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暮らしと経済

世代間負担の不均衡とは? 誰が払い、誰が受け取るのか

年金・医療・介護などの社会保障は、主に働く世代が納める保険料や税で、高齢の世代を支える仕組みです。高齢者が増えて働く世代が減ると、支える側の負担が重くなりやすくなります。どの世代がどれだけ負担し、どれだけ受け取るかは、いま働いている人にも、これから生まれる人にも関わります。

データ確認日:

原因から影響までの流れ

  1. 高齢者の増加と働く世代の減少
  2. 世代から世代へ支える仕組み
  3. 世代による負担と給付の差
  4. 若い世代の家計・制度への信頼

矢印は、統計的に証明された因果関係ではなく、主な伝わり方を示しています。

いま何が起きている?

1950年には、65歳以上の人1人に対して、15〜64歳の人 (現役世代) が12.1人いました。2025年には2.0人になっています。2070年には1.3人になると推計されています。[1]

年金・医療・介護などで国民に給付されたお金の合計を社会保障給付費といいます。2024年度は138兆3,019億円で、内訳は年金が41.8%、医療が32.4%、介護などの福祉その他が25.8%でした。[2]

この費用をまかなう財源のうち、社会保険料は83兆426億円で、収入全体の53.3%を占めます。税などの公費は58兆4,059億円 (37.5%) でした。保険料の多くは働く世代とその勤め先が納めています。[2]

数字で見る

65歳以上1人に対する15〜64歳の人数 (2070年は推計)
  • 1950年 12.1人
  • 2025年 2人
  • 2070年 1.3人

出典: 内閣府「令和8年版高齢社会白書 (全体版) 第1章 高齢化の現状と将来像」

政策分野別の社会支出 (2024年度、OECD基準、総額142兆8,073億円)
分野金額総額に占める割合
保健 (医療保険、介護保険など)58兆8,478億円41.2%
高齢 (老齢年金など)50兆6,761億円35.5%
家族 (児童手当、保育など)12兆2,293億円8.6%

出典: 国立社会保障・人口問題研究所「令和6(2024)年度 社会保障費用統計の概要」

「高齢」分野は「家族」分野の4倍あまりです。「保健」にはすべての年齢の医療費が入っていますが、医療や介護は年齢が上がるほど使う機会が増えます。前の年度と比べた増加額は、「高齢」が1兆3,133億円、「家族」が7,106億円でした。[2]

税と社会保険料の合計が国民所得に占める割合を国民負担率といいます。2024年度 (実績) は46.7%、2025年度 (実績見込み) は46.1%、2026年度 (見通し) は45.7%です。国の財政赤字も加えた「潜在的国民負担率」は、2026年度に48.4%となる見通しです。[3]

なぜ起きる?

主な伝わり方は3つあると考えられています。1つ目は、制度の基本的な形です。日本の公的年金は、いま働いている世代が納める保険料を、いまの高齢者の年金にあてる方式を基本にしています。医療でも、75歳以上の人の医療費のうち、窓口負担を除いた約4割を現役世代が負担しています。[5]

2つ目は、人口の形の変化です。支える側が減り、支えられる側が増えると、1人あたりの負担を増やすか、給付を減らすか、その両方を行うことになります。同じ制度でも、生まれた時期によって払う額と受け取る額のつり合いが変わります。

3つ目は、調整が将来に向かって行われることです。年金には、働く世代の減少などに合わせて給付の水準を少しずつ調整する仕組みがあります。現役世代の男性の平均的な手取り収入に対する、モデルとなる夫婦の年金額の割合 (所得代替率) は、2024年度は61.2%でした。2024年の検証では、経済が成長するケースで57.6% (2037年度)、過去30年と同じような経済が続くケースで50.4% (2057年度) まで下がる見通しです。[4]

一方で、「世代の対立」として見ることには注意も必要です。高齢者のなかにも所得の低い人がいて、同じ世代のなかの差も大きいからです。年金や介護があることで、働く世代が自分の親を直接支える負担は軽くなっています。いまの若い世代も、いずれ受け取る側になります。

政府は、年齢に関わりなく、すべての国民が能力に応じて負担し支え合う「全世代型社会保障」を目指すとしています。2023年12月には、政府の会議がそのための改革の進め方をまとめました。[6]

よくある誤解

よくある誤解

「高齢者は、みんな医療費の1割しか払っていない」

実際は

75歳以上の人の窓口負担は、2022年10月から、一定以上の所得がある人は2割になりました。対象は加入者全体の約20%です。現役世代並みの所得がある人は、それ以前から3割を負担しています。[5]

よくある誤解

「負担が増えているのは働く世代だけだ」

実際は

2026年4月に始まった「子ども・子育て支援金」は、会社員などが入る医療保険だけでなく、75歳以上の人が入る後期高齢者医療制度の加入者からも集められています。年金の給付水準を少しずつ調整する仕組みも、高齢の世代に関わります。[7][4]

よくある誤解

「いまの若い人は、将来年金をもらえなくなる」

実際は

2024年の検証では、所得代替率は経済の前提によって50.4%〜57.6%まで下がる見通しで、給付がなくなるとはされていません。ただし、1人あたりの経済成長がゼロのケースでは、国民年金の積立金が2059年度になくなるという厳しい見通しも示されています。[4]

どんな選択肢がある?

