政治・制度
偽情報・誤情報とは? SNSと生成AIの時代に何が起きているのか
偽情報・誤情報とは、事実と違う内容が、わざと、あるいは間違いに気づかれないまま広がることです。総務省の2026年の調査では、過去に広まった偽・誤情報を見聞きした人の回答の48.4%が「正しい」という受け止めでした。災害や選挙、健康についての判断がゆがむおそれがあり、誰もが広める側にもなりえます。
データ確認日:
-
偽・誤情報を見聞きして「正しい」「おそらく正しい」と答えた割合
48.4%
2026年5月 (インターネット調査の結果)
-
偽・誤情報に接した人のうち、何らかの形で広めた人の割合
20.3%
2026年5月 (インターネット調査の結果)
-
SNSを利用している個人の割合 (インターネット利用者)
82.3%
2025年8月末時点 (統計調査の結果)
原因から影響までの流れ
- SNSの普及・生成AIの広がり
- 作るコスト・広めるコストの低下
- 偽情報・情報空間の分断
- 災害対応・選挙・健康などの判断への影響
矢印は、統計的に証明された因果関係ではなく、主な伝わり方を示しています。
いま何が起きている?
総務省は2026年5月、15歳以上の5,640人にインターネットで調査を行いました。過去に実際に広まった偽・誤情報を見聞きした人に真偽をたずねたところ、「正しい情報だと思う」「おそらく正しい情報だと思う」という回答が48.4%でした。[1]
偽・誤情報に接した人のうち、家族や友人に伝えたり、不特定多数に発信したりした人は20.3%でした。年代別では10代が最も高くなっています。[1]
災害のときにも起きています。2024年1月の能登半島地震では、SNS利用者の42.7%が、地震に関する真偽の不確かな情報を1つ以上見かけたと答えました。そのうち約25%は、その情報を知人などに広めたと答えています。[3]
生成AIの利用も急に広がっています。日本で生成AIを使ったことがある人の割合は、2024年度調査の26.7%から、2025年度調査では58.8%になりました (2025年度から15〜19歳が調査対象に加わっています)。[4]
数字で見る
- 正しい・おそらく正しい 48.4%
- どちらともいえない 30.5%
- 誤り・おそらく誤り 21.1%
| 項目 | 割合 |
|---|---|
| リテラシーのテスト (5問) に全問正解 | 5.6% |
| リテラシーのテスト (5問) に全問不正解 | 39.5% |
| 自分のリテラシーは平均的か、平均より高いと思う | 83.0% |
| 偽・誤情報を信じてしまう・だまされる可能性があると思う | 56.4% |
| リテラシーを高める具体的な取組をしていない | 65.8% |
ICTリテラシーは、情報通信サービスを適切に使いこなす力のことです。自分では平均以上と考える人が8割を超える一方、テストでは約4割が全問不正解でした。偽・誤情報を広めた人では全問不正解が48.9%で、広めていない人 (24.7%) の約2倍です。[1]
SNSは暮らしに広く入り込んでいます。2025年8月末時点で、インターネット利用者のうちSNSを利用している個人は82.3%でした。80歳以上でも5割を超えています。[2]
なぜ起きる?
主な伝わり方は3つあると考えられています。1つ目は、作るコストと広めるコストが下がったことです。SNSでは誰でもすぐに発信でき、生成AIを使えば文章や画像を短い時間で作れます。総務省は、AIには偽・誤情報の流通を加速させるリスクがあるとしています。[3]
2つ目は、人の受け止め方のくせです。自分の考えに合う情報を信じやすいといった思考のかたよりを認知バイアスといいます。調査では、偽・誤情報を広めた人の54.2%が「立ち止まって考えたうえで」広めていました。よく考えたつもりでも誤ることがあります。[1]
3つ目は、過信です。AIで作った偽の画像や動画 (ディープフェイク) を「自分は見破ることができる」と答えた人は、テストで全問不正解だった割合が61.5%と、ほかの人より高くなりました。[1]
このほか、SNSが利用者の関心に合う投稿を優先して表示する仕組みによって、似た意見ばかりが目に入り、立場の違う人どうしが同じ事実を共有しにくくなるという指摘もあります。どの程度影響しているかは、研究者のあいだでも見方が分かれます。
よくある誤解
よくある誤解
「だまされるのは、ネットに不慣れな一部の人だけだ」
実際は
2026年5月の調査では、自分のリテラシーを平均的か平均より高いと考える人が83.0%いましたが、テストでは39.5%が全問不正解でした。偽の動画などを「自分は見破れる」と答えた人ほど、全問不正解の割合が高い (61.5%) という結果も出ています。[1]
よくある誤解
「偽情報を広めるのは、何も考えずに投稿する人だ」
実際は
偽・誤情報を広めた人のうち、立ち止まって考えずに広めた人は45.8%、立ち止まって考えたうえで広めた人は54.2%でした。考えたつもりでも、確かめ方が足りないことがあります。[1]
よくある誤解
「法律で偽情報を禁止すれば解決する」
実際は
何が偽かを誰が決めるのかという問題があり、表現の自由との関係で慎重な議論が必要です。2025年4月に施行された情報流通プラットフォーム対処法は、大規模な事業者に、削除の申出への対応を速めることと運用状況を明らかにすることを義務づけるもので、内容が偽かどうかを国が判定して禁じる仕組みではありません。[5]
どんな選択肢がある?
