暮らしと経済
低成長とは? 日本経済が伸びにくくなっている理由
低成長とは、国全体で生み出すモノやサービスの量が、あまり増えない状態が続くことです。日本の実質成長率は、この数年0〜1%台で推移しています。経済の伸びは、賃金や税収、社会保障を支える力の土台になります。
データ確認日:
-
実質GDP成長率
+0.9%
2025年度 (2026年4-6月期2次速報時点)
-
名目GDP成長率
+4.3%
2025年度 (2026年4-6月期2次速報時点)
-
潜在成長率
0.5%
2025年度 (内閣府の推計)
原因から影響までの流れ
- 働く世代の減少
- 投資と生産性の伸び悩み
- 潜在成長率の低下
- 低成長
- 賃金・税収の伸び悩み
矢印は、統計的に証明された因果関係ではなく、主な伝わり方を示しています。
いま何が起きている?
国内で1年間に新しく生み出されたモノやサービスの価値の合計をGDP (国内総生産) といいます。物価の変化を取り除いた実質GDPの伸び率が、ふつう「経済成長率」と呼ばれます。
2025年度の実質GDPは前の年度より0.9%増えました (2026年4-6月期2次速報時点)。2021年度から5年続けてプラスですが、2023年度は0.1%、2024年度は0.7%と、小さな伸びにとどまっています。[1]
金額そのままで測った名目GDPは、2025年度に4.3%増えて672.7兆円になりました。名目の伸びが実質より大きいのは、その差の分だけ物価が上がったためです。[1]
直近の2026年4-6月期の実質GDPは、前の3か月より0.4%増 (年率に直すと1.4%増) でした (2次速報)。[1]
数字で見る
| 年度 | 実質 | 名目 |
|---|---|---|
| 2021年度 | +3.8% | +3.9% |
| 2022年度 | +1.5% | +2.7% |
| 2023年度 | +0.1% | +4.9% |
| 2024年度 | +0.7% | +4.0% |
| 2025年度 | +0.9% | +4.3% |
実質GDPの金額 (2020年の価格で測ったもの) で比べると、1995年度の479.2兆円から2005年度の533.0兆円までは10年間で約11%増えました。2015年度の564.4兆円から2025年度の594.5兆円までは約5%増で、伸びはおよそ半分になっています。[1]
- 1995年度 1.5%
- 2005年度 0.8%
- 2015年度 1%
- 2025年度 0.5%
出典: 内閣府「月例経済報告 関係資料「GDPギャップ、潜在成長率」(2026年4-6月期四半期別GDP速報 (2次速報) ベース)」
潜在成長率とは、働く人・設備・技術を平均的に使ったときに無理なく伸ばせる、経済の「実力」の伸び率です。内閣府の推計では、1980年代は4.2%、1990年代は1.6%で、2000年代以降はおおむね1%以下で推移しています。推計の方法によって結果が変わるため、幅をもって見る必要がある数字です。たとえば日本銀行の推計では、2025年度下半期の潜在成長率は0.8%でした。[2][3][4]
なぜ起きる?
主な伝わり方は、潜在成長率を形づくる3つの要素で説明されます。働く量 (労働)、設備などの量 (資本)、そして同じ人手と設備からどれだけ多くを生み出せるかという効率 (全要素生産性) です。
内閣府の推計で2025年度の潜在成長率0.5%の内訳を見ると、全要素生産性が+0.4ポイント、資本が+0.2ポイント、就業者数が+0.3ポイント、労働時間が−0.3ポイントでした (四捨五入のため合計は一致しません)。1995年度は資本が+0.9ポイント押し上げており、設備の積み増しによる押し上げは小さくなっています。[2]
就業者の数は成長を押し上げる方向に働いていますが、1人あたりの労働時間は押し下げる方向に働いています。今後は15〜64歳の人口が2031〜2040年に年1.3%程度のペースで減ると見込まれており、労働の面から成長を押し上げることは難しくなります。[3]
内閣府の2026年7月の試算は、投資や生産性の伸びがこれまで並みにとどまる場合、潜在成長率は中長期的に0%台前半に下がるとしています。一方、成長戦略の効果が十分に出る場合は1%台後半まで上がるとしており、見通しには幅があります。[3]
よくある誤解
よくある誤解
「名目GDPが増えていれば、暮らしは豊かになっている」
実際は
2025年度の名目GDPは4.3%増えましたが、物価の変化を除いた実質では0.9%増でした。名目の伸びの多くは値上がりによるもので、買えるモノやサービスの量がその分だけ増えたわけではありません。[1]
よくある誤解
「日本経済はずっとマイナス成長が続いている」
実際は
実質GDPは2021年度から5年続けて前年度を上回り、2025年度の594.5兆円は、いまの基準で比べられる1994年度以降で最も大きい金額です。課題は「縮んでいること」よりも「伸びが小さいこと」にあります。[1]
よくある誤解
「人口が減るのだから、経済成長はもうできない」
実際は
成長は、働く人の数だけでなく、設備や生産性の伸びでも決まります。内閣府の推計では、2025年度の潜在成長率を最も押し上げたのは全要素生産性 (+0.4ポイント) でした。ただし、人口減少が成長を下押しする力であることは変わりません。[2]
どんな選択肢がある?
