暮らしと経済
事業承継難とは? 継ぐ人がいない会社で何が起きているのか
事業承継とは、会社や店の経営を次の人に引き継ぐことです。日本では経営者の高齢化が進み、継ぐ人が決まらないまま事業をやめる会社が少なくありません。会社がなくなると、そこで働く人の仕事や、長年つちかわれた技術、地域の取引のつながりも失われることがあります。
データ確認日:
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後継者が「いない」または「未定」の企業の割合
50.1%
2025年 (帝国データバンクによる約27万社の集計)
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休廃業・解散した企業の数
6万7,949件
2025年 (帝国データバンクの集計)
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休廃業・解散したときの経営者の平均年齢
71.5歳
2025年 (帝国データバンクの集計)
原因から影響までの流れ
- 経営者の高齢化
- 継ぐ人が決まらない
- 事業承継難
- 廃業による雇用・技術・取引の喪失
矢印は、統計的に証明された因果関係ではなく、主な伝わり方を示しています。
いま何が起きている?
民間の信用調査会社である帝国データバンクが全国約27万社を分析したところ、2025年に後継者が「いない」または「未定」だった企業は50.1%でした。前の年より2.0ポイント低く、7年続けて下がっています。[1]
それでも、事業をやめる会社は多い状態が続いています。2025年に休業・廃業・解散した企業 (倒産を除く) は6万7,949件で、前の年より1.6%減ったものの、過去10年で2番目に多い数でした。[2]
やめた会社の経営者の平均年齢は71.5歳で、過去最高でした。70代以上が63.7%を占めています。[2]
数字で見る
- 大企業 24.9%
- 中小企業 51.2%
- うち小規模企業 57.3%
後継者がいない割合は、会社が小さいほど高くなっています。都道府県別では、最も低い三重県が33.9%、最も高い秋田県が73.7%で、地域による差も大きくなっています。[1]
2025年に休廃業・解散した企業のうち、直前の決算が黒字だった割合は49.1%でした。2020年の57.1%から5年続けて下がり、さかのぼれる2016年以降で初めて50%を下回りました。資産が借金を上回っていた企業は63.4%です。[2]
| 区分 | 2015年 | 2019年 | 2023年 |
|---|---|---|---|
| 後継者が決まっている | 12.4% | 12.5% | 10.5% |
| 廃業を予定している | 50.0% | 52.6% | 57.4% |
日本政策金融公庫総合研究所の2023年1月の調査 (従業者299人以下の企業が対象) では、「廃業を予定している」と答えた企業の81.8%が従業者1〜4人の企業でした。[3]
なぜ起きる?
主な伝わり方は3つ考えられます。1つ目は、経営者の高齢化です。年齢が上がると体力や時間の余裕が減り、引き継ぎの準備が進めにくくなります。帝国データバンクの調査では、後継者がいたのに計画が中止・取りやめになった割合は、社長が80代以上の企業で4.7%と、どの年代よりも高くなっていました。[1]
2つ目は、家族が継ぐ形が減っていることです。2025年に代表者が交代した企業では、親族ではない役員や社員が継ぐ「内部昇格」が36.1%で、「同族承継」の32.3%を上回りました (速報値)。家族以外に継いでもらうには、株式や事業用の資産を買い取るお金や、相手を探す手間が必要になります。[1]
3つ目は、事業そのものの見通しです。公庫の調査では、廃業を予定する企業のうち、子どもがいない・継ぐ意思がない・適当な人が見つからないといった「後継者難」を理由に挙げたのは28.4%でした。最も多かったのは「そもそも誰かに継いでもらいたいと思っていない」の45.2%です。[3]
つまり、継ぐ人がいないことだけが理由ではなく、事業の将来性や、経営者個人の技能に頼る事業のかたちも関係しています。どの要因が大きいかは、業種や会社の規模によって違います。
よくある誤解
よくある誤解
「後継者がいない会社は増え続けている」
実際は
帝国データバンクの調査では、後継者不在率は2025年に50.1%で、7年続けて下がりました。過去10年で最も高かった2017年と比べると16.4ポイント低くなっています。ただし小規模企業では57.3%と高いままです。[1]
よくある誤解
「廃業するのは赤字で行きづまった会社だけだ」
実際は
2025年に休廃業・解散した企業のうち、直前の決算が黒字だった企業は49.1%、資産が借金を上回っていた企業は63.4%でした。経営が成り立っていても事業をやめる会社があります。ただし黒字の割合は5年続けて下がっています。[2]
よくある誤解
「廃業はすべて後継者不足が原因だ」
実際は
公庫の2023年調査では、廃業を予定する企業の理由で最も多かったのは「そもそも誰かに継いでもらいたいと思っていない」(45.2%) でした。後継者難を理由とする企業は28.4%です。[3]
どんな選択肢がある?
