地域とインフラ
住宅価格と賃金の乖離とは? 家の値段が給料より速く上がっている
住宅価格と賃金の乖離 (かいり) とは、家の値段の上がり方に、給料の上がり方が追いつかないことです。国の指数では、全国のマンションの価格は2010年の2倍を超えています。どこに住むか、家を買うか借りるか、子どもを何人持つかといった、若い世代の選択に関わります。
データ確認日:
-
マンションの不動産価格指数 (全国、2010年平均=100)
225.1
2025年12月 (季節調整値・速報値)
-
新築マンション購入額の年収倍率 (フラット35利用者、全国)
7.5倍
2025年度
-
名目賃金 (現金給与総額) の前年比
+2.3%
2025年 (確報)
原因から影響までの流れ
- 都市部への人口集中
- 地価・建築費の上昇
- 住宅価格が賃金より速く上昇
- 住まいの選択がせばまる・家族形成への影響
矢印は、統計的に証明された因果関係ではなく、主な伝わり方を示しています。
いま何が起きている?
国土交通省は、実際に売買された住宅の価格をもとに不動産価格指数を公表しています。2010年の平均を100として、価格の動きを表した数字です。2025年12月 (季節調整値・速報値) は、全国の住宅全体で148.0、マンションで225.1でした。[1]
1年前の2024年12月は、住宅全体が140.7、マンションが207.7でした。1年間で、住宅全体は約5%、マンションは約8%上がった計算です。[1]
一方、2025年 (確報) の1人あたりの現金給与総額は月平均35万5,941円で、前の年より2.3%の増加でした。物価の上昇を差し引いた実質賃金は1.3%減っています。[4]
なお、不動産価格指数は、計算プログラムの不具合のため2026年1月分以降の公表が延期されています。2026年10月11日時点で確認できる最も新しい数字は、2025年12月分です。[2]
数字で見る
- マンション 225.1
- 住宅全体 148
- 戸建住宅 121.9
- 住宅地 119.8
上がり方は、住宅の種類や地域によって大きく違います。同じ2025年12月の住宅全体の指数は、東京都が182.1、埼玉・千葉・東京・神奈川を合わせた南関東圏が159.4でした。[1]
| 住宅の種類 | 全国 | 首都圏 |
|---|---|---|
| 新築マンション | 7.5倍 | 8.4倍 |
| 土地付きの注文住宅 | 7.8倍 | 8.6倍 |
| 建売住宅 | 6.9倍 | 7.3倍 |
| 中古マンション | 5.6倍 | 6.2倍 |
| 中古戸建 | 5.3倍 | 5.9倍 |
年収倍率は、住宅の購入にかかったお金が世帯年収の何倍かを表す数字です。長期固定金利の住宅ローン「フラット35」の利用者では、新築マンションの年収倍率が2024年度の7.0倍から2025年度は7.5倍に上がりました。購入額の平均は5,882万円で、前年度より290万円高くなっています。[3]
借りる場合の負担も増えています。借家の1か月あたりの家賃は、2023年に全国平均で5万9,656円となり、5年前より7.1%上がりました。[6]
なぜ起きる?
主な伝わり方は3つあると考えられています。1つ目は、土地の値上がりです。2026年1月1日時点の住宅地の地価は、全国平均で前の年より2.1%上がり、5年続けての上昇でした。東京圏は4.5%、地方圏は0.9%で、都市部ほど上がり方が大きくなっています。国土交通省は、東京圏や大阪圏の中心部でマンションの需要が強いとしています。[5]
2つ目は、建てる費用の上昇です。資材の値上がりや、建設現場で働く人の不足が、新築住宅の価格を押し上げているといわれています。
3つ目は、お金の借りやすさです。金利が低い時期が長く続き、多くの額を借りて高い住宅を買うことができました。投資を目的とした購入が価格を押し上げているという見方もあります。
ただし、金利は上がり始めています。日本銀行は2026年9月、政策金利 (短期金利の誘導目標) を1.25%程度に引き上げることを決めました。金利が上がると、同じ額を借りても毎月の返済は重くなります。[7]
よくある誤解
よくある誤解
「住宅の価格は、全国どこでも同じように急上昇している」
実際は
2025年12月の不動産価格指数 (2010年平均=100) は、マンションが225.1なのに対し、戸建住宅は121.9、住宅地は119.8でした。2026年1月1日時点の住宅地の地価の上昇率も、東京圏の4.5%に対し、地方圏は0.9%です。上がり方は種類と場所で大きく違います。[1][5]
よくある誤解
「年収倍率7.5倍は、日本で家を買う人全体の平均だ」
実際は
この数字は、住宅ローン「フラット35」を2025年度に利用した人だけを集計したものです。ほかの住宅ローンを使った人や、現金で買った人は含まれていません。全体の傾向を知る手がかりの1つとして見る必要があります。[3]
よくある誤解
「空き家が増えているのだから、住宅は余っていて安く手に入るはずだ」
実際は
空き家が多いのは、主に人口が減っている地域です。賃貸・売却用や別荘などを除いた空き家が住宅全体に占める割合は、2023年の全国平均で5.9%ですが、東京都では2.6%でした。仕事のある場所の近くでは、住宅を求める人のほうが多くなっています。[6]
どんな選択肢がある?
