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政治・制度

人権・差別問題とは? 日本でいま何が起きているのか

人権・差別問題とは、性別、障害、国籍、出身などを理由に、不利な扱いを受けたり傷つけられたりする人がいるという課題です。2025年に法務省の機関が新しく救済の手続きを始めた人権侵害の事案は8,207件でした。学校、職場、インターネットなど、だれもが関わる場所で起きています。

データ確認日:

原因から影響までの流れ

  1. 思い込みや偏見
  2. 制度や慣行のずれ
  3. 差別・人権侵害
  4. 働く・住む・学ぶ機会の差

矢印は、統計的に証明された因果関係ではなく、主な伝わり方を示しています。

いま何が起きている?

人権を侵害されたという申し出を受けて、法務省の人権擁護機関 (全国の法務局など) が調査や救済を行う事案を人権侵犯事件といいます。2025年に新しく手続きを始めた件数は8,207件でした。[1]

種類別では、いじめなどの「教育関係」が2,144件で最も多く、次に「名誉・プライバシー関係」が1,996件、パワーハラスメントなどの「労働権関係」が1,449件でした。インターネット上の人権侵害情報に関する事案は1,569件で、法務省は高い水準が続いているとしています。[2]

差別をなくすための法律は、対象ごとに少しずつ作られてきました。2016年には障害者差別解消法、ヘイトスピーチ解消法、部落差別解消推進法が、2019年にはアイヌ施策推進法が施行され、2023年には性の多様性への理解を広げるための法律ができました。[4][5][6][7][8]

数字で見る

人権侵犯事件の新規救済手続開始件数 (各年の確定値、暦年)
  • 2021年 8,581件
  • 2022年 7,859件
  • 2023年 8,962件
  • 2024年 8,947件
  • 2025年 8,207件

出典: 法務省「令和7年における「人権侵犯事件」の状況について (概要) 参考資料」

この件数は、法務省の機関に申し出があり、手続きが始まったものだけを数えています。2025年に寄せられた人権相談は15万2,918件で、手続きに進んだ件数よりずっと多くなっています。[2]

人権侵犯事件の種類別の件数 (2025年、新規救済手続開始、確定値)
種類件数割合
教育関係 (いじめなど)2,144件26.1%
名誉・プライバシー関係1,996件24.3%
労働権関係 (パワハラなど)1,449件17.7%
強制・強要676件8.2%
暴行・虐待671件8.2%
差別待遇313件3.8%

出典: 法務省「令和7年における「人権侵犯事件」の状況について (概要) 参考資料」

男女の格差を国どうしで比べる指標に、世界経済フォーラムのジェンダー・ギャップ指数があります。0が完全不平等、1が完全平等を表し、2026年版の日本は0.670で、145か国のうち117位でした。[3]

なぜ起きる?

主な伝わり方は3つあると考えられています。1つ目は、思い込みや偏見です。悪意がなくても、「外国人だから」「障害があるから」とひとまとめに判断すると、その人の事情を見ないまま断ることになります。法務省が救済した事例には、外国人であることを理由にした入居や診療の拒否が含まれています。[2]

2つ目は、インターネットの広がりです。書き込みはすぐに多くの人に届き、消えにくいため、被害が長く続きます。2025年のインターネット上の事案では、プライバシーの侵害が503件、特定の地域を同和地区だと示すなどの「識別情報の摘示」が494件、名誉毀損が348件でした。[2]

3つ目は、救済の仕組みの限界です。たとえばヘイトスピーチ解消法は、不当な差別的言動は「許されない」と宣言し、啓発や相談を進めるための法律です。[5] 法務省の機関による救済も、助言などの「援助」、削除の「要請」、相手に改めるよう説く「説示」などが中心です。[2]

法務省は、政府から独立した人権機関をつくるよう、国連の機関などから指摘を受けていると説明しています。[9] 一方で、何を差別とするかの線引きや、表現の自由との関係については、さまざまな意見があります。

よくある誤解

よくある誤解

「人権問題は、一部の人だけに関係する話だ」

実際は

2025年に手続きが始まった事案で最も多かったのは、いじめなどの教育関係 (2,144件) で、次が名誉・プライバシー関係、職場のパワーハラスメントなどの労働権関係でした。学校、職場、インターネットという身近な場所で起きています。[2]

よくある誤解

「差別を禁止する法律があるから、違反すれば必ず罰せられる」

実際は

たとえばヘイトスピーチ解消法は、不当な差別的言動は「許されない」と宣言する法律で、国や自治体に相談体制や啓発を求める内容です。[5] 障害者差別解消法では、2024年4月から事業者にも「合理的配慮」(負担が重すぎない範囲で、障害のある人に合わせた対応をすること) が義務になりました。[4]

よくある誤解

「件数が減れば、差別が減ったといえる」

実際は

統計に表れるのは、相談や申し出があったものだけです。インターネット上の事案は、削除要請の単位で数えるため、1回の要請に100件の書き込みが含まれていても1件になります。件数だけでは実際の広がりは分かりません。[2]

どんな選択肢がある?

