気候・自然・災害
大規模地震・津波リスクとは? 南海トラフと首都直下で何が想定されているのか
日本では、南海トラフ地震や首都直下地震のような大きな地震が、今後数十年のうちに起きる可能性が高いと評価されています。被害は揺れや津波に遭う地域だけでなく、物流や電気、国の財政を通じて全国に広がるため、住んでいる場所にかかわらず関係があります。
データ確認日:
-
南海トラフ地震が今後30年以内に起きる確率 (別の計算方法では20〜50%)
60〜90%程度以上
2026年1月1日時点の評価
-
南海トラフ巨大地震で想定される死者数 (最大の場合)
約29.8万人
2025年3月公表の被害想定
-
首都直下地震 (都心南部直下地震) で想定される死者数 (最大の場合)
約1.8万人
2025年12月公表の被害想定
原因から影響までの流れ
- プレート境界に位置する国土
- 沿岸や大都市への人口・産業の集中
- 大規模地震・津波
- 停電・物流の停止
- 復旧費用と財政への負担
矢印は、統計的に証明された因果関係ではなく、主な伝わり方を示しています。
いま何が起きている?
政府の地震調査委員会は、将来の地震の起きやすさを確率で示す「長期評価」を公表しています。静岡県沖から九州沖にのびる南海トラフ沿いで起きるマグニチュード8〜9クラスの地震は、今後30年以内の発生確率が「60〜90%程度以上」と評価されています (2026年1月1日時点)。別の計算方法では「20〜50%」という値も示されています。[2]
この2つの数字は、2025年9月に計算方法が見直されたときから並べて公表されるようになりました。それまでは「80%程度」とされていました。地震調査委員会は、2つの方法はどちらも科学的な根拠があり優劣をつけられないと説明しています。[1]
南関東の直下でプレートが沈み込むことで起きるマグニチュード7程度の地震は、30年以内の確率が70%程度と評価されています (2026年1月1日時点)。[2] 内閣府はこれらの地震について被害想定を見直し、南海トラフは2025年3月、首都直下は2025年12月に新しい想定を公表しました。[3][5]
数字で見る
被害想定は「もっとも被害が大きくなる条件」で計算した推計です。必ずこのとおりになるという予測ではなく、対策を考えるための目安として使われます。
| 項目 | 南海トラフ巨大地震 (2025年3月公表) | 首都直下地震・都心南部直下 (2025年12月公表) |
|---|---|---|
| 死者 | 最大約29.8万人 | 約1.8万人 |
| 全壊・焼失する建物 | 最大約235万棟 | 約40万棟 |
| 経済的な被害 | 資産等の被害 約224.9兆円、経済活動への影響 約45.4兆円 | 約83兆円 |
| 災害関連死 (上の死者数とは別) | 最大約2.6万〜5.2万人 | 約1.6万〜4.1万人 |
首都直下地震の列の数字は、内閣府の首都直下地震対策検討ワーキンググループ報告書の概要によります。同じ想定では、避難者が約480万人、帰宅困難者が約840万人にのぼるとされています。[5]
災害関連死とは、建物の倒壊や津波で直接亡くなるのではなく、避難生活での体調悪化などで亡くなることです。南海トラフの想定では、最大約2.6万〜5.2万人と推計されています。[3]
- 2008年 79%
- 2023年 90%
なぜ起きる?
日本列島は、複数のプレート (地球の表面をおおう岩盤) がぶつかり合う場所にあります。海側のプレートが陸側の下に沈み込むときにひずみがたまり、それが一気に解放されると大きな地震と津波が起きます。南海トラフ沿いでは、歴史的に見て大規模な地震による大きな被害が繰り返されてきました。[4]
被害が大きくなる理由は、地震そのものの強さだけではありません。東京圏は人口と建物の数がきわめて多く、政治・行政・経済の中枢機能も集まっているため、同じ揺れでも被害の総量が大きくなります。[5]
一方で、被害は備えによって変わります。南海トラフの想定では、早く避難しようという意識が低い場合の津波による死者は約21.5万人ですが、全員がすぐに避難を始めればこの数は7割減ると試算されています。[4]
よくある誤解
どんな選択肢がある?
