暮らしと経済
リスキリング不足とは? 学び直しが進まないと何が起きるのか
リスキリングとは、仕事の変化に合わせて新しい知識や技能を身につけ直すことです。デジタルやAIなどで求められる力が変わるなか、日本では仕事のほかに自分で学んでいる人は3人に1人ほどにとどまります。学ぶ機会の差は、将来の仕事の選びやすさや収入の差につながります。
データ確認日:
-
自己啓発 (自分の意思で行う学び) をした労働者の割合
35.5%
2025年度調査 (2024年度の実績)
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能力開発や人材育成に何らかの問題があるとする事業所の割合
80.1%
2025年度調査 (2025年10月1日時点)
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AI・ロボットなどを使いこなす人材の不足の見込み
約340万人
2040年 (経済産業省の推計。一定の前提を置いた試算)
原因から影響までの流れ
- デジタル・AIなど技術の変化
- 求められる技能の変化
- 学び直しの不足
- 人手不足と余剰の併存
矢印は、統計的に証明された因果関係ではなく、主な伝わり方を示しています。
いま何が起きている?
厚生労働省の2025年度の調査では、仕事を離れて受ける研修 (OFF-JT) を受けた労働者は37.3%、自分の意思で学ぶ自己啓発をした労働者は35.5%でした。自己啓発は前回の調査より1.3ポイント下がっています。[1]
企業の側も課題を抱えています。能力開発や人材育成について「何らかの問題がある」と答えた事業所は80.1%でした。教育訓練にお金を出した企業は54.4%で、OFF-JTに出した費用は労働者1人あたり平均2.0万円 (2024年度の実績) です。[1]
この調査は、常用労働者30人以上の企業・事業所と、そこで働く人が対象です。もっと小さな会社で働く人や、自営業の人は含まれていません。[1]
数字で見る
| 区分 | OFF-JTを受けた | 自己啓発をした |
|---|---|---|
| 労働者全体 | 37.3% | 35.5% |
| 正社員 | 44.5% | 43.3% |
| 正社員以外 | 19.4% | 15.9% |
| 男性 | 43.5% | 40.3% |
| 女性 | 29.8% | 29.8% |
雇われ方によって、学ぶ機会には2倍以上の差があります。正社員以外の人は、OFF-JTを受けた割合も、自己啓発をした割合も、正社員の半分に届きません。[1]
- 30〜49人 53%
- 50〜99人 65.5%
- 100〜299人 79.6%
- 300〜999人 85.2%
- 1,000人以上 85.4%
会社の大きさによる差もあります。正社員にOFF-JTを実施した事業所は、1,000人以上の企業では85.4%ですが、30〜49人の企業では53.0%でした。[2]
なぜ起きる?
主な伝わり方は3つ考えられます。1つ目は、教える人と時間が足りないことです。人材育成に問題があるとした事業所が挙げた理由は、「指導する人材が不足している」が59.5%、「人材を育成しても辞めてしまう」が51.6%、「人材育成を行う時間がない」が45.5%でした (複数回答)。[2]
2つ目は、働く人の側に学ぶ余裕がないことです。自己啓発の問題点として最も多かったのは「仕事が忙しくて自己啓発の余裕がない」で、正社員の58.5%、正社員以外の36.1%が挙げました。正社員以外では「家事・育児が忙しくて余裕がない」も34.0%にのぼります。「費用がかかりすぎる」は正社員で26.2%、正社員以外で25.3%でした (複数回答)。[2]
3つ目は、求められる仕事の中身が変わっていくことです。経済産業省は2026年3月の推計で、十分な国内投資や産業の転換が実現した場合、2040年に事務職が約440万人余り、AI・ロボットなどを使いこなす人材が約340万人、現場の人材が約260万人足りなくなる可能性があるとしています。これは一定の前提を置いた試算で、確定した見通しではありません。[3]
人手が足りない職種と余る職種が同時に生まれると、学び直しによる移動が進まないかぎり、人手不足と仕事が見つからない人が並んで存在することになります。
よくある誤解
よくある誤解
「学び直しが進まないのは、本人のやる気の問題だ」
実際は
自己啓発の問題点として最も多く挙げられたのは「仕事が忙しくて余裕がない」で、正社員の58.5%が選びました。「家事・育児が忙しい」「費用がかかりすぎる」も多く、時間とお金の制約が大きいことがうかがえます。[2]
よくある誤解
「AIが広がると、仕事は全体として足りなくなる」
実際は
経済産業省の推計では、十分な国内投資などが実現した場合、2040年の就業者は約6,300万人 (2022年は約6,700万人) に減るものの、全体で大きな不足は生じないとされています。課題とされているのは、事務職が余り、専門職や現場の人材が足りなくなるという職種のずれです。[3]
どんな選択肢がある?