どれかひとつが正解というわけではありません。それぞれに、期待できることと、負担や副作用があります。

差別を広く禁止する法律や、独立した人権機関をつくる

期待できること
対象ごとに分かれた法律のすき間を埋め、被害を受けた人が訴えやすくなることが期待されます。
負担・副作用
何を差別とするかの線引きが難しく、表現の自由や事業者の判断をどこまで制限するかについて意見が分かれます。新しい機関の権限や費用も決める必要があります。

いまの法律のもとで、相談・啓発・救済を強める

期待できること
すでにある仕組みを使うため、早く取り組めます。法務局の相談は電話のほか、チャットやメールでも受け付けています。[2]
負担・副作用
要請や説示には強制力がないため、相手が応じない場合の実効性に限界があるという指摘があります。

インターネット上の書き込みへの対応を速くする

期待できること
削除が早ければ、被害が広がるのを抑えられます。
負担・副作用
削除の基準があいまいだと、正当な批判や意見まで消されるおそれがあります。運営する事業者の負担も増えます。

実態を調べる統計や調査を充実させる

期待できること
どこで、だれが、どんな不利益を受けているかが分かれば、対策の優先順位を決めやすくなります。
負担・副作用
出身や性のあり方などを尋ねる調査は、個人の秘密に深く関わります。集め方や管理を誤ると、新たな被害を生むおそれがあります。

これから見るべき指標

人権侵犯事件の新規救済手続開始件数
法務省が毎年3月ごろに前年分を公表します。種類別の内訳も分かります。

出典: 法務省「令和7年における「人権侵犯事件」の状況について (概要)」

インターネット上の人権侵害情報に関する事件数
同じ資料で公表されます。削除要請の単位で数えている点に注意が必要です。

出典: 法務省「令和7年における「人権侵犯事件」の状況について (概要) 参考資料」

人権相談の件数
法務局などに寄せられた相談の数です。2025年は15万2,918件でした。

出典: 法務省「令和7年における「人権侵犯事件」の状況について (概要) 参考資料」

ジェンダー・ギャップ指数
世界経済フォーラムが毎年公表し、内閣府が日本の順位を紹介しています。2026年版は2026年9月に発表されました。

出典: 内閣府男女共同参画局「男女共同参画に関する国際的な指数 (GGI ジェンダー・ギャップ指数)」

ほかの問題とのつながり

この課題は、次の課題の原因や結果になっています。つながりは「主な伝わり方」であり、統計的に証明された因果関係とは限りません。

  • 暮らしと経済

    日本で暮らす外国人が増えるなか、住まいや仕事、医療の場面で不利な扱いを受けないようにする仕組みが問われます。

  • 暮らしと経済

    賃金や管理職の割合など、働く場での男女の差は、国際的な指標でも日本の課題とされています。

  • 暮らしと経済

    就職や住まいで不利な扱いを受けると、収入が不安定になりやすく、暮らしの苦しさにつながることがあります。

  • 政治・制度

    特定の集団についての誤った情報がSNSで広がると、偏見や中傷が強まるおそれがあります。

出典・更新日

データ確認日:

  1. [1] 法務省「令和7年における「人権侵犯事件」の状況について (概要)」 公表: 2026年3月 / 確認: 2026年10月11日
  2. [2] 法務省「令和7年における「人権侵犯事件」の状況について (概要) 参考資料」 公表: 2026年3月 / 確認: 2026年10月11日
  3. [3] 内閣府男女共同参画局「男女共同参画に関する国際的な指数 (GGI ジェンダー・ギャップ指数)」 公表: 2026年9月 / 確認: 2026年10月11日
  4. [4] 内閣府「障害を理由とする差別の解消の推進」 確認: 2026年10月11日
  5. [5] 法務省「ヘイトスピーチ、許さない。」 確認: 2026年10月11日
  6. [6] 法務省「部落差別 (同和問題) を解消しましょう」 確認: 2026年10月11日
  7. [7] 内閣官房アイヌ総合政策室「アイヌ政策の概要」 確認: 2026年10月11日
  8. [8] 内閣府「性的指向・ジェンダーアイデンティティ理解増進」 確認: 2026年10月11日
  9. [9] 法務省「パリ原則に準じた国内人権機関設置に関する勧告・要請等」 確認: 2026年10月11日

誤りや古い数字を見つけたら、GitHub でこの記事のデータを直して Pull Request を出すか、Issue で教えてください。