

統計の賃金は、税金や社会保険料を差し引く前の金額を、働く人全体で平均したものです。短い時間だけ働く人の割合が変わっても平均は動くため、ひとりひとりの手取りの動きとは一致しません。[5]

どんな選択肢がある?

どれかひとつが正解というわけではありません。それぞれに、期待できることと、負担や副作用があります。

賃上げを後押しする (最低賃金の引き上げなど)

期待できること
働く人の収入が直接増え、物価上昇に追いつきやすくなります。
負担・副作用
人件費が増えるため、利益の少ない企業では雇用や営業時間を減らす動きが出るおそれがあります。

給付金や補助金で家計の負担を和らげる

期待できること
食料や光熱費の値上がりの痛みを、早く直接やわらげられます。
負担・副作用
財源が必要で、国の借金が増える要因になります。また、賃金そのものを上げる効果はありません。

生産性を高める投資や学び直しを進める

期待できること
物価を上回る賃上げを、長く続けられる土台になります。
負担・副作用
効果が出るまでに時間がかかり、いま苦しい家計の助けにはなりにくいです。

コストの上昇を価格に反映しやすくする (価格転嫁)

期待できること
下請けなどの中小企業が、賃上げの元手を確保しやすくなります。
負担・副作用
商品やサービスの値段が上がり、物価をさらに押し上げる面があります。

これから見るべき指標

実質賃金指数
厚生労働省の毎月勤労統計調査で、毎月、速報と確報が公表されます。2025年分の確報は2026年2月、2025年度分の確報は2026年5月に公表されました。

出典: 厚生労働省「毎月勤労統計調査 2025(令和7)年分結果確報」

消費者物価指数 (総合)
総務省が毎月公表します。2025年平均は2026年1月に公表されました。

出典: 総務省統計局「2020年基準 消費者物価指数 全国 2025年(令和7年)平均」

所定内給与
残業代やボーナスを除いた基本的な給料です。賃上げが続いているかを見るのに向いています。

出典: 厚生労働省「毎月勤労統計調査 2025(令和7)年分結果確報」

食料の物価
毎日の買い物に近い数字です。全体の物価より大きく動くことがあります。

出典: 総務省統計局「2020年基準 消費者物価指数 全国 2025年(令和7年)平均」

ほかの問題とのつながり

この課題は、次の課題の原因や結果になっています。つながりは「主な伝わり方」であり、統計的に証明された因果関係とは限りません。

  • 暮らしと経済

    働く人1人が生み出す価値 (生産性) が伸びないと、物価を上回る賃上げを長く続けることが難しくなります。

  • 暮らしと経済

    個人消費の弱さ

    記事あり

    買える量が減ると家計は節約に向かい、国内の消費が伸びにくくなります。

  • 地域とインフラ

    賃金の伸びより住宅価格や家賃の上昇が大きいと、住まいにかかる負担が重くなります。

  • 暮らしと経済

    食料や光熱費の値上がりは、収入や貯蓄の少ない世帯ほど影響が大きくなります。

  • 食料とエネルギー

    エネルギーを輸入に頼っているため、海外の燃料価格や為替の動きが電気・ガス代に伝わります。

出典・更新日

データ確認日:

  1. [1] 厚生労働省「毎月勤労統計調査 2025(令和7)年分結果確報」 公表: 2026年2月 / 確認: 2026年10月11日
  2. [2] 総務省統計局「2020年基準 消費者物価指数 全国 2025年(令和7年)平均」 公表: 2026年1月 / 確認: 2026年10月11日
  3. [3] 厚生労働省「毎月勤労統計調査 2025(令和7)年度分結果確報」 公表: 2026年5月 / 確認: 2026年10月11日
  4. [4] 厚生労働省「毎月勤労統計調査 2026(令和8)年7月分結果確報」 公表: 2026年9月 / 確認: 2026年10月11日
  5. [5] 厚生労働省「毎月勤労統計調査 用語の解説」 公表: 記載なし / 確認: 2026年10月11日

誤りや古い数字を見つけたら、GitHub でこの記事のデータを直して Pull Request を出すか、Issue で教えてください。