どれかひとつが正解というわけではありません。それぞれに、期待できることと、負担や副作用があります。
親族や従業員への引き継ぎを支援する
- 期待できること
- 事業の中身をよく知る人が継ぐため、取引先や従業員との関係を保ちやすくなります。株式を引き継ぐときの相続税・贈与税の納税を猶予する特例 (法人版事業承継税制の特例措置) があり、2027年12月31日までの相続・贈与が対象です。[5]
- 負担・副作用
- 税の優遇は、ほかの納税者との公平さや税収の面から議論があります。期限のある制度のため、準備が間に合わない会社も出ます。
第三者への引き継ぎ (M&A) を広げる
- 期待できること
- 親族や社内に継ぐ人がいなくても、事業・雇用・技術を残せる可能性があります。国が各都道府県に置く「事業承継・引継ぎ支援センター」では、2025年度に新しい相談者が2万4,030者、第三者への引き継ぎの成約が2,265件で、どちらも過去最多でした。[4]
- 負担・副作用
- 相手を探して条件をまとめるには時間と費用がかかります。売り手と買い手のあいだで情報に差があり、引き継いだあとに雇用や取引の条件が変わることもあります。
早めに準備を始めるよう働きかける
- 期待できること
- 経営者が元気なうちに準備を始めれば、後継者を育てる時間が取れ、選べる方法も増えます。
- 負担・副作用
- 日々の経営で手いっぱいの小さな会社ほど、準備に時間を割きにくい面があります。相談にのる金融機関や支援機関の人手も必要です。
廃業しやすくし、人や設備の移動を助ける
- 期待できること
- 無理に続けるよりも、余力のあるうちに事業をたたみ、従業員や設備がほかの会社に移るほうが、地域全体にとってよい場合があります。
- 負担・副作用
- その地域でしか受けられないサービスや、その会社にしかない技術が失われるおそれがあります。従業員の次の仕事が見つかるとは限りません。
これから見るべき指標
- 後継者不在率
- 後継者が「いない」「未定」の企業の割合です。帝国データバンクが毎年11月ごろに公表しています。民間の調査であり、国の統計ではありません。
- 休廃業・解散の件数と黒字の割合
- 倒産以外の形で事業をやめた企業の数です。直前の決算が黒字だった割合もあわせて公表されます。
- 廃業を予定している企業の割合
- 日本政策金融公庫総合研究所の調査です。これまで2015年・2019年・2023年に行われました。
- 事業承継・引継ぎ支援センターの相談者数と成約件数
- 公的な相談窓口の実績です。年度ごとに中小企業基盤整備機構がまとめています。
出典: 中小企業基盤整備機構 (J-Net21)「令和7年度の事業承継・引継ぎ支援センターの新規相談者数とM&A成約件数が過去最多」
ほかの問題とのつながり
この課題は、次の課題の原因や結果になっています。つながりは「主な伝わり方」であり、統計的に証明された因果関係とは限りません。
出典・更新日
データ確認日:
- [1] 帝国データバンク「全国「後継者不在率」動向調査 (2025年)」 公表: 2025年11月 / 確認: 2026年10月11日
- [2] 帝国データバンク「全国企業「休廃業・解散」動向調査 (2025年)」 公表: 2026年1月 / 確認: 2026年10月11日
- [3] 日本政策金融公庫総合研究所「中小企業の事業承継に関するインターネット調査 (2023年調査)」 公表: 2023年3月 / 確認: 2026年10月11日
- [4] 中小企業基盤整備機構 (J-Net21)「令和7年度の事業承継・引継ぎ支援センターの新規相談者数とM&A成約件数が過去最多」 公表: 2026年5月 / 確認: 2026年10月11日
- [5] 国税庁「No.4439 非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例等 (法人版事業承継税制)」 公表: 2026年4月 / 確認: 2026年10月11日
誤りや古い数字を見つけたら、GitHub でこの記事のデータを直して Pull Request を出すか、Issue で教えてください。