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政治・制度

少子化対策はなぜ効果が見えにくいのか

日本は30年以上、少子化への対策を続けてきました。子育て支援に使うお金は増えましたが、生まれる子どもの数は減り続けています。対策にかかるお金は税や保険料として多くの人が負担するため、何にどれだけ効果があるのかは、子育て世帯だけでなく全員に関わる問題です。

データ確認日:

原因から影響までの流れ

  1. 子育て支援の拡充
  2. 結婚の減少・親世代の人口減は続く
  3. 出生数の減少が止まらない
  4. 政策への信頼と負担への納得感の低下

矢印は、統計的に証明された因果関係ではなく、主な伝わり方を示しています。

いま何が起きている?

2025年に生まれた子どもは67万1,270人で、前の年より1万4,903人減りました。1人の女性が一生のあいだに産む子どもの数の目安である合計特殊出生率は1.14で、前の年の1.15から下がっています (いずれも確定数)。[1]

一方で、支援は広げられてきました。政府は2023年12月に「こども未来戦略」を決め、3.6兆円程度の支援の拡充 (加速化プラン) を進めています。児童手当は高校生の年代まで支給されるようになり、3人目以降の子どもには月3万円が支給されます。[3][7]

政府はこの戦略のなかで、若い世代の人口が急に減る2030年代に入るまでを、少子化の流れを反転できるかどうかの「ラストチャンス」と位置づけています。[3]

数字で見る

家族向けの社会支出と出生の推移 (支出は年度、出生は暦年の確定数)
年・年度家族向け社会支出GDP比出生数合計特殊出生率
202010兆7,536億円1.94%84万835人1.33
202112兆3,894億円2.15%81万1,622人1.30
202211兆2,470億円1.90%77万759人1.26
202311兆5,187億円1.86%72万7,288人1.20
202412兆2,293億円1.90%68万6,173人1.15

出典: 国立社会保障・人口問題研究所「令和6(2024)年度 社会保障費用統計の概要」

「家族向けの社会支出」は、児童手当や保育・幼児教育の給付など、子どもと子育てに向けた公的な支出をまとめた国際基準 (OECD基準) の数字です。2024年度は12兆2,293億円で、前の年度より6.2%増えました。国内総生産 (GDP) に対する割合は1.90%です。出生数と出生率は厚生労働省の統計によります。[5][2]

合計特殊出生率の推移 (各年の確定数)
  • 1989年 1.57
  • 2005年 1.26
  • 2015年 1.45
  • 2020年 1.33
  • 2025年 1.14

出典: 厚生労働省「令和7年(2025)人口動態統計(確定数)の概況 統計表 (第1表〜第3表)」

出生率は2005年の1.26から2015年の1.45までいったん上がりましたが、その後は下がり続けています。支援が広がった時期と出生率が下がった時期が重なっているため、対策の効果を数字から読み取るのは簡単ではありません。[2]

なぜ起きる?

効果が見えにくい主な理由は4つ考えられます。1つ目は、親になる世代の人数が減っていることです。出生率が同じでも、親世代が少なければ生まれる子どもは減ります。出生数だけを見ると、対策の効果は小さく見えやすくなります。

2つ目は、結婚する人が減っていることです。2025年の婚姻件数は48万9,158組で、2020年の52万5,507組より少なくなっています。子育て世帯への給付は、すでに子どもがいる家庭には届きますが、結婚していない人には届きにくい面があります。[1][2]

3つ目は、お金以外の要因です。2021年の調査で、夫婦が理想の数の子どもを持たない理由として最も多かったのは「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」(52.6%) でした。ただし妻が35歳以上の夫婦では、年齢や体の理由も多く選ばれています。働き方や住まい、家事・育児の分担なども関係するとされています。[6]

4つ目は、効果を確かめること自体の難しさです。対策がなかった場合に出生数がどうなっていたかは、直接は分かりません。効果が出るまでに何年もかかることもあります。「効いていない」のか「もっと下がるのを防いでいる」のかは、専門家のあいだでも見方が分かれます。

よくある誤解

よくある誤解

「日本は子育て支援にほとんどお金を使っていない」

実際は

家族向けの社会支出は2024年度に12兆2,293億円で、GDPの1.90%にあたります。政府の資料によると、この割合は1989年度には0.36%でした。支出は長い目で見ると大きく増えています。[5][3]

よくある誤解

「お金を配れば、出生数はすぐに増える」

実際は

家族向けの支出が増えた2020年代にも、出生率は1.33 (2020年) から1.14 (2025年) に下がりました。結婚の減少や親世代の人口減など、給付では動かしにくい要因があるためです。ただし、これだけで給付に効果がないとは言い切れません。[2][5]

よくある誤解

「出生数が減っているのだから、対策はすべて無駄だった」

実際は

対策がなければ出生数がもっと少なかった可能性もあり、数字の推移だけでは判断できません。保育の受け皿の整備のように、子育てのしやすさそのものを目的とする政策もあります。出生数だけで評価するかどうかも論点です。

どんな選択肢がある?