どれかひとつが正解というわけではありません。それぞれに、期待できることと、負担や副作用があります。
投資や研究開発を後押しする
- 期待できること
- 設備や技術が増え、生産性と潜在成長率が上がる可能性があります。政府は2026年7月に「日本成長戦略」を閣議決定し、官民の投資を増やす方針を示しています。[3]
- 負担・副作用
- 補助金や減税には財源が必要です。投資が期待どおりの成果を生むとは限らず、効果が出るまでに時間もかかります。
働く人を増やす・働きやすくする
- 期待できること
- 女性、高齢者、外国人などの就業が進めば、働く量の減少をやわらげられます。
- 負担・副作用
- 保育や介護、受け入れ体制の整備が必要です。働く世代そのものが減るなかでは、押し上げには限りがあります。
財政支出で需要を下支えする
- 期待できること
- 景気の落ち込みを防ぎ、企業が投資や賃上げに動きやすい環境をつくれます。
- 負担・副作用
- 国の借金が増える要因になります。供給力が伸びないまま需要だけを増やすと、物価が上がりやすくなります。
成長率の高さより、1人あたりの豊かさや暮らしの質を重視する
- 期待できること
- 人口が減る社会に合った目標を立てやすくなります。
- 負担・副作用
- 経済全体の規模が伸びないと、社会保障や借金の返済を支える力は弱くなります。
これから見るべき指標
- 実質GDP成長率
- 内閣府が3か月ごとに速報を公表します。1次速報のあと2次速報で改定され、年度の数字もあとから見直されます。
- 名目GDP成長率
- 金額そのままの伸びです。実質との差から、物価の影響の大きさが分かります。
- 潜在成長率
- 経済の実力の伸び率の推計です。内閣府と日本銀行がそれぞれ推計しており、数字は少し異なります。
出典: 内閣府「月例経済報告 関係資料「GDPギャップ、潜在成長率」(2026年4-6月期四半期別GDP速報 (2次速報) ベース)」
- 中長期の経済財政に関する試算
- 内閣府が年に2回ほど、将来の成長率や財政の見通しを複数のケースで示します。直近は2026年7月です。
ほかの問題とのつながり
この課題は、次の課題の原因や結果になっています。つながりは「主な伝わり方」であり、統計的に証明された因果関係とは限りません。
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暮らしと経済
生産性の伸び悩み
記事あり同じ人手と設備から生み出す価値 (生産性) の伸びが、成長率を大きく左右します。
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暮らしと経済
実質賃金停滞・生活コスト上昇
記事あり経済全体のパイが増えにくいと、物価を上回る賃上げを続けることが難しくなります。
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暮らしと経済
個人消費の弱さ
記事ありGDPの5割強は個人消費です。消費が伸びないと、成長率も伸びにくくなります。
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暮らしと経済
財政赤字・政府債務
記事あり成長が弱いと税収が伸びにくく、借金の重さを測るGDP比も下がりにくくなります。
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人口と家族
生産年齢人口の減少
記事あり働く世代が減ると、働く量の面から成長を押し上げることが難しくなります。
出典・更新日
データ確認日:
- [1] 内閣府 経済社会総合研究所「2026年4-6月期四半期別GDP速報 (2次速報値) 統計表一覧」 公表: 2026年9月 / 確認: 2026年10月11日
- [2] 内閣府「月例経済報告 関係資料「GDPギャップ、潜在成長率」(2026年4-6月期四半期別GDP速報 (2次速報) ベース)」 公表: 2026年9月 / 確認: 2026年10月11日
- [3] 内閣府「中長期の経済財政に関する試算 (令和8年7月30日 経済財政諮問会議提出)」 公表: 2026年7月 / 確認: 2026年10月11日
- [4] 日本銀行「需給ギャップと潜在成長率」 確認: 2026年10月11日
誤りや古い数字を見つけたら、GitHub でこの記事のデータを直して Pull Request を出すか、Issue で教えてください。