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食料とエネルギー

原発政策とは? 再稼働・廃炉・廃棄物をめぐる論点

原子力発電は、燃料の輸入が少なくて済み、発電のときに二酸化炭素を出さない一方、事故への備え、使い終えた燃料の処分、福島第一原発の廃炉という長い課題を抱えています。電気料金、気候変動対策、地域の安全にかかわり、立場によって重視する点が分かれるテーマです。

データ確認日:

原因から影響までの流れ

  1. 燃料の輸入依存・脱炭素の要請
  2. 原発の再稼働や建て替えの議論
  3. 安全・避難・廃棄物・廃炉の課題
  4. 電気料金や地域の将来への影響

矢印は、統計的に証明された因果関係ではなく、主な伝わり方を示しています。

いま何が起きている?

2011年3月の東京電力福島第一原子力発電所の事故の後、国内の原発は順に止まり、2014年度には原子力による発電がゼロになりました。その後、新しい規制基準の審査を通った原発から再び動き始めています。[2]

資源エネルギー庁の資料によると、2026年1月30日時点で再稼働した原子炉は14基です (送電を再開したものを数えています)。このほか、国の許可を受けたものが4基、審査中が8基、審査を申請していないものが10基あり、廃炉が決まったものは24基です。この集計の後、2026年4月16日に東京電力の柏崎刈羽原発6号機が営業運転を始めました。[1][3]

2024年度に原子力でつくられた電気は935億kWhで、発電電力量全体の9.4%でした (確報)。事故の前の2010年度は2,882億kWhでした。[2]

政府は、2040年度の電源構成のうち原子力が2割程度になるとの見通しを示しています。2026年7月には、古くなる原発の建て替えについて、2050年代までに約11〜14基分が必要になるという試算も示しました。[4]

数字で見る

原子力による発電電力量の推移 (各年度、2024年度は確報)
  • 2010年度 2,882億kWh
  • 2012年度 159億kWh
  • 2014年度 0億kWh
  • 2018年度 649億kWh
  • 2020年度 388億kWh
  • 2023年度 841億kWh
  • 2024年度 935億kWh

出典: 資源エネルギー庁「令和6年度(2024年度)エネルギー需給実績(確報)」

原子炉の状況 (2026年1月30日時点、資源エネルギー庁の資料による。建設中のものを含む)
区分基数
再稼働 (稼働中11基・停止中3基)14基
新規制基準の許可を受けた (再稼働前)4基
新規制基準の審査中8基
審査を申請していない10基
廃炉が決まった24基

出典: 資源エネルギー庁「2025年度自治体説明会資料 (原子力発電所の現状 2026年1月30日時点、高レベル放射性廃棄物の最終処分)」

福島第一原発では、事故で溶けて固まった燃料 (燃料デブリ) が1〜3号機に合わせて約880トンあると推定されています。試験的な取り出しは2024年9月10日に2号機で始まりました。国の工程表は、30〜40年かけて廃炉を終えることを目標にしています。[6][7]

東京電力は、放射性物質を取り除く処理をした水 (ALPS処理水) を、海水で薄めて海に流す作業を2023年8月24日から続けています。放出する水のトリチウムの濃度や年間の総量には上限が定められ、周辺の海水の測定結果が公表されています。[9]

原発から出る放射能の強い廃棄物は、地下深くに埋める方針ですが、処分する場所は決まっていません。最初の段階にあたる文献調査が、北海道の寿都町と神恵内村 (2020年〜)、佐賀県玄海町 (2024年〜) で始まり、2026年には東京都小笠原村の南鳥島も対象になりました。[1][8]

なぜ起きる?

議論が続く主な理由の1つ目は、原発の持つ利点です。2024年度は発電電力量の67.5%が火力で、その燃料は輸入に頼っています。原発は発電のときに二酸化炭素を出さず、燃料価格の変動の影響も受けにくい電源です。政府はこの点を重視し、再生可能エネルギーとともに最大限活用するとしています。[2][3][4]

2つ目は、事故のリスクです。原子力規制委員会は、福島第一原発の事故の反省をふまえて新しい規制基準をつくりました。同時に、基準を満たしても絶対的な安全が確保できるわけではないと説明しています。地震や津波への備え、事故のときの住民の避難が実際にできるかどうかが、各地で問われています。[5]

3つ目は、長い時間がかかる後始末です。使い終えた燃料の再処理、廃棄物の最終処分、古い原発の廃炉は、数十年から、それ以上の期間にわたります。福島第一原発の廃炉も、取り出した燃料デブリの扱いなど、これから決めることが残っています。[7]

4つ目は、地域の合意です。再稼働には、法律上の審査のほかに、立地する自治体の理解を得る手続きが事実上必要になっています。雇用や財政の面で原発に支えられてきた地域と、事故のときに影響を受ける周辺の地域とで、受け止め方が異なることがあります。

よくある誤解

よくある誤解

「国の審査に合格した原発は、絶対に安全だ」

実際は

原子力規制委員会は、新規制基準は原子力施設の設置や運転の可否を判断するためのもので、満たせば絶対的な安全性が確保できるわけではないと説明しています。安全を高める取り組みは続ける必要があるとしています。[5]

よくある誤解

「日本の原発は、ほとんどが再稼働している」

実際は

2026年1月30日時点で再稼働したのは14基です。審査中のものが8基、審査を申請していないものが10基あり、24基は廃炉が決まっています。原子力の発電量は、2024年度で事故前 (2010年度) の3分の1ほどです。[1][2]

よくある誤解

「福島第一原発の廃炉は、もうすぐ終わる」

実際は

燃料デブリは約880トンあると推定され、試験的な取り出しが2024年9月に始まった段階です。国の工程表の目標は、30〜40年かけて廃炉を終えることです。[6][7]

どんな選択肢がある?