どれかひとつが正解というわけではありません。それぞれに、期待できることと、負担や副作用があります。
建物の耐震化や堤防などハード面の整備を急ぐ
- 期待できること
- 揺れや津波による被害そのものを減らせます。効果が長く続きます。
- 負担・副作用
- 費用と時間がかかります。古い住宅の持ち主が高齢で、改修費を出しにくい場合もあります。
避難の訓練や情報提供などソフト面を重視する
- 期待できること
- 比較的少ない費用で始められ、津波による死者を大きく減らせる可能性があります。
- 負担・副作用
- 一人ひとりの行動に左右されます。建物やライフラインの被害は減りません。
危険な地域から住まいや施設を移す
- 期待できること
- 被害を受ける人と建物そのものを減らせます。
- 負担・副作用
- 移転の費用が大きく、住み慣れた土地や仕事を離れる負担があります。合意づくりにも時間がかかります。
被災後の復旧・復興に備えて、財源や体制を事前に用意する
- 期待できること
- 被災したあとの立ち直りを早められます。
- 負担・副作用
- いつ起きるかわからない災害のために、平時の予算や人員を割くことになります。
これから見るべき指標
- 地震発生確率 (長期評価)
- 地震調査委員会が、毎年1月1日を基準日として計算し直した値を公表しています。
出典: 地震調査研究推進本部「長期評価結果一覧 (活断層及び海溝型地震の長期評価結果一覧、2026年1月1日での算定)」
- 被害想定の死者数・全壊焼失棟数
- 内閣府が対策の進み具合をふまえて見直します。前回からどれだけ減ったかが対策の効果の目安になります。
- 住宅の耐震化率
- 2008年の約79%から2023年には約90%に上がっています。残りの住宅をどう減らすかが課題です。
- 企業のBCP策定率
- BCPは、災害時にも事業を続けるための計画です。2023年時点で大企業は約76%、中堅企業は約46%です。
ほかの問題とのつながり
この課題は、次の課題の原因や結果になっています。つながりは「主な伝わり方」であり、統計的に証明された因果関係とは限りません。
-
地域とインフラ
インフラ老朽化
記事あり古くなった橋や水道管などは、強い揺れで壊れやすくなります。インフラの更新が遅れると、被害が広がり復旧にも時間がかかります。
-
気候・自然・災害
豪雨・洪水・土砂災害リスク
記事あり地震と豪雨はどちらも避難や復旧の体制を必要とします。続けて起きると、人手や予算の取り合いになります。
-
地域とインフラ
空き家・老朽住宅問題
記事あり管理されていない古い住宅は、倒壊して避難路をふさいだり、火災が広がるきっかけになったりするおそれがあります。
-
食料とエネルギー
エネルギー安全保障
記事あり首都直下地震の想定では、火力発電所の停止などで被災直後に最大約5割の建物が停電するおそれがあるとされています。[6]
-
暮らしと経済
財政赤字・政府債務
記事あり想定される経済被害は数十兆〜数百兆円の規模です。復旧・復興の費用をどうまかなうかは、国の財政の余力と関係します。
出典・更新日
データ確認日:
- [1] 地震調査研究推進本部「「南海トラフの地震活動の長期評価(第二版一部改訂)」の手引き」 公表: 2025年9月 / 確認: 2026年10月11日
- [2] 地震調査研究推進本部「長期評価結果一覧 (活断層及び海溝型地震の長期評価結果一覧、2026年1月1日での算定)」 公表: 2026年1月 / 確認: 2026年10月11日
- [3] 内閣府 (防災担当)「南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ報告書 概要」 公表: 2025年3月 / 確認: 2026年10月11日
- [4] 内閣府 (防災担当)「広報誌「ぼうさい」第113号 南海トラフ地震の新しい被害想定と実施すべき防災対策」 公表: 2025年度 / 確認: 2026年10月11日
- [5] 内閣府 (防災担当)「首都直下地震対策検討ワーキンググループ 報告書 概要」 公表: 2025年12月 / 確認: 2026年10月11日
- [6] 内閣府 (防災担当)「広報誌「ぼうさい」第115号 首都直下地震の新しい被害想定と実施すべき防災対策」 公表: 2025年度 / 確認: 2026年10月11日
誤りや古い数字を見つけたら、GitHub でこの記事のデータを直して Pull Request を出すか、Issue で教えてください。