暮らしと経済
貧困と格差とは? 日本で何が起きているのか
日本では、およそ6〜7人に1人が、その社会の標準的な暮らしの半分に満たない所得で生活しています。こうした状態を「相対的貧困」といいます。所得や貯蓄の差は、教育・健康・住まいの機会の差につながりやすく、子どもの世代にも影響します。
データ確認日:
-
相対的貧困率
15.0%
2024年の所得 (2025年調査)
-
子どもの貧困率 (17歳以下)
11.0%
2024年の所得 (2025年調査)
-
大人が1人で子どもを育てる世帯の貧困率
44.7%
2024年の所得 (2025年調査)
原因から影響までの流れ
- 不安定な雇用・ひとり親・高齢の単身
- 低い所得と少ない貯蓄
- 貧困・格差
- 教育・健康・住まいの機会の差
矢印は、統計的に証明された因果関係ではなく、主な伝わり方を示しています。
いま何が起きている?
相対的貧困率とは、手取りの所得を世帯の人数で調整して1人あたりに直し、その真ん中の値の半分 (貧困線) に満たない人の割合です。2024年の貧困線は138万円で、相対的貧困率は15.0%でした。前回の2021年より0.4ポイント下がっています。[2]
17歳以下の子どもの貧困率は11.0%で、2021年より0.5ポイント下がりました。一方、大人が1人で子どもを育てている世帯では44.7%と高く、2021年の44.5%からほぼ変わっていません。[2]
暮らし向きについての意識も調べられています。2025年7月の時点で生活が「苦しい」と答えた世帯は55.4%でした。母子世帯では82.1%にのぼります。[2]
数字で見る
| 年 | 相対的貧困率 | 子どもの貧困率 | 大人が1人の子育て世帯 |
|---|---|---|---|
| 2018年 | 15.7% | 14.0% | 48.3% |
| 2021年 | 15.4% | 11.5% | 44.5% |
| 2024年 | 15.0% | 11.0% | 44.7% |
貧困率は3年ごとの大きな調査で計算されます。全体と子どもの貧困率はゆるやかに下がっていますが、ひとり親など大人が1人の世帯では、4割を超える状態が続いています。[2]
- 全世帯 10.7%
- 高齢者世帯 9.9%
- 児童のいる世帯 10.5%
- 母子世帯 21.8%
たくわえにも差があります。2025年の調査では、貯蓄がない世帯が10.7%ある一方、3,000万円以上ある世帯が13.0%ありました。1世帯あたりの平均貯蓄額は全世帯で1,414万8千円、母子世帯で485万3千円です。[2]
所得の分布にも偏りがあります。2024年の1世帯あたりの平均所得は575万2千円ですが、真ん中の世帯の所得 (中央値) は451万円で、全体の61.5%の世帯が平均以下でした。[2]
なぜ起きる?
主な伝わり方は3つ考えられます。1つ目は、世帯のかたちです。働き手が1人しかいない世帯は、病気や失業、子育てによる働く時間の制約の影響を受けやすくなります。大人が2人以上いる子育て世帯の貧困率が6.7%なのに対し、大人が1人の世帯では44.7%です。[2]
2つ目は、高齢化です。仕事を引退した世帯は、年金などを除いた所得が少なくなります。税や社会保障による再分配の前の所得 (当初所得) で見た格差は、長い目で見て広がる傾向にあり、厚生労働省は直近の拡大について高齢化などが要因だとしています。[3]
3つ目は、働き方と賃金の差です。正社員とそれ以外の働き方では賃金に差があり、不安定な雇用が長く続くと、所得だけでなく貯蓄や将来の年金にも差が出やすくなります。
一方で、年金・医療・税などの仕組みは格差を縮める方向に働いています。格差の大きさを0から1で表すジニ係数 (1に近いほど格差が大きい) は、2023年の調査で、再分配の前が0.5855、再分配の後が0.3825でした。再分配の後の値は、1999年の調査以降0.38前後でほぼ横ばいです。[3]
よくある誤解
よくある誤解
「日本に貧困はほとんどない」
実際は
ここでいう貧困は、食べるものにも困る「絶対的貧困」ではなく、その社会の標準的な暮らしと比べた「相対的貧困」です。2024年の所得では15.0%の人が貧困線 (138万円) に満たず、子どもでは11.0%でした。[2]
よくある誤解
「格差は一方的に広がり続けている」
実際は
再分配の前の所得で見たジニ係数は上昇する傾向にありますが、年金や税などによる再分配の後では、1999年の調査以降0.38前後でほぼ横ばいです。相対的貧困率も2021年の15.4%から2024年は15.0%に下がりました。ただし、ひとり親世帯の貧困率は高いままです。[3][2]
よくある誤解
「生活保護を受けているのは、働ける世代が中心だ」
実際は
2026年7月 (概数) に生活保護を受けていたのは196万9,655人、164万4,102世帯でした。世帯の種類別では高齢者世帯が55.2%を占め、その大半は単身の世帯です。[4]
どんな選択肢がある?