どれかひとつが正解というわけではありません。それぞれに、期待できることと、負担や副作用があります。

審査を通った原発の再稼働を進める

期待できること
燃料の輸入を減らし、電気料金や二酸化炭素の排出を抑える効果が期待できます。すでにある設備を使えます。
負担・副作用
事故のリスクはゼロにはなりません。避難計画の実効性の確保、地域の合意、使い終えた燃料の置き場が課題になります。

運転期間を延ばす・新しい原発に建て替える

期待できること
将来にわたって、天気に左右されない脱炭素の電源を確保できます。技術や人材を国内に保てます。
負担・副作用
古い設備の劣化を管理する必要があります。建て替えには十数年から20年程度の期間と大きな費用がかかり、廃棄物も増え続けます。[4]

原発への依存を下げ、ほかの電源でまかなう

期待できること
事故のリスクと、新たに生まれる廃棄物を減らせます。
負担・副作用
再生可能エネルギーの拡大には送電網や蓄電池への投資が必要です。火力で補えば、燃料の輸入と二酸化炭素の排出が増えます。すでにある廃棄物の処分は、どの道を選んでも残ります。

最終処分地の選定を進める

期待できること
廃棄物の行き先が決まれば、将来の世代に先送りする負担を減らせます。
負担・副作用
調査を受け入れる地域が限られています。安全性への不安や、特定の地域に負担が集中することへの反対があり、合意には長い時間がかかります。

これから見るべき指標

再稼働した原子炉の数・審査の状況
原子力規制委員会の審査と、地元の同意の進み方で変わります。資源エネルギー庁が状況をまとめています。

出典: 資源エネルギー庁「2025年度自治体説明会資料 (原子力発電所の現状 2026年1月30日時点、高レベル放射性廃棄物の最終処分)」

発電電力量に占める原子力の割合
毎年度のエネルギー需給実績で公表されます。2024年度の確報は2026年4月に公表されました。

出典: 資源エネルギー庁「令和6年度(2024年度)エネルギー需給実績(確報)」

福島第一原発の廃炉の進み具合
燃料の取り出し、燃料デブリの取り出し、汚染水の発生量などの目標と実績を、東京電力が公表しています。

出典: 東京電力ホールディングス「廃炉に向けたロードマップ」

最終処分地の調査の段階
文献調査、概要調査、精密調査の順に進みます。どの地域がどの段階にあるかを見ます。

出典: 原子力発電環境整備機構 (NUMO)「調査の状況と対話の記録」

原子力政策の方針
建て替えの見通しや支援の仕組みが、政府の会議で示されます。直近では2026年7月に指針が改正されました。

出典: 原子力関係閣僚会議「今後の原子力政策の方向性と行動指針 (令和8年7月31日一部改正)」

ほかの問題とのつながり

この課題は、次の課題の原因や結果になっています。つながりは「主な伝わり方」であり、統計的に証明された因果関係とは限りません。

  • 食料とエネルギー

    原発が動くと、火力発電に使う輸入燃料を減らせます。止まっているあいだは、その分を火力などで補うことになります。

  • 食料とエネルギー

    原発は出力を細かく変えにくい電源です。天気で発電量が変わる再生可能エネルギーと、どう組み合わせるかが課題になります。

  • 気候・自然・災害

    大きな地震や津波への備えは、原発の安全の中心的な論点です。災害と原子力事故が重なったときの避難も課題です。

  • 気候・自然・災害

    原発は発電のときに二酸化炭素を出さないため、温暖化対策の手段の一つとして位置づける考え方があります。

出典・更新日

データ確認日:

  1. [1] 資源エネルギー庁「2025年度自治体説明会資料 (原子力発電所の現状 2026年1月30日時点、高レベル放射性廃棄物の最終処分)」 公表: 2026年2月 / 確認: 2026年10月11日
  2. [2] 資源エネルギー庁「令和6年度(2024年度)エネルギー需給実績(確報)」 公表: 2026年4月 / 確認: 2026年10月11日
  3. [3] 資源エネルギー庁「柏崎刈羽原発6号機が再稼働―運転再開の重要性とその背景(後編)」 公表: 2026年5月 / 確認: 2026年10月11日
  4. [4] 原子力関係閣僚会議「今後の原子力政策の方向性と行動指針 (令和8年7月31日一部改正)」 公表: 2026年7月 / 確認: 2026年10月11日
  5. [5] 原子力規制委員会「新規制基準」 確認: 2026年10月11日
  6. [6] 東京電力ホールディングス「廃炉に向けたロードマップ」 確認: 2026年10月11日
  7. [7] 東京電力ホールディングス「燃料デブリ ポータルサイト Q&A」 確認: 2026年10月11日
  8. [8] 原子力発電環境整備機構 (NUMO)「調査の状況と対話の記録」 確認: 2026年10月11日
  9. [9] 東京電力ホールディングス「処理水ポータルサイト 放出実績」 確認: 2026年10月11日

誤りや古い数字を見つけたら、GitHub でこの記事のデータを直して Pull Request を出すか、Issue で教えてください。