暮らしと経済
生産性とは? 日本の「稼ぐ力」が伸び悩む理由
生産性とは、働いた時間や人数に対して、どれだけの価値を生み出せたかを表す数字です。日本の1時間あたりの労働生産性は、OECD (経済協力開発機構) に加盟する38か国のうち28位です。生産性は、賃上げを続けられるかどうかや、人手不足のなかで社会を回せるかどうかに関わります。
データ確認日:
-
時間あたり労働生産性 (購買力平価換算)
60.1ドル
2024年
-
OECD加盟38か国中の順位 (時間あたり)
28位
2024年
-
時間あたり実質労働生産性の上昇率
+0.2%
2024年度
原因から影響までの流れ
- 投資・デジタル化の遅れ
- 生産性の伸び悩み
- 賃上げの余力が小さい
- 人手不足でも供給を増やしにくい
矢印は、統計的に証明された因果関係ではなく、主な伝わり方を示しています。
いま何が起きている?
労働生産性とは、生み出した付加価値 (売上から原材料費などを引いた、新しく加わった価値) を、働いた人数や時間で割ったものです。同じ1時間でより多くの価値を生み出せれば、生産性が高いといいます。
日本生産性本部がOECDのデータをもとにまとめた国際比較によると、2024年の日本の時間あたり労働生産性は60.1ドル (5,720円) でした。OECD加盟38か国中28位で、主要先進7か国のなかでは最も低い水準です。[1]
就業者1人あたりで見ても9万8,344ドル (935万円) で38か国中29位、アメリカの54%程度でした。[1]
国内の動きだけを見ると、2024年度の時間あたり名目労働生産性は5,543円で、比べられる1994年度以降で最も高くなりました。物価の影響を除いた実質の上昇率は前年度比0.2%増で、4年続けてプラスですが、伸びは小さいままです。[2]
数字で見る
- アメリカ 116.5ドル
- ドイツ 98.9ドル
- フランス 90.9ドル
- イギリス 83.5ドル
- OECD平均 79.4ドル
- イタリア 79.2ドル
- カナダ 75.4ドル
- 日本 60.1ドル
この比較は、国ごとの物価のちがいをならす購買力平価という換算レートを使っています。為替レートで単純に円をドルに直した数字ではありません。[1]
製造業だけを見ると、2024年の日本の就業者1人あたり労働生産性は8万411ドルで、OECDの主要35か国中20位でした。2000年には1位でしたが、2015年以降は15〜20位で推移しています。こちらは為替レートで換算しているため、円安の影響も受けています。[1]
| 年度 | 潜在成長率 | うち全要素生産性の寄与 |
|---|---|---|
| 2005年度 | 0.8% | +0.8ポイント |
| 2013年度 | 1.0% | +1.2ポイント |
| 2019年度 | 0.4% | +0.4ポイント |
| 2025年度 | 0.5% | +0.4ポイント |
出典: 内閣府「月例経済報告 関係資料「GDPギャップ、潜在成長率」(2026年4-6月期四半期別GDP速報 (2次速報) ベース)」
全要素生産性とは、人手や設備の量を増やさなくても生み出せる価値が増える分、つまり技術や仕事の進め方の改善による伸びを表す数字です。内閣府の推計では、2013年度の+1.2ポイントから、2025年度は+0.4ポイントに縮んでいます。[3]
なぜ起きる?
主な伝わり方として、まず設備やソフトウェアへの投資の弱さが挙げられます。内閣府の推計では、設備などの資本が潜在成長率を押し上げる力は、1995年度の+0.9ポイントから2025年度は+0.2ポイントに小さくなりました。人が使う道具や仕組みが新しくならないと、1時間あたりに生み出せる価値は増えにくくなります。[3]
次に、働く人が増えても、生み出す価値がそれ以上に増えなければ、割り算の結果である生産性は下がります。日本生産性本部の国際比較では、2024年は就業者の増加が続いたことなどから、日本の時間あたり実質労働生産性の上昇率は−0.6%でした。[1]
また、生産性は「どれだけ効率よく作ったか」だけでなく、「いくらで売れたか」にも左右されます。良いサービスを安い価格で提供していると、数字の上では生産性が低く出ます。値上げをしにくい状況が長く続いたことが影響しているという見方もあります。
内閣府の2026年7月の試算は、全要素生産性の伸びがこれまで並みの0%台半ばで続くケースと、5年ほどで1.1%まで高まるケースなどを分けて示しています。どちらに近づくかで、将来の成長率の見通しは大きく変わります。[4]
よくある誤解
よくある誤解
「生産性が低いのは、日本人の働き方がなまけているからだ」
実際は
労働生産性は、生み出した付加価値を働いた時間や人数で割った数字です。設備や技術への投資、商品やサービスの価格、産業の構成などで決まり、ひとりひとりの勤勉さを測るものではありません。[1]
よくある誤解
「日本の生産性は下がり続けている」
実際は
国内の数字で見ると、2024年度の時間あたり名目労働生産性は5,543円と1994年度以降で最も高く、実質でも4年続けて上がっています。順位が低いのは、ほかの国の伸びのほうが大きいためです。[2]
よくある誤解
「コロナ禍のあと、日本だけが回復から取り残されている」
実際は
2024年の時間あたり実質労働生産性は、2019年と比べて日本が102.7%でした。アメリカ (109.7%) には及びませんが、イギリス (101.8%) やドイツ (101.3%) を上回っています。水準は低いものの、近年の伸びが特に小さいわけではありません。[1]
どんな選択肢がある?