どれかひとつが正解というわけではありません。それぞれに、期待できることと、負担や副作用があります。
都市部で住宅の供給を増やす (建て替えや高層化をしやすくする)
- 期待できること
- 住宅の数が増えれば、価格や家賃の上昇をゆるめる効果が期待されます。
- 負担・副作用
- 混雑が進み、学校や道路などの整備が追いつかなくなるおそれがあります。人口が減る将来には、空き家になる可能性もあります。
住宅を買う人を支援する (ローン減税や補助金)
- 期待できること
- 若い世帯や子育て世帯が、住宅を手に入れやすくなります。
- 負担・副作用
- 買える人が増えることで、かえって価格を押し上げるという指摘があります。財源が必要で、借家に住む人には恩恵が届きません。
借りて住む人を支援する (家賃の補助や公的な賃貸住宅)
- 期待できること
- 住宅を買う余裕のない人にも支援が届きます。暮らしの変化に合わせて住み替えやすくなります。
- 負担・副作用
- 続けていくための財源が必要です。誰を対象にするかの線引きが難しく、家賃の補助は家賃の上昇につながるという見方もあります。
中古住宅や空き家を活用する
- 期待できること
- 新築より安く住まいを手に入れられます。フラット35の利用者では、2025年度に中古住宅の割合が35.9%となり、調査開始から初めて最も多くなりました。[3]
- 負担・副作用
- 改修や耐震化に費用がかかることがあります。空き家の多い場所と、住みたい人の多い場所が一致しないという問題も残ります。
仕事や学びの場を地方にも分散させる
- 期待できること
- 都市部の住宅を求める人が減り、価格の上昇がやわらぐ可能性があります。地方の住宅を生かすことにもつながります。
- 負担・副作用
- 効果が出るまでに長い時間がかかります。企業や個人がどこで活動するかは、政策だけでは決められません。
これから見るべき指標
- 不動産価格指数 (住宅)
- 実際の取引価格をもとにした指数で、通常は毎月公表されます。2026年1月分以降は公表が延期されており、再開の時期に注意が必要です。
- 地価公示 (住宅地の変動率)
- 毎年1月1日時点の土地の価格を調べたものです。2026年分は2026年3月に公表されました。
- 年収倍率
- 住宅の購入額が世帯年収の何倍かを表します。フラット35利用者の集計は年1回で、2025年度分は2026年7月に公表されました。
- 名目賃金と実質賃金
- 住宅価格の上昇率と比べる相手になる数字です。毎月公表されます。
- 政策金利
- 住宅ローンの金利に影響します。日本銀行の金融政策決定会合で決まります。
ほかの問題とのつながり
この課題は、次の課題の原因や結果になっています。つながりは「主な伝わり方」であり、統計的に証明された因果関係とは限りません。
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人口と家族
東京一極集中
記事あり仕事や学校を求めて人が集まる東京圏では、住宅を求める人が多く、地価や住宅価格が上がりやすくなります。
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暮らしと経済
実質賃金停滞・生活コスト上昇
記事あり賃金の伸びが物価に追いつかない中で住宅費が上がると、ほかの生活費に回せるお金が減ります。
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地域とインフラ
空き家・老朽住宅問題
記事あり地方では空き家が増える一方、都市部では価格が上がっています。家が余る場所と、求められる場所がずれています。
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人口と家族
少子化
記事あり広い住まいを手に入れにくいことが、結婚や、子どもを持つ人数の判断に影響するといわれています。
出典・更新日
データ確認日:
- [1] 国土交通省「不動産価格指数 (令和7年12月・令和7年第4四半期分) を公表」 公表: 2026年3月 / 確認: 2026年10月11日
- [2] 国土交通省「不動産価格指数 (公表延期のお知らせを含む掲載ページ)」 公表: 2026年9月 / 確認: 2026年10月11日
- [3] 住宅金融支援機構「2025年度フラット35利用者調査」 公表: 2026年7月 / 確認: 2026年10月11日
- [4] 厚生労働省「毎月勤労統計調査 2025(令和7)年分結果確報」 公表: 2026年2月 / 確認: 2026年10月11日
- [5] 国土交通省「令和8年地価公示の概要」 公表: 2026年3月 / 確認: 2026年10月11日
- [6] 総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計 (確報集計) 結果」 公表: 2024年9月 / 確認: 2026年10月11日
- [7] 日本銀行「金融市場調節方針の変更について (2026年9月18日)」 公表: 2026年9月 / 確認: 2026年10月11日
誤りや古い数字を見つけたら、GitHub でこの記事のデータを直して Pull Request を出すか、Issue で教えてください。