どれかひとつが正解というわけではありません。それぞれに、期待できることと、負担や副作用があります。
給付や税による再分配を強める
- 期待できること
- 所得の低い世帯の暮らしを直接支えられます。再分配によってジニ係数は34.7%改善しており (2023年調査)、仕組みとしての効果は確認されています。[3]
- 負担・副作用
- 財源が必要で、税や保険料として誰かが負担します。給付の対象をどこで区切るかによって、働いて所得を増やす動機が弱まる場合があります。
賃金と働き方の差を縮める
- 期待できること
- 最低賃金の引き上げや、働き方による待遇の差の見直しは、働いて得る所得そのものを底上げします。給付に頼らない形で貧困を減らせる可能性があります。
- 負担・副作用
- 企業、とくに中小企業の人件費が増えます。雇用が減るかどうかは、引き上げの幅や地域の状況によって見方が分かれます。
子どもと教育への支援を厚くする
- 期待できること
- 家庭の所得にかかわらず学ぶ機会を確保できれば、貧困が次の世代に引き継がれるのを防ぐことにつながります。
- 負担・副作用
- 効果が表れるまでに長い時間がかかります。いま困っている大人や高齢者への支援にはなりません。
住まいや相談など、お金以外の支援を広げる
- 期待できること
- 家賃の負担を軽くしたり、早い段階で相談につなげたりすることで、生活が行きづまる前に支えられます。
- 負担・副作用
- 支援を担う人と場所が必要で、地域によって受けられる内容に差が出やすくなります。必要な人に情報が届かないこともあります。
これから見るべき指標
- 相対的貧困率・子どもの貧困率
- 厚生労働省の国民生活基礎調査で、3年ごとの大きな調査の年に公表されます。2024年の所得にもとづく数字は2026年7月に公表されました。
- ジニ係数 (再分配の前と後)
- 厚生労働省の所得再分配調査で、おおむね3年ごとに公表されます。2023年調査の結果は2025年12月に公表されました。
- 生活保護を受けている人と世帯の数
- 厚生労働省の被保護者調査で、毎月の概数が公表されます。
- 生活が「苦しい」と答えた世帯の割合
- 国民生活基礎調査で毎年調べられます。数字に表れにくい暮らしの実感を見る手がかりになります。
ほかの問題とのつながり
この課題は、次の課題の原因や結果になっています。つながりは「主な伝わり方」であり、統計的に証明された因果関係とは限りません。
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暮らしと経済
実質賃金停滞・生活コスト上昇
記事あり物価が上がると、所得の低い世帯ほど食費や光熱費の負担が重くなり、暮らしの余裕が減ります。
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暮らしと経済
若者の非正規雇用・雇用不安
記事あり若いころの不安定な雇用は、所得や貯蓄の差として積み重なり、その後の暮らしにも影響します。
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教育と子ども
教育格差
記事あり家庭の所得の差は、塾や進学など学ぶ機会の差につながり、次の世代の所得にも影響しやすくなります。
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地域とインフラ
住宅価格・賃金の乖離
記事あり家賃や住宅価格が上がると、所得の低い世帯ほど住む場所の選択肢が限られます。
出典・更新日
データ確認日:
- [1] 厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況」 公表: 2026年7月 / 確認: 2026年10月11日
- [2] 厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況 II 各種世帯の所得等の状況」 公表: 2026年7月 / 確認: 2026年10月11日
- [3] 厚生労働省「令和5年所得再分配調査 報道発表資料」 公表: 2025年12月 / 確認: 2026年10月11日
- [4] 厚生労働省「被保護者調査 (令和8年7月分概数)」 公表: 2026年10月 / 確認: 2026年10月11日
誤りや古い数字を見つけたら、GitHub でこの記事のデータを直して Pull Request を出すか、Issue で教えてください。