どれかひとつが正解というわけではありません。それぞれに、期待できることと、負担や副作用があります。

高齢者にも、所得や資産に応じた負担を求める

期待できること
年齢ではなく支払う力に応じて負担することで、働く世代の負担の伸びを抑えられます。
負担・副作用
医療や介護を多く使う人の負担が増え、必要な受診を控える人が出るおそれがあります。資産を正確に把握する仕組みも必要です。

給付の伸びを抑える

期待できること
将来の保険料や税の上昇を抑え、制度を長く続けやすくなります。
負担・副作用
年金が主な収入である人の暮らしが苦しくなります。いまの若い世代が高齢になったときの給付も下がります。

保険料ではなく、税で広く負担する

期待できること
働く世代の賃金にかかる保険料に頼りすぎず、すべての世代が負担を分かち合えます。
負担・副作用
どの税を使うかで、負担する人が変わります。所得の低い人の負担が重くなる税もあり、合意づくりは簡単ではありません。

支える側の人を増やす

期待できること
高齢者や女性など、働きたい人が働きやすくなれば、保険料を納める人が増え、1人あたりの負担が軽くなります。
負担・副作用
健康や家庭の事情で働けない人もいます。人口の減少そのものは止められません。

子育て世帯や若い世代への支援を厚くする

期待できること
若い世代が受け取る給付が増え、世代のあいだのつり合いが取りやすくなります。
負担・副作用
新しい財源が必要です。2026年度の子ども・子育て支援金は、会社員などの場合、標準報酬月額の0.23%を本人と勤め先で半分ずつ負担します。[7]

これから見るべき指標

65歳以上1人を支える現役世代の人数
15〜64歳の人口を65歳以上の人口で割った数です。毎年の高齢社会白書に載ります。

出典: 内閣府「令和8年版高齢社会白書 (全体版) 第1章 高齢化の現状と将来像」

社会保障給付費と、その分野別の内訳
年金・医療・福祉などに、1年間でどれだけ給付されたかを示します。毎年夏ごろに前々年度分が公表されます。

出典: 国立社会保障・人口問題研究所「令和6(2024)年度 社会保障費用統計の概要」

国民負担率
税と社会保険料の合計が国民所得に占める割合です。毎年3月ごろに見通しが公表されます。

出典: 財務省「令和8年度の国民負担率を公表します」

年金の所得代替率
現役世代の男性の平均的な手取り収入に対する、モデルとなる夫婦の年金額の割合です。少なくとも5年ごとの「財政検証」で見通しが示されます。

出典: 厚生労働省「令和6(2024)年財政検証結果の概要 (第16回社会保障審議会年金部会 資料1)」

ほかの問題とのつながり

この課題は、次の課題の原因や結果になっています。つながりは「主な伝わり方」であり、統計的に証明された因果関係とは限りません。

  • 暮らしと経済

    社会保障の費用を借金でまかなうと、その返済は将来の世代の負担になります。

  • 暮らしと経済

    年金・医療・介護の給付が増えるほど、誰がどう負担するかの調整が難しくなります。

  • 人口と家族

    少子化

    記事あり

    生まれる子どもが減ると、将来の支え手が減り、1人あたりの負担が重くなりやすくなります。

  • 政治・制度

    負担と給付の見直しは、効果が出るまでに数十年かかり、長い目で続ける必要があります。

出典・更新日

データ確認日:

  1. [1] 内閣府「令和8年版高齢社会白書 (全体版) 第1章 高齢化の現状と将来像」 公表: 2026年 / 確認: 2026年10月11日
  2. [2] 国立社会保障・人口問題研究所「令和6(2024)年度 社会保障費用統計の概要」 公表: 2026年7月 / 確認: 2026年10月11日
  3. [3] 財務省「令和8年度の国民負担率を公表します」 公表: 2026年3月 / 確認: 2026年10月11日
  4. [4] 厚生労働省「令和6(2024)年財政検証結果の概要 (第16回社会保障審議会年金部会 資料1)」 公表: 2024年7月 / 確認: 2026年10月11日
  5. [5] 厚生労働省「後期高齢者の窓口負担割合の変更等 (令和3年法律改正について)」 確認: 2026年10月11日
  6. [6] 内閣官房 全世代型社会保障構築会議「全世代型社会保障構築を目指す改革の道筋 (改革工程) について」 公表: 2023年12月 / 確認: 2026年10月11日
  7. [7] こども家庭庁「子ども・子育て支援金制度について」 確認: 2026年10月11日

誤りや古い数字を見つけたら、GitHub でこの記事のデータを直して Pull Request を出すか、Issue で教えてください。