暮らしと経済
個人消費の弱さとは? 家計がお金を使いにくい理由
個人消費とは、家計が買い物やサービスに使うお金のことで、日本のGDPの5割強を占めます。2026年に入ってからは、家計調査の消費支出が実質で前年を下回る月が続いています。消費が伸びないと、お店や企業の売上が増えず、賃金や雇用にもはね返ってきます。
データ確認日:
-
消費支出の前年同月比 (実質、二人以上の世帯)
−3.1%
2026年8月分
-
消費支出の前年比 (実質、二人以上の世帯)
+0.9%
2025年平均
-
消費者態度指数 (二人以上の世帯、季節調整値)
35.4
2026年9月調査
原因から影響までの流れ
- 物価の上昇
- 使えるお金の実質的な目減り
- 将来への不安
- 個人消費の弱さ
- 国内の売上・成長の伸び悩み
矢印は、統計的に証明された因果関係ではなく、主な伝わり方を示しています。
いま何が起きている?
総務省の家計調査によると、2026年8月の二人以上の世帯の消費支出は1世帯あたり31万975円でした。物価の変化を除いた実質では、前の年の同じ月より3.1%少なくなっています。実質で前年を下回るのは、2025年12月から9か月連続です。[2]
1年を通した数字では、2025年平均の消費支出は月31万4,001円で、実質で前年より0.9%増えました。2023年 (2.6%減)、2024年 (1.1%減) と減ったあとの、3年ぶりの増加です。ただし、単身世帯は1.5%減、単身世帯を含めた総世帯は0.1%減で、どちらも3年連続の減少でした。[1]
国全体の消費を表すGDP統計の民間最終消費支出は、2025年度に実質で1.3%増えました。直近の2026年4-6月期は前の3か月と比べて0.0%で、横ばいです (2次速報)。[3]
数字で見る
- 2018年度 311兆円
- 2019年度 306.4兆円
- 2020年度 292.2兆円
- 2022年度 307.7兆円
- 2024年度 305.1兆円
- 2025年度 309.1兆円
2025年度の実質の個人消費は309.1兆円で、コロナ禍で落ち込んだ2020年度 (292.2兆円) からは回復しました。それでも、コロナ禍の前の2018年度 (311.0兆円) の水準には届いていません。金額そのままの名目で見ると、2025年度のGDP 672.7兆円のうち353.8兆円が民間最終消費支出で、5割強を占めます。[3]
| 月 | 前年同月比 |
|---|---|
| 2026年3月 | −2.9% |
| 2026年4月 | −0.5% |
| 2026年5月 | −0.4% |
| 2026年6月 | −3.3% |
| 2026年7月 | −3.6% |
| 2026年8月 | −3.1% |
内閣府の消費動向調査では、暮らし向きや収入の見通しをたずねて数字にした消費者態度指数が、2026年9月に35.4でした。4月の32.2からは持ち直していますが、1年後の物価が「上昇する」と見込む人は9割を占めています。[4]
なぜ起きる?
主な伝わり方の1つ目は、使えるお金の実質的な目減りです。2025年の勤労者世帯 (二人以上) の実収入は月65万3,901円で、税や社会保険料を引いた可処分所得は53万2,408円でした。可処分所得は金額では1.9%増えましたが、物価の上昇を差し引いた実質では1.7%減っています。[1]
2つ目は、値上がりが毎日の買い物に集中していることです。2025年の食料への支出は金額では5.5%増えましたが、実質では1.2%減りました。払うお金は増えたのに、買えた量は減ったことになります。消費支出に占める食料費の割合 (エンゲル係数) は28.6%に上がりました。[1]
3つ目は、将来への備えです。2025年の勤労者世帯は、可処分所得の65.0%を消費に使い、残りの35.0%は預貯金などに回りました。物価や老後、社会保障の先行きに不安があると、収入が増えても使うことをためらいやすくなると考えられています。[1]
このほか、人口の減少や高齢化も、国内で買い物をする人の数や買うものの中身を変えていきます。どの要因がどれだけ効いているかは、時期によっても変わります。
よくある誤解
よくある誤解
「家計調査の数字が減っていれば、国全体の消費も同じだけ減っている」
実際は
家計調査は選ばれた世帯の家計簿をもとにした統計で、月ごとの振れが大きくなります。国全体の消費を表すGDP統計の民間最終消費支出は、2025年度に実質で1.3%増えました。2つの統計は対象も作り方もちがうため、両方を見る必要があります。[3]
よくある誤解
「使う金額が増えているのだから、消費は好調だ」
実際は
2025年の二人以上の世帯の消費支出は、金額では前年より4.6%増えましたが、物価の上昇 (3.7%) を除いた実質では0.9%増でした。金額の伸びの多くは値上がりによるものです。[1]
よくある誤解
「消費が弱いのは、みんなが貯金ばかりしているからだ」
実際は
世帯によって事情はちがいます。2025年の65歳以上の夫婦のみの無職世帯は、可処分所得22万1,544円に対して消費支出が26万3,979円で、足りない分は貯蓄の取り崩しなどでまかなっています。貯める余裕のある世帯ばかりではありません。[1]
どんな選択肢がある?
