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地域とインフラ

水道・下水道の老朽化とは? 蛇口の水と足もとの管で何が起きているのか

水道と下水道は、地下にはりめぐらされた管でできています。その管が古くなる速さに、取り替える速さが追いついていません。断水や道路の陥没、将来の料金にも関わる、だれにとっても身近な問題です。

データ確認日:

原因から影響までの流れ

  1. 過去に整備した管が古くなる
  2. 人口減少による料金収入の減少・人手不足
  3. 更新が追いつかない
  4. 漏水・断水・道路陥没のリスク

矢印は、統計的に証明された因果関係ではなく、主な伝わり方を示しています。

いま何が起きている?

日本の水道管は、2023年度時点で全部で約75万kmあります。このうち約19万kmが、法律で決められた耐用年数の40年を超えています。全体に占める割合 (管路経年化率) は25.3%です。[1]

下水道の管は、2024年度末で全国に約50万kmあります。標準的な耐用年数の50年を過ぎた管は約4万kmで、全体の約7%です。[2]

2025年1月28日には、埼玉県八潮市で下水道管の破損による道路の陥没事故が起きました。これを受けて国土交通省は、直径2m以上で1994年度以前に設置された下水道管を調べるよう、全国の自治体に求めました。[3]

2026年2月末時点の結果では、目で見て調べた5,121kmのうち748kmで対策が必要とされました。このうち201kmは、原則1年以内の対策が必要とされています。地面の中の空洞も96か所見つかり、すべて対策が済んでいます。[3]

数字で見る

標準耐用年数50年を過ぎた下水道管の長さ (2024年度末は実績、それ以降は国土交通省の見込み)
  • 2024年度末 4万km
  • 2034年度末 (見込み) 11万km
  • 2044年度末 (見込み) 23万km

出典: 国土交通省「下水道の維持管理」

50年を過ぎた下水道管は、10年後には約11万km (全体の約22%)、20年後には約23万km (約45%) に増える見込みです。下水処理場でも、2023年度末で約2,200か所のうち約2,100か所で、機械や電気設備が標準耐用年数の15年を過ぎています。[2]

水道管と下水道管の古さ (水道管は国土技術政策総合研究所、下水道管は国土交通省「下水道の維持管理」による)
水道管 (2023年度時点)下水道管 (2024年度末)
管の総延長約75万km約50万km
耐用年数を過ぎた管約19万km (40年超)約4万km (50年超)
全体に占める割合25.3%約7%

出典: 国土交通省 国土技術政策総合研究所「老朽水道管路の点検、更新の効率化に関する検討 (研究動向・成果)」

水道管を1年間に取り替えた割合 (管路更新率) は、2023年度の全国平均で約0.61%でした。このペースが続くと、20年後には管路経年化率が約71%になると見込まれています。[1]

地震への備えも途上です。病院や避難所などの重要な施設のうち、つながっている水道管と下水道管の両方が耐震化されている施設は、2024年度末時点で約9%でした。[4]

なぜ起きる?

主な伝わり方は3つあると考えられます。1つ目は、過去にまとめて整備された管が、同じ時期に古くなることです。下水道では、50年を過ぎた管が今後20年で約4万kmから約23万kmに増える見込みです。[2]

2つ目は、お金です。水道や下水道は、主に利用者が払う料金で運営されています。人口が減ると料金収入は減りますが、管の長さはすぐには減らないため、1人あたりの負担が重くなりやすくなります。

3つ目は、人手です。国土技術政策総合研究所が水道事業体に行ったアンケートでは、管の傷み具合を評価していたのは、回答した846事業体のうち150事業体でした。評価をしていない理由として、約半数が人手や予算の不足などを挙げました。[1]

さらに、雨の降り方の変化も運用を難しくします。全国で1時間に50mm以上の雨が降った回数は、2016〜2025年の平均が、1976〜1985年の平均の約1.5倍に増えています。下水道が流しきれない雨が増えると、浸水の対策も必要になります。[6]

よくある誤解

よくある誤解

「耐用年数を過ぎた管は、すぐに壊れる」

実際は

耐用年数は会計などで使う目安の年数で、過ぎたらすぐ使えなくなるわけではありません。下水道の調査でも、目で見て調べた5,121kmのうち対策が必要とされたのは748kmでした。ただし、傷み具合は調べないと分からないため、点検が欠かせません。[3]

よくある誤解

「道路の陥没は、八潮市だけの特別な事故だ」

実際は

全国の調査では、地面の中の空洞が96か所見つかりました (2026年2月末時点、すべて対策済み)。事故になる前に見つけて直すことが重要です。[3]

よくある誤解

「水道はほぼ全員に届いているのだから、もう心配はない」

実際は

水道の普及率は98%を超えていますが、災害には弱い面があります。2024年の能登半島地震では約13.6万戸が断水しました。行き渡ったあとは、保ち続けることが課題になります。[5]

どんな選択肢がある?