どれかひとつが正解というわけではありません。それぞれに、期待できることと、負担や副作用があります。
企業による研修を増やす
- 期待できること
- 仕事に直結する内容を、働く時間のなかで学べます。本人の費用負担も小さくなります。
- 負担・副作用
- 企業には費用と、教える人の確保が必要です。「育てても辞めてしまう」という懸念があり、小さな会社ほど取り組みにくい面があります。
個人の学びを公的に支援する
- 期待できること
- 会社を通さずに、本人が学ぶ内容を選べます。雇用保険の教育訓練給付には3つの種類があり、最も手厚い「専門実践教育訓練」では、条件を満たすと受講費用の最大80%が支給されます (2024年10月以降に開講する講座)。[4]
- 負担・副作用
- 財源は雇用保険料などです。学んだ内容が仕事や賃金に結びつくとは限りません。時間に余裕のある人ほど利用しやすくなるおそれもあります。
学ぶための時間を確保する
転職や職種の移動をしやすくする
- 期待できること
- 身につけた技能を、必要とされる職場で生かしやすくなります。学ぶ動機も高まると考えられます。
- 負担・副作用
- 移動が増えると、企業が自社で人を育てる動機は弱まるおそれがあります。年齢や地域によっては移りにくい人もいます。
これから見るべき指標
- OFF-JTを受けた労働者・自己啓発をした労働者の割合
- 厚生労働省の能力開発基本調査で毎年公表されます。2025年度調査の結果は2026年7月に公表されました。
- 正社員と正社員以外の差
- 同じ調査で、雇用形態・性別・学歴別の割合が公表されます。機会の差が縮まっているかを見る手がかりになります。
- 教育訓練にかける企業の費用
- OFF-JTや自己啓発支援に企業が出した費用の、労働者1人あたりの平均額です。
- 職種ごとの人材の過不足の見通し
- 経済産業省の就業構造推計です。2025年6月に初版、2026年3月に改訂版が示されました。
ほかの問題とのつながり
この課題は、次の課題の原因や結果になっています。つながりは「主な伝わり方」であり、統計的に証明された因果関係とは限りません。
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労働力不足
記事あり人手が足りない職場ほど研修に時間を割きにくく、必要な技能を持つ人も育ちにくくなります。
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生産性の伸び悩み
記事あり新しい技術を使いこなせる人が増えないと、設備やシステムに投資しても生産性が上がりにくくなります。
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技術革新・DX・AI導入の遅れ
記事ありデジタル化やAIの導入には、それを使う側の技能が必要です。人材の不足が導入の遅れの一因になります。
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暮らしと経済
若者の非正規雇用・雇用不安
記事あり正社員以外の人は研修を受ける機会が少なく、技能や収入を伸ばしにくい状態が続きやすくなります。
出典・更新日
データ確認日:
- [1] 厚生労働省「令和7年度「能力開発基本調査」の結果を公表します」 公表: 2026年7月 / 確認: 2026年10月11日
- [2] 厚生労働省「令和7年度能力開発基本調査 調査結果の概要」 公表: 2026年7月 / 確認: 2026年10月11日
- [3] 経済産業省「2040年の就業構造推計 (改訂版) について (厚生労働省の会議資料として掲載)」 公表: 2026年3月 / 確認: 2026年10月11日
- [4] 厚生労働省「教育訓練給付制度」 確認: 2026年10月11日
- [5] 厚生労働省「教育訓練休暇給付金」 確認: 2026年10月11日
誤りや古い数字を見つけたら、GitHub でこの記事のデータを直して Pull Request を出すか、Issue で教えてください。