どれかひとつが正解というわけではありません。それぞれに、期待できることと、負担や副作用があります。
物価を上回る賃上げを後押しする
- 期待できること
- 家計の買う力が続けて増え、消費の土台が強くなります。
- 負担・副作用
- 人件費が増えるため、利益の少ない企業には負担になります。賃上げ分が価格に乗れば、物価をさらに押し上げる面もあります。
減税や給付金で家計の手取りを増やす
- 期待できること
- 家計が使えるお金をすぐに増やせます。
- 負担・副作用
- 財源が必要で、国の借金を増やす要因になります。貯蓄に回る分もあり、一時的な措置では効果が続きにくいとされます。
社会保障の将来像を示し、不安をやわらげる
- 期待できること
- 老後や医療・介護の見通しが立てば、備えのための貯蓄を減らし、消費に回しやすくなると考えられます。
- 負担・副作用
- 制度を安定させるには、負担の引き上げや給付の見直しをともなうことがあります。効果が出るまでに時間もかかります。
物価の上昇を抑える
- 期待できること
- 同じ収入で買える量が減りにくくなり、節約の動きがやわらぎます。
- 負担・副作用
- 補助金で抑える場合は財源が必要です。金利を上げて抑える場合は、住宅ローンや企業の借り入れの負担が増えます。
これから見るべき指標
- 消費支出 (家計調査)
- 総務省が毎月公表します。月ごとの振れが大きいため、数か月の流れで見ます。2026年8月分は10月9日に公表されました。
- 民間最終消費支出 (GDP統計)
- 国全体の個人消費を表します。内閣府が3か月ごとに公表します。
- 消費者態度指数
- 暮らし向きや収入の見通しなど、家計の気持ちを数字にしたものです。内閣府が毎月公表します。
- 可処分所得
- 収入から税や社会保険料を引いた、家計が自由に使えるお金です。家計調査で分かります。
ほかの問題とのつながり
この課題は、次の課題の原因や結果になっています。つながりは「主な伝わり方」であり、統計的に証明された因果関係とは限りません。
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暮らしと経済
実質賃金停滞・生活コスト上昇
記事あり物価の上昇に賃金が追いつかないと、買える量が減り、家計は節約に向かいます。
-
暮らしと経済
経済停滞・低成長
記事ありGDPの5割強を占める個人消費が伸びないと、経済全体の成長率も伸びにくくなります。
-
人口と家族
人口減少
記事あり人口が減ると、国内で買い物をする人の数そのものが少なくなっていきます。
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暮らしと経済
社会保障負担の増大
記事あり社会保険料の負担が増えると手取りが減り、将来の給付への不安は貯蓄を増やす動機になります。
出典・更新日
データ確認日:
- [1] 総務省統計局「家計調査報告 (家計収支編) 2025年(令和7年)平均結果の概要」 公表: 2026年2月 / 確認: 2026年10月11日
- [2] 総務省統計局「家計調査報告 (二人以上の世帯) 2026年(令和8年)8月分」 公表: 2026年10月 / 確認: 2026年10月11日
- [3] 内閣府 経済社会総合研究所「2026年4-6月期四半期別GDP速報 (2次速報値) 統計表一覧」 公表: 2026年9月 / 確認: 2026年10月11日
- [4] 内閣府 経済社会総合研究所「消費動向調査 (令和8年(2026年)9月実施分)」 公表: 2026年10月 / 確認: 2026年10月11日
誤りや古い数字を見つけたら、GitHub でこの記事のデータを直して Pull Request を出すか、Issue で教えてください。