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教育と子ども

教育格差とは? 生まれた家庭や地域で学びに差がつく問題

教育格差とは、家庭の収入や住んでいる地域など、本人には選べない条件によって、学力や進学に差がつくことです。公立中学校に通う子どもの学習費は、世帯の年収によって2倍近い開きがあります。子どもの時期の差は、大人になってからの仕事や収入にもつながりやすいと考えられています。

データ確認日:

原因から影響までの流れ

  1. 家庭の収入・地域・保護者の教育資源の差
  2. 塾や習いごと・学習環境の差
  3. 教育格差 (学力・進学の差)
  4. 将来の仕事・収入の差

矢印は、統計的に証明された因果関係ではなく、主な伝わり方を示しています。

いま何が起きている?

2024年の子どもの貧困率は11.0%でした。子どもの貧困率とは、世帯の所得が国全体のまんなかの半分 (2024年は138万円) に届かない家庭で暮らす17歳以下の割合です。2021年の11.5%から0.5ポイント下がりましたが、およそ9人に1人にあたります。[1]

家庭の収入によって、教育にかけられるお金には差があります。2023年度の調査では、公立中学校に通う子ども1人あたりの学習費は、年収400万円未満の世帯で年間約38万1千円、年収1,200万円以上の世帯で約72万4千円でした。[2]

学力にも家庭の背景との関係が見られます。2026年度の全国学力・学習状況調査でも、家にある本の冊数が少ない子どもほど、各教科の正答数やスコアが低い傾向がありました。この調査では、本の冊数を家庭の社会経済的な背景を表す目安として使っています。[5]

進学でも差があります。生活保護を受けている世帯の子どもの大学等進学率は、2025年4月1日時点で39.8%でした。全世帯は76.6%です。ただし、厚生労働省は、2つの数字は算出方法が違うため単純には比べられないとしています。[3]

数字で見る

公立中学校に通う子ども1人あたりの学習費総額 (世帯の年収別、2023年度)
  • 400万円未満 38.1万円
  • 400万〜599万円 46.8万円
  • 600万〜799万円 48.7万円
  • 800万〜999万円 59.6万円
  • 1,000万〜1,199万円 68.2万円
  • 1,200万円以上 72.4万円

出典: 文部科学省「結果の概要 令和5年度子供の学習費調査 (令和8年1月16日訂正版)」

公立中学校の学習費の平均は年間54万2,450円で、そのうち35万6,018円 (65.6%) は塾や習いごとなどの「学校外活動費」です。学校が公立でも、学校の外でかけるお金で差がつきやすい形になっています。[2]

公立小学校でも同じ傾向で、年収400万円未満の世帯は約26万1千円、1,200万円以上の世帯は約59万2千円でした。これは抽出調査による推計で、誤差があります。[2]

生活保護世帯の子どもと全世帯の進学率 (2025年4月1日時点)
指標生活保護世帯全世帯 (直近値)
高等学校等進学率92.0%98.9%
大学等進学率39.8%76.6%

出典: 厚生労働省「生活保護世帯の子どもの進学率等の経過 (令和7年4月1日時点)」

国際的に見ると、日本は差が小さいほうの国です。15歳を対象にしたPISA (OECD生徒の学習到達度調査) の2025年調査では、家庭の社会経済文化的な背景が上位25%の生徒と下位25%の生徒の科学の得点差は71点で、OECD平均の85点より小さくなっていました。[4]

一方で、同じ調査では成績が低い層の割合が増えました。基礎的な水準に届かない生徒 (習熟度レベル1以下) の割合は、2022年から2025年にかけて、読解力で13.8%から18.6%に、数学で12.0%から16.1%に上がっています。[4]

なぜ起きる?

主な伝わり方は3つあると考えられています。1つ目は、お金の差です。学習費の多くを塾や習いごとが占めるため、家計に余裕がある家庭ほど学校の外の学びを増やしやすくなります。[2]

2つ目は、お金以外の家庭の環境です。本や落ち着いて勉強できる場所があるか、保護者が勉強を見たり進路の情報を集めたりする時間があるかは、家庭によって違います。全国学力・学習状況調査が本の冊数を目安に使っているのも、こうした環境を表すと考えられているためです。[5]

3つ目は、地域の差です。塾や学校の選択肢、大学までの距離は地域によって違います。大学が近くにない地域では、進学に下宿代などの費用が上乗せされます。

ただし、これらは「関係が見られる」ということで、家庭の背景がそのまま結果を決めるわけではありません。2026年度の調査では、本の冊数が少ないグループでも、ICT機器を使いこなす自信がある生徒は正答率やスコアが高い傾向が報告されています。[5]

