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食料とエネルギー

再エネと送電網の制約とは? つくった電気を使い切れない理由

太陽光や風力などの再生可能エネルギーが増える一方で、晴れた昼などに電気が余り、発電を一時的に止めてもらう「出力制御」が全国に広がっています。電気を運ぶ送電網や、ためる設備が足りないことが背景にあります。電気料金や脱炭素の進み方にかかわる問題です。

データ確認日:

原因から影響までの流れ

  1. 太陽光・風力の急増
  2. 天気で変わる発電量・離れた適地と消費地
  3. 送電網・蓄電・調整力の不足
  4. 出力制御の増加・投資の負担

矢印は、統計的に証明された因果関係ではなく、主な伝わり方を示しています。

いま何が起きている?

2024年度に再生可能エネルギー (水力を含む) でつくられた電気は2,286億kWhで、発電電力量全体の23.1%でした (確報)。なかでも太陽光は、2010年度の35億kWhから2024年度の981億kWhへと大きく増えました。[1]

電気は、使う量とつくる量をいつも一致させる必要があります。晴れた休日の昼など、使う量が少ないのに太陽光の発電が多いときは、電気が余ります。そのとき、送配電会社が発電所に発電を抑えるよう求めることを出力制御 (出力抑制) といいます。

太陽光と風力の出力抑制は、2024年度に全国で388回行われ、前の年度より83回増えました。最も多かったのは九州の128回です。[2]

電力広域的運営推進機関によると、2025年度には東京エリアでも初めて行われ、出力制御は全国に広がりました。ほかの地域へ電気を送ってもなお、複数の地域で同時に抑制する状況になっており、抑えられる電気の量は増える傾向にあります。[3]

数字で見る

太陽光による発電電力量の推移 (各年度、2024年度は確報)
  • 2010年度 35億kWh
  • 2014年度 230億kWh
  • 2018年度 627億kWh
  • 2020年度 791億kWh
  • 2022年度 926億kWh
  • 2024年度 981億kWh

出典: 資源エネルギー庁「令和6年度(2024年度)エネルギー需給実績(確報)」

太陽光・風力の出力抑制の回数 (2024年度、エリア別。東京は実績なし)
  • 九州 128回
  • 四国 77回
  • 中国 67回
  • 東北 32回
  • 関西 30回
  • 中部 23回
  • 北陸 22回
  • 沖縄 7回
  • 北海道 2回

出典: 電力広域的運営推進機関「電力需給及び電力系統に関する概況(2024年度の実績) (第529回理事会 第3号議案)」

発電電力量の内訳 (2024年度、確報)
電源発電電力量割合
火力 (バイオマスを除く)6,690億kWh67.5%
再生可能エネルギー (水力を含む)2,286億kWh23.1%
原子力935億kWh9.4%
合計9,911億kWh100%

出典: 資源エネルギー庁「令和6年度(2024年度)エネルギー需給実績(確報)」

再生可能エネルギー2,286億kWhの内訳は、太陽光981億、水力735億、バイオマス414億、風力117億、地熱39億kWhです。天気によって発電量が変わる太陽光と風力が、合わせて半分近くを占めます。[1]

これから使う電気の量は増える見通しです。電力広域的運営推進機関は、データセンターや半導体工場の新設などにより、全国の需要電力量が2035年度まで年平均0.5%のペースで増えると想定しています (2026年1月公表)。[5]

なぜ起きる?

主な伝わり方の1つ目は、発電量が天気と時間で変わることです。太陽光は昼に集中し、夜は発電しません。電気が余るときは、決められた順番で調整します。まず火力を抑え、水をくみ上げる揚水発電や蓄電池で電気をため、ほかの地域へ送ります。それでも余るときに太陽光や風力を抑えます。[3]

2つ目は、発電に向いた場所と、電気を多く使う場所が離れていることです。地域と地域をつなぐ太い送電線を地域間連系線といいますが、送れる量には限りがあります。送り先の地域でも同じ時間に電気が余っていれば、受け取ってもらえません。[2][3]

3つ目は、送電網の整備に時間とお金がかかることです。2023年3月に定められた長期の計画 (マスタープラン) は、2050年を見すえた広域の送電網づくりに7兆円規模の投資が必要になりうると試算しました。[4] 送電網の費用は、電気料金などを通じて利用者が負担することになります。

このほか、蓄電池の普及、電気の使い方を時間帯で変える仕組み、火力発電の出力をどこまで下げられるかなども関係します。どの対策がどれだけ効くかは、地域や季節によって変わります。

よくある誤解

よくある誤解

「出力制御が増えるのは、再生可能エネルギーが多すぎて無駄だからだ」

実際は

出力制御は、停電を防ぐために使う量とつくる量を合わせる仕組みです。先に火力を抑え、蓄電やほかの地域への送電を行い、それでも余る場合に行われます。2024年度の発電電力量に占める再生可能エネルギーの割合は23.1%で、67.5%は火力です。[1][3]

よくある誤解

「送電線を増やせば、すべて解決する」

実際は

送電線の増強は有力な手段ですが、大きな費用と長い期間がかかります。マスタープランは、発電所や電気を多く使う施設の立地を工夫することで、送電網への投資を減らせる可能性も示しています。蓄電や需要の調整と組み合わせることが前提になります。[4]

よくある誤解

「出力制御は九州だけの話だ」

実際は

2024年度は、北海道から沖縄まで9つのエリアで出力抑制が行われました。2025年度には東京エリアでも初めて行われ、全国に広がっています。[2][3]

どんな選択肢がある?