どれかひとつが正解というわけではありません。それぞれに、期待できることと、負担や副作用があります。
省力化やデジタル化への投資を進める
- 期待できること
- 少ない人手で同じ仕事をこなせるようになり、人手不足への備えにもなります。
- 負担・副作用
- 導入の費用がかかり、小さな企業ほど負担が重くなります。使いこなす人材がいないと効果が出にくいです。
学び直しなど、人への投資を増やす
- 期待できること
- 新しい技術を使える人が増え、より価値の高い仕事に移りやすくなります。
- 負担・副作用
- 成果が出るまでに時間がかかります。学ぶ時間や費用を誰が負担するかが課題になります。
価格や賃金を上げやすい環境をつくる
- 期待できること
- 価値に見合った価格で売れるようになれば、付加価値が増え、賃上げの元手になります。
- 負担・副作用
- 商品やサービスの値段が上がり、家計の負担が増えます。
企業の合併や事業の入れ替わりを促す
- 期待できること
- 人や設備が、より価値を生みやすい企業や分野に移りやすくなります。
- 負担・副作用
- 廃業や転職にともなう痛みが生じます。地域の雇用やサービスが失われるおそれもあります。
これから見るべき指標
- 時間あたり労働生産性 (国際比較)
- 日本生産性本部がOECDのデータをもとに毎年12月ごろ公表します。直近は2025年12月公表の2024年分です。
- 時間あたり労働生産性 (国内)
- 日本生産性本部が毎年11月ごろ、年度ごとの水準と上昇率を公表します。直近は2025年11月公表の2024年度分です。
- 全要素生産性の寄与
- 内閣府が潜在成長率とあわせて推計を公表します。推計の方法によって数字が変わるため、幅をもって見る必要があります。
出典: 内閣府「月例経済報告 関係資料「GDPギャップ、潜在成長率」(2026年4-6月期四半期別GDP速報 (2次速報) ベース)」
- 設備投資
- GDP統計の「民間企業設備」で、3か月ごとに公表されます。将来の生産性を左右します。
ほかの問題とのつながり
この課題は、次の課題の原因や結果になっています。つながりは「主な伝わり方」であり、統計的に証明された因果関係とは限りません。
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暮らしと経済
経済停滞・低成長
記事あり生産性の伸びは、経済全体の成長率を左右する大きな要素です。
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暮らしと経済
実質賃金停滞・生活コスト上昇
記事あり1人が生み出す価値が増えないと、物価を上回る賃上げを長く続けることが難しくなります。
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技術と未来
技術革新・DX・AI導入の遅れ
記事ありデジタル技術やAIの活用は、同じ人手でより多くの仕事をこなすための主な手段のひとつです。
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暮らしと経済
技能不足・リスキリング不足
記事あり新しい設備や技術を入れても、使いこなせる人が育たなければ生産性は上がりにくくなります。
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暮らしと経済
中小企業の事業承継難
記事あり後継ぎがいない企業では、将来に向けた投資が後回しになりやすいと考えられます。
出典・更新日
データ確認日:
- [1] 公益財団法人 日本生産性本部「労働生産性の国際比較2025」 公表: 2025年12月 / 確認: 2026年10月11日
- [2] 公益財団法人 日本生産性本部「日本の労働生産性の動向2025」 公表: 2025年11月 / 確認: 2026年10月11日
- [3] 内閣府「月例経済報告 関係資料「GDPギャップ、潜在成長率」(2026年4-6月期四半期別GDP速報 (2次速報) ベース)」 公表: 2026年9月 / 確認: 2026年10月11日
- [4] 内閣府「中長期の経済財政に関する試算 (令和8年7月30日 経済財政諮問会議提出)」 公表: 2026年7月 / 確認: 2026年10月11日
- [5] 内閣府 経済社会総合研究所「2026年4-6月期四半期別GDP速報 (2次速報値) 統計表一覧」 公表: 2026年9月 / 確認: 2026年10月11日
誤りや古い数字を見つけたら、GitHub でこの記事のデータを直して Pull Request を出すか、Issue で教えてください。