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教育と子ども

教育の国際競争力とは? 15歳の学力は世界上位、その先に残る課題

日本の15歳の学力は、国際調査で世界のトップ水準にあります。一方で、英語を使う力、海外で学ぶ学生の数、博士号を取る人の数では、目標や他の主要国に届いていない面があります。学校で身につけた力を、世界とつながる場でどう生かすかが問われています。

データ確認日:

原因から影響までの流れ

  1. 言葉の壁・留学の費用
  2. 大学や研究の環境、卒業後の進路
  3. 教育の国際化の遅れ
  4. 研究や産業で世界とつながる人材の不足

矢印は、統計的に証明された因果関係ではなく、主な伝わり方を示しています。

いま何が起きている?

15歳を対象にした国際的な学力調査PISA (OECD生徒の学習到達度調査) の2025年調査で、日本は科学・読解力・数学の3分野すべてでOECD加盟国中1位でした。3分野そろっての1位は調査開始から初めてです。参加した91の国・地域の中では、科学5位、読解力4位、数学5位でした。[1]

ただし、点数が上がったわけではありません。読解力の平均得点は503点で、2022年の516点から統計的に意味のある幅で下がりました。OECD平均も下がったため、順位は上がっています。成績が低い層の割合は3分野すべてで増えました。[1]

学校を出たあとの国際化には課題が残ります。2024年度に海外留学を始めた日本人学生は9万1,054人で、過去最多だった2018年度の11万5,146人には戻っていません。これは日本の大学などが把握している人数です。[2]

反対に、日本で学ぶ外国人留学生は増えています。2025年5月1日時点で40万8,069人となり、前の年より7万1,361人 (21.2%) 増えました。[3]

数字で見る

PISA2025の平均得点 (日本とOECD平均)
分野日本OECD平均日本の2022年
科学538点482点547点
読解力503点461点516点
数学525点463点536点

出典: 文部科学省・国立教育政策研究所「OECD生徒の学習到達度調査 PISA2025のポイント」

PISA2025には日本から183校、約6,500人の高校1年生などが参加しました。抽出調査のため、得点には幅があります。科学と数学の得点の低下は、統計的に意味のある差ではないとされています。[1]

海外留学を始めた日本人学生の数 (各年度、大学等が把握した数)
  • 2015年度 8.4万人
  • 2018年度 11.5万人
  • 2020年度 0.1万人
  • 2022年度 5.8万人
  • 2023年度 8.9万人
  • 2024年度 9.1万人

出典: 日本学生支援機構 (JASSO)「「2024(令和6)年度日本人学生留学状況調査」「2025(令和7)年度外国人留学生在籍状況調査」結果の公表について」

英語を使う力は、国の目標に届いていません。2025年度の調査では、CEFR (言語の力を表す国際的な目安) のA1レベル相当以上の公立中学生は54.6%、A2レベル相当以上の公立高校生は52.4%でした。国の計画は、2027年度までにどちらも6割以上にすることを目標にしています。[4]

この割合には、検定試験のスコアを持つ生徒のほか、教師が同じくらいの力があると判断した生徒も含まれます。より高いB1レベル相当以上の高校生は23.9%で、目標の3割に届いていません。[4]

大学院では、人口100万人あたりの博士号取得者数が124人で、主要国の中で6位です (科学技術指標2026)。1位は韓国、2位は英国、3位はドイツです。博士課程に入学する人は2025年度に約1.6万人で、3年続けて増えました。[5]

なぜ起きる?

主な伝わり方は4つあると考えられています。1つ目は言葉の壁です。日本では授業も仕事も日本語でほぼ完結するため、英語を実際に使う場面が限られます。英語力の目標に届いていないことは、留学や海外の大学院への進学の入口を狭くします。[4]

2つ目は費用です。留学には授業料に加えて渡航費や生活費がかかります。物価や為替の動きによっては、家計の負担がさらに重くなります。

3つ目は、卒業後の進路との関係です。日本では新卒の一括採用が広く行われており、留学や博士課程への進学が就職の時期とずれることを心配する学生がいると指摘されています。

4つ目は、受け入れる側の体制です。外国人留学生は40万人を超えましたが、在学段階別では日本語教育機関が14万174人、専修学校 (専門課程) が10万6,829人で、大学院は6万13人です。人数が増えることと、大学の教育や研究が国際的になることは、同じではありません。[3]

よくある誤解

よくある誤解

「日本の子どもの学力は落ち続けている」

実際は

PISAの2025年調査で、日本は3分野すべてでOECD加盟国中1位でした。2015年以降、OECD平均の得点は下がっていますが、日本は横ばいとされています。ただし、読解力の得点は前回より下がり、成績が低い層の割合は3分野とも増えました。[1]

よくある誤解

「PISAで1位なのだから、教育の国際化に問題はない」

実際は

PISAが測るのは15歳時点の科学・読解力・数学の力です。英語を使う力や留学の経験は、この調査では分かりません。英語力がCEFR A2レベル相当以上の公立高校生は52.4%で、国の目標の6割に届いていません (2025年度)。[4]

よくある誤解

「外国人留学生が増えたので、大学の国際化は進んだ」

実際は

2025年5月1日時点の留学生40万8,069人のうち、大学 (学部) は9万2,442人、大学院は6万13人です。前の年からの増加は、専修学校 (専門課程) の3万427人増と日本語教育機関の3万2,933人増が大半を占めます。[3]

どんな選択肢がある?