どれかひとつが正解というわけではありません。それぞれに、期待できることと、負担や副作用があります。

地域をまたぐ送電網を増強する

期待できること
余った電気を足りない地域へ送れるようになり、出力制御を減らせます。災害のときに助け合う力も高まります。
負担・副作用
建設に長い年月と兆円単位の費用がかかり、電気料金などで利用者が負担します。将来の発電所の立地や需要が変わると、設備が十分に使われないおそれもあります。

蓄電池や揚水発電でためる

期待できること
昼に余った電気を夕方や夜に回せます。送電線より短い期間で設置できる場合があります。
負担・副作用
設備の費用がかかります。蓄電池に使う鉱物の調達や、使い終えた電池の処理も課題です。

電気の使い方を動かす

期待できること
電気が余る時間帯に使う量を増やしたり、電気を多く使う施設を発電所の近くに誘導したりすれば、新しい設備を減らせます。
負担・副作用
企業や家庭の行動を変える必要があり、料金の仕組みや機器の整備が必要です。効果の大きさは見通しにくい面があります。

一定の出力制御を受け入れて導入を続ける

期待できること
設備への投資を抑えながら、再生可能エネルギーの導入量を増やせます。
負担・副作用
発電事業者の収入が減り、新しい投資が進みにくくなるおそれがあります。つくれるはずの電気を使わないことになります。

これから見るべき指標

再生可能エネルギーの発電量と割合
毎年度のエネルギー需給実績で公表されます。2024年度の確報は2026年4月に公表されました。

出典: 資源エネルギー庁「令和6年度(2024年度)エネルギー需給実績(確報)」

出力抑制の回数と量
エリアごとの実績を、電力広域的運営推進機関がまとめて公表しています。

出典: 電力広域的運営推進機関「電力需給及び電力系統に関する概況(2024年度の実績) (第529回理事会 第3号議案)」

地域間連系線などの整備の進み具合
長期の計画にもとづいて、どの区間をいつ増強するかが具体化されていきます。

出典: 電力広域的運営推進機関「広域系統長期方針(広域連系系統のマスタープラン) 概要」

電力需要の想定
データセンターなどの新設をふまえた10年先までの見通しが、毎年公表されます。

出典: 電力広域的運営推進機関「全国及び供給区域ごとの需要想定(2026年度)」

ほかの問題とのつながり

この課題は、次の課題の原因や結果になっています。つながりは「主な伝わり方」であり、統計的に証明された因果関係とは限りません。

  • 食料とエネルギー

    再生可能エネルギーは国内でつくれる電気です。使い切れずに抑える量が増えると、輸入燃料を減らす効果が小さくなります。

  • 食料とエネルギー

    原子力は出力を細かく変えにくいため、電気が余るときの調整では最後に回されます。再生可能エネルギーとの組み合わせ方が論点になります。

  • 気候・自然・災害

    太陽光や風力を増やすことは温暖化対策の柱の一つです。送電網の制約は、その進み方を左右します。

  • 技術と未来

    データセンターの増加は電気の需要を押し上げます。一方、発電や需要の予測、蓄電池の制御にはデジタル技術が欠かせません。

出典・更新日

データ確認日:

  1. [1] 資源エネルギー庁「令和6年度(2024年度)エネルギー需給実績(確報)」 公表: 2026年4月 / 確認: 2026年10月11日
  2. [2] 電力広域的運営推進機関「電力需給及び電力系統に関する概況(2024年度の実績) (第529回理事会 第3号議案)」 公表: 2025年9月 / 確認: 2026年10月11日
  3. [3] 電力広域的運営推進機関「最近の需給状況について ~再エネ出力制御の状況、夏季の需給見通し~」 公表: 2026年5月 / 確認: 2026年10月11日
  4. [4] 電力広域的運営推進機関「広域系統長期方針(広域連系系統のマスタープラン) 概要」 公表: 2023年3月 / 確認: 2026年10月11日
  5. [5] 電力広域的運営推進機関「全国及び供給区域ごとの需要想定(2026年度)」 公表: 2026年1月 / 確認: 2026年10月11日

誤りや古い数字を見つけたら、GitHub でこの記事のデータを直して Pull Request を出すか、Issue で教えてください。