どれかひとつが正解というわけではありません。それぞれに、期待できることと、負担や副作用があります。

料金や税金を増やして、更新を早める

期待できること
古い管を計画的に取り替えられ、漏水や陥没、断水のリスクを下げられます。
負担・副作用
水道料金や下水道使用料の値上げ、または税金による負担が必要です。工事を担う人手も確保しなければなりません。

近くの市町村と事業をまとめる (広域化)

期待できること
職員や設備を共有でき、小さな事業体でも技術者を確保しやすくなります。
負担・副作用
料金や施設の状態が市町村ごとに違うため、調整に時間がかかります。地域の事情に合わせた運営がしにくくなることもあります。

民間企業の技術や資金を活用する

期待できること
点検や運転の効率化が期待できます。人手不足を補う手段にもなります。
負担・副作用
サービスの質や料金をだれがどう監視するかを決めておく必要があります。任せる側の自治体にも、内容を確かめる力が求められます。

優先順位をつけ、施設を小さくする

期待できること
影響の大きい管から先に直し、人口が減った地域では施設を小さくすることで、費用を抑えられます。
負担・副作用
後回しになる地域が出ます。集落によっては、これまでと違う方法で水を届けることになる場合があります。

これから見るべき指標

水道の管路経年化率と管路更新率
古い管の割合と、1年間に取り替えた割合です。更新率が上がらないと、経年化率は上がり続けます。

出典: 国土交通省 国土技術政策総合研究所「老朽水道管路の点検、更新の効率化に関する検討 (研究動向・成果)」

50年を過ぎた下水道管の長さ
国土交通省が年度末ごとの長さと将来の見込みを示しています。

出典: 国土交通省「下水道の維持管理」

下水道管の点検結果と対策の進み具合
全国特別重点調査で対策が必要とされた748kmが、どれだけ直されたかを確かめます。

出典: 国土交通省「下水道管路の全国特別重点調査の結果を公表します」

上下水道施設の耐震化率
浄水場や下水処理場、重要な施設につながる管などの耐震化の状況です。年度末時点の値が公表されます。

出典: 国土交通省「上下水道施設の耐震化状況 (令和6年度末時点)」

ほかの問題とのつながり

この課題は、次の課題の原因や結果になっています。つながりは「主な伝わり方」であり、統計的に証明された因果関係とは限りません。

  • 地域とインフラ

    インフラ老朽化

    記事あり

    道路や橋と同じように、過去に整備した施設がいっせいに古くなり、直す費用と人手が足りなくなっています。

  • 人口と家族

    人口が減った地域では料金収入が減り、長い管を少ない利用者で支えることになります。

  • 気候・自然・災害

    水道水の安全を保つには、化学物質の検査や浄水の設備にも費用と人手が必要です。

出典・更新日

データ確認日:

  1. [1] 国土交通省 国土技術政策総合研究所「老朽水道管路の点検、更新の効率化に関する検討 (研究動向・成果)」 公表: 2026年 / 確認: 2026年10月11日
  2. [2] 国土交通省「下水道の維持管理」 確認: 2026年10月11日
  3. [3] 国土交通省「下水道管路の全国特別重点調査の結果を公表します」 公表: 2026年4月 / 確認: 2026年10月11日
  4. [4] 国土交通省「上下水道施設の耐震化状況 (令和6年度末時点)」 確認: 2026年10月11日
  5. [5] 国土交通省「水道施設の耐震化の推進」 確認: 2026年10月11日
  6. [6] 気象庁「大雨や猛暑日など (極端現象) のこれまでの変化」 確認: 2026年10月11日

誤りや古い数字を見つけたら、GitHub でこの記事のデータを直して Pull Request を出すか、Issue で教えてください。