どれかひとつが正解というわけではありません。それぞれに、期待できることと、負担や副作用があります。
プラットフォーム事業者の責任を重くする
- 期待できること
- 情報が広がる場そのものに対策を求められます。日本では2025年5月までに9社が大規模な事業者に指定され、削除対応の迅速化と運用状況の透明化が義務づけられました。[5]
- 負担・副作用
- 事業者が安全側に判断して、問題のない投稿まで消してしまうおそれがあります。何を消すかの判断を民間企業に任せることへの懸念もあります。
ファクトチェックと正確な情報の発信を強める
- 期待できること
- 表現を制限せずに、判断の材料を増やせます。調査でも、マスメディアやプラットフォーム事業者などに期待することとして「正しい情報の発信」が多く挙がりました。[1]
- 負担・副作用
- 訂正は、元の情報ほど広がらないことがあります。誰が検証するのか、その中立性をどう保つのかも課題です。
リテラシー教育を広げる
- 期待できること
- 一人ひとりが立ち止まって確かめる力がつき、効果が長く続きます。
- 負担・副作用
- 効果が出るまで時間がかかります。調査では65.8%が向上のための取組をしておらず、理由は「取組み方が分からない」が50.4%で最多でした。学校の外にいる大人にどう届けるかが課題です。[1]
AIで作られたことを見分ける技術や表示を広げる
- 期待できること
- 本物かどうかを判断する手がかりになります。総務省は、偽・誤情報への対策技術の開発・実証事業を進めています。[5]
- 負担・副作用
- 表示を外したり、表示のない道具で作ったりすることもできるため、すべてを防ぐことはできません。
法律による規制を強める
- 期待できること
- 悪質な発信に対して、はっきりした歯止めになります。
- 負担・副作用
- 何を偽とするかを公的機関が決めることになり、表現の自由や報道の自由を狭めるおそれがあります。批判的な意見を抑えることに使われないかという懸念もあります。
これから見るべき指標
- 偽・誤情報を「正しい」と受け止めた割合と、広めた人の割合
- 総務省のICTリテラシー実態調査で分かります。2025年と2026年に行われましたが、対象や内容が変わっているため、単純に比べるときは注意が必要です。
- SNSの利用率
- 総務省の通信利用動向調査で毎年公表されます。年齢層ごとの数字も分かります。
- 生成AIの利用経験率
- 生成AIを使ったことがある人の割合です。情報通信白書に載ります。
- 大規模プラットフォーム事業者の指定と運用状況の公表
- 情報流通プラットフォーム対処法にもとづき、指定された事業者が削除などの運用状況を公表します。
ほかの問題とのつながり
この課題は、次の課題の原因や結果になっています。つながりは「主な伝わり方」であり、統計的に証明された因果関係とは限りません。
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技術と未来
サイバーセキュリティ
記事ありアカウントの乗っ取りや情報の盗み出しは、偽情報を広める手段にもなります。技術と情報の両面で備えが要ります。
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暮らしと経済
犯罪・治安の変化
記事あり有名人になりすました偽の広告や、SNSで信用させてお金をだまし取る詐欺は、偽情報が犯罪に使われる例です。
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政治・制度
人権・差別問題
記事あり特定の集団についての事実でない情報が広がると、差別や中傷につながります。一方で、対策が行きすぎると表現の自由を狭めるおそれがあります。
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気候・自然・災害
大規模地震・津波リスク
記事あり大きな地震のときは、真偽の不確かな情報が広がりやすく、救助や避難の判断を妨げるおそれがあります。
出典・更新日
データ確認日:
- [1] 総務省「ICTリテラシー実態調査 (令和8年7月14日)」 公表: 2026年7月 / 確認: 2026年10月11日
- [2] 総務省「令和7年通信利用動向調査 ポイント」 公表: 2026年5月 / 確認: 2026年10月11日
- [3] 総務省「令和6年版情報通信白書 (概要)」 公表: 2024年7月 / 確認: 2026年10月11日
- [4] 総務省「令和8年版情報通信白書 (概要)」 公表: 2026年7月 / 確認: 2026年10月11日
- [5] 総務省「インターネット上の違法・有害情報に対する対応 (情報流通プラットフォーム対処法)」 確認: 2026年10月11日
誤りや古い数字を見つけたら、GitHub でこの記事のデータを直して Pull Request を出すか、Issue で教えてください。