どれかひとつが正解というわけではありません。それぞれに、期待できることと、負担や副作用があります。

留学する日本人学生への経済的な支援を増やす

期待できること
費用が理由で留学をあきらめる学生を減らせます。政府は2033年までに日本人学生の海外留学者数を50万人にすることを目指すとしています。[6]
負担・副作用
公費の負担が増えます。もともと余裕のある家庭の学生ほど利用しやすい制度になると、機会の差は縮まりません。

外国人留学生の受け入れを広げる

期待できること
教室や研究室に多様な背景の人が加わり、日本人学生にとっても国際的な経験になります。卒業後に日本で働く人が増えれば、人手不足を補う面もあります。政府は2033年までに受け入れ数を40万人にすることを目指すとしています。[6]
負担・副作用
日本語の支援、住まい、就職の支援などの体制づくりが必要です。人数を増やすことを優先すると、教育の質の確保が後回しになるという見方もあります。

英語教育を、使う力を重視する方向に変える

期待できること
話す・書く力がつけば、留学や海外との仕事の入口が広がります。
負担・副作用
教える側の研修と時間が必要です。ほかの教科や、日本語で深く考える力の育成とのバランスをどう取るかで意見が分かれます。

博士課程の学生への支援と、修了後の進路を広げる

期待できること
生活の不安や就職の不安が減れば、博士課程に進む人が増える可能性があります。
負担・副作用
支援の財源が必要です。大学や企業に博士人材を生かす仕事が増えなければ、修了後の行き先が足りなくなります。

これから見るべき指標

PISAの平均得点と成績が低い層の割合
OECDが15歳を対象に行う調査です。2025年以降は4年ごとに実施されます。順位だけでなく、得点の変化と低得点層の割合に注目します。

出典: 文部科学省・国立教育政策研究所「OECD生徒の学習到達度調査 PISA2025のポイント」

日本人学生の留学者数
日本学生支援機構が年度ごとに調べています。2024年度分は2026年5月に公表されました。

出典: 日本学生支援機構 (JASSO)「「2024(令和6)年度日本人学生留学状況調査」「2025(令和7)年度外国人留学生在籍状況調査」結果の公表について」

外国人留学生数 (在学段階別)
毎年5月1日時点の人数です。総数だけでなく、大学・大学院で学ぶ人の数を見ます。

出典: 日本学生支援機構 (JASSO)「2025(令和7)年度外国人留学生在籍状況調査結果」

中学生・高校生の英語力
文部科学省が公立学校を対象に毎年度調べています。

出典: 文部科学省「令和7年度「英語教育実施状況調査」の結果について」

人口100万人あたりの博士号取得者数
科学技術・学術政策研究所が毎年8月ごろに「科学技術指標」で主要国と比べています。

出典: 文部科学省 科学技術・学術政策研究所 (NISTEP)「科学技術指標2026 解説資料」

ほかの問題とのつながり

この課題は、次の課題の原因や結果になっています。つながりは「主な伝わり方」であり、統計的に証明された因果関係とは限りません。

  • 技術と未来

    博士号を取る人が少ないと、大学や企業で研究を担う人材が細ります。海外の研究者と一緒に研究する機会も広がりにくくなります。

  • 教育と子ども

    教育格差

    記事あり

    留学や英語の学習には費用がかかり、家庭の経済力によって機会に差が出やすくなります。

  • 暮らしと経済

    日本で学んだ留学生が卒業後に日本で働くかどうかは、外国人の受け入れのあり方と関わります。

  • 暮らしと経済

    語学や専門知識を社会に出てから学び直す機会が少ないと、学校を出た時点の差がそのまま残りやすくなります。

出典・更新日

データ確認日:

  1. [1] 文部科学省・国立教育政策研究所「OECD生徒の学習到達度調査 PISA2025のポイント」 公表: 2026年9月 / 確認: 2026年10月11日
  2. [2] 日本学生支援機構 (JASSO)「「2024(令和6)年度日本人学生留学状況調査」「2025(令和7)年度外国人留学生在籍状況調査」結果の公表について」 公表: 2026年5月 / 確認: 2026年10月11日
  3. [3] 日本学生支援機構 (JASSO)「2025(令和7)年度外国人留学生在籍状況調査結果」 公表: 2026年5月 / 確認: 2026年10月11日
  4. [4] 文部科学省「令和7年度「英語教育実施状況調査」の結果について」 公表: 2026年 / 確認: 2026年10月11日
  5. [5] 文部科学省 科学技術・学術政策研究所 (NISTEP)「科学技術指標2026 解説資料」 公表: 2026年8月 / 確認: 2026年10月11日
  6. [6] 文部科学省「第6回教育未来創造会議を開催 (第二次提言「J-MIRAI」の取りまとめ)」 公表: 2023年4月 / 確認: 2026年10月11日

誤りや古い数字を見つけたら、GitHub でこの記事のデータを直して Pull Request を出すか、Issue で教えてください。