どれかひとつが正解というわけではありません。それぞれに、期待できることと、負担や副作用があります。

子育て世帯への給付をさらに厚くする

期待できること
理想の数の子どもを持たない理由として最も多い「お金がかかりすぎる」に直接こたえる方法です。[6]
負担・副作用
大きな財源が必要です。2026年4月分からは、医療保険料とあわせて集める「子ども・子育て支援金」が始まりました。政府は歳出改革などにより実質的な負担は生じないとしていますが、負担が増えるという見方もあります。[4][3]

結婚前の若い世代の雇用・収入・住まいを支える

期待できること
結婚や出産の手前にある不安を減らせる可能性があります。子育て世帯向けの給付が届かない層に働きかけられます。
負担・副作用
賃金や雇用は景気や企業の判断にも左右され、政策で動かせる範囲に限りがあります。出生数への効果を確かめるのも難しくなります。

働き方と家事・育児の分担を変える

期待できること
長時間労働の見直しや育児休業の取得が進めば、お金だけでは解決しない時間の制約を減らせます。
負担・副作用
企業には人員のやりくりや費用の負担が生じます。職場や家庭の習慣に関わるため、変化に時間がかかります。

効果を検証し、政策を入れ替える

期待できること
効果の小さい施策を見直し、限られた財源を効果の大きい施策に回せます。
負担・副作用
効果が出るまで時間がかかる政策は、短い期間の数字では低く評価されがちです。制度がたびたび変わると、将来の見通しが立てにくくなります。

これから見るべき指標

出生数・合計特殊出生率・婚姻件数
厚生労働省の人口動態統計で公表されます。2025年分の確定数は2026年9月に公表されました。

出典: 厚生労働省「令和7年(2025)人口動態統計(確定数)の概況」

家族向けの社会支出とGDP比
国立社会保障・人口問題研究所が毎年まとめます。2024年度分は2026年7月に公表されました。

出典: 国立社会保障・人口問題研究所「令和6(2024)年度 社会保障費用統計の概要」

夫婦の理想の子ども数と予定の子ども数
出生動向基本調査で調べられます。2021年調査では理想が平均2.25人、予定が平均2.01人でした。

出典: 国立社会保障・人口問題研究所「第16回出生動向基本調査 結果の概要」

子ども・子育て支援金の負担額
2026年度から2028年度にかけて段階的に導入されます。会社員などが入る被用者保険の2026年度の支援金率は0.23%で、基本的にその半分を企業が負担します。

出典: こども家庭庁「子ども・子育て支援金制度について」

ほかの問題とのつながり

この課題は、次の課題の原因や結果になっています。つながりは「主な伝わり方」であり、統計的に証明された因果関係とは限りません。

  • 人口と家族

    少子化

    記事あり

    対策が続くなかでも出生数は減り続けており、少子化の現状が対策を評価する出発点になります。

  • 暮らしと経済

    仕事と子育てを両立しにくい状態や、家事・育児の負担の偏りは、給付だけでは変えにくい部分です。

  • 地域とインフラ

    住宅費が高いと、結婚や2人目以降の出産を考えるときの制約になります。

  • 政治・制度

    効果が出るまで何十年もかかる政策を、検証しながら続けられるかが問われます。

出典・更新日

データ確認日:

  1. [1] 厚生労働省「令和7年(2025)人口動態統計(確定数)の概況」 公表: 2026年9月 / 確認: 2026年10月11日
  2. [2] 厚生労働省「令和7年(2025)人口動態統計(確定数)の概況 統計表 (第1表〜第3表)」 公表: 2026年9月 / 確認: 2026年10月11日
  3. [3] 内閣官房「こども未来戦略 (令和5年12月22日閣議決定)」 公表: 2023年12月 / 確認: 2026年10月11日
  4. [4] こども家庭庁「子ども・子育て支援金制度について」 確認: 2026年10月11日
  5. [5] 国立社会保障・人口問題研究所「令和6(2024)年度 社会保障費用統計の概要」 公表: 2026年7月 / 確認: 2026年10月11日
  6. [6] 国立社会保障・人口問題研究所「第16回出生動向基本調査 結果の概要」 確認: 2026年10月11日
  7. [7] こども家庭庁「児童手当制度のご案内」 確認: 2026年10月11日

誤りや古い数字を見つけたら、GitHub でこの記事のデータを直して Pull Request を出すか、Issue で教えてください。