よくある誤解

よくある誤解

「日本は義務教育がしっかりしているので、教育格差はない」

実際は

国際的に見れば日本の差は小さいほうですが、ないわけではありません。PISAの2025年調査でも、家庭の背景が下位25%の生徒の科学の平均得点は504点、上位25%の生徒は575点で、71点の差がありました。[4]

よくある誤解

「学力の差は、本人の努力の差だけで決まる」

実際は

全国学力・学習状況調査では、2026年度の調査でも、家にある本の冊数が少ないグループほど正答数やスコアが低い傾向が見られました。努力が大切なことに変わりはありませんが、出発点となる環境に差があります。[5]

よくある誤解

「公立の学校に通えば、教育にかかるお金は同じだ」

実際は

公立中学校の学習費の65.6%は、塾などの学校外活動費です。年収400万円未満の世帯の学習費は約38万1千円、1,200万円以上の世帯は約72万4千円で、公立に通っていても差があります (2023年度)。[2]

どんな選択肢がある?

どれかひとつが正解というわけではありません。それぞれに、期待できることと、負担や副作用があります。

授業料などの家計の負担を公費で軽くする

期待できること
進学をあきらめる理由のうち、お金の部分を小さくできます。2026年度からは、高校の授業料を支援する就学支援金の所得制限がなくなりました。[6]
負担・副作用
大きな財源が必要です。所得にかかわらず支援すると、余裕のある家庭が浮いたお金を塾などに回し、学校外の差はかえって広がるという見方もあります。

所得の低い家庭に支援を集中させる

期待できること
限られた財源を、必要性の高い子どもに厚く配れます。
負担・副作用
線引きのすぐ上にいる家庭に不公平感が生まれます。申請の手間や、支援を受けることへのためらいから、届かない家庭も出ます。

学校の中での学びを手厚くする

期待できること
教員を増やす、放課後の学習支援を行うなど、学校で差を埋められれば、家庭の事情に左右されにくくなります。
負担・副作用
教員のなり手と予算の確保が必要です。いまいる教員の負担が増えるおそれもあります。

オンライン教材や端末を活用する

期待できること
住んでいる地域や塾の有無にかかわらず、質の高い教材に触れられます。
負担・副作用
家庭の通信環境や、そばで見守る大人がいるかどうかで効果が変わります。使いこなす力の差が新しい格差になる可能性もあります。

これから見るべき指標

子どもの貧困率
厚生労働省の国民生活基礎調査で、3年ごとの大規模調査のときに公表されます。2024年分は2026年7月に公表されました。

出典: 厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況」

世帯年収別の学習費
文部科学省の子供の学習費調査で、およそ2年ごとに公表されます。直近は2023年度分です。

出典: 文部科学省「結果の概要 令和5年度子供の学習費調査 (令和8年1月16日訂正版)」

生活保護世帯の子どもの進学率
厚生労働省が毎年4月1日時点の数字をまとめています。

出典: 厚生労働省「生活保護世帯の子どもの進学率等の経過 (令和7年4月1日時点)」

家庭の背景と学力の関係
全国学力・学習状況調査 (毎年) と、PISA (次回から4年ごと) で確認できます。

出典: 文部科学省・国立教育政策研究所「令和8年度 全国学力・学習状況調査の結果 (概要)」

ほかの問題とのつながり

この課題は、次の課題の原因や結果になっています。つながりは「主な伝わり方」であり、統計的に証明された因果関係とは限りません。

  • 暮らしと経済

    家計の苦しさは、塾や進学の費用を通じて子どもの学びに影響します。学びの差は、次の世代の収入の差につながりやすくなります。

  • 教育と子ども

    留学や英語の学習には費用がかかり、家庭の経済力で機会に差が出やすい分野です。

  • 人口と家族

    人口が減る地域では学校や塾の選択肢が少なくなり、進学のために地元を離れる若者が増えます。

出典・更新日

データ確認日:

  1. [1] 厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況」 公表: 2026年7月 / 確認: 2026年10月11日
  2. [2] 文部科学省「結果の概要 令和5年度子供の学習費調査 (令和8年1月16日訂正版)」 公表: 2024年12月 / 確認: 2026年10月11日
  3. [3] 厚生労働省「生活保護世帯の子どもの進学率等の経過 (令和7年4月1日時点)」 確認: 2026年10月11日
  4. [4] 文部科学省・国立教育政策研究所「OECD生徒の学習到達度調査 PISA2025のポイント」 公表: 2026年9月 / 確認: 2026年10月11日
  5. [5] 文部科学省・国立教育政策研究所「令和8年度 全国学力・学習状況調査の結果 (概要)」 公表: 2026年8月 / 確認: 2026年10月11日
  6. [6] 政府広報オンライン「令和8年度から、高校生等の修学支援が新しくなりました」 公表: 2026年9月 / 確認: 2026年10月11日

誤りや古い数字を見つけたら、GitHub でこの記事のデータを直して Pull Request を出すか、Issue で教えてください。