政治・制度
行政DX・制度の断片化とは? 役所のシステムがばらばらだと何が困るのか
行政DXとは、役所の手続きや仕事をデジタルの力で作り変えることです。日本では、自治体がそれぞれ別のシステムを作ってきたため、そろえる作業に時間がかかっています。国が期限とした2025年度末までに新しい共通の仕様へ移れなかったシステムは、全体の約3割でした。引っ越し、子育て、介護、税、災害時の支援など、暮らしの手続きの速さと正確さに関わります。
データ確認日:
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期限までに標準のシステムへ移れなかった自治体システムの割合 (3万4,366のうち1万13)
29.1%
2025年度末 (2026年3月末) 時点
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移れなかったシステムを1つ以上持つ自治体 (全1,788団体の56.8%)
1,015団体
2025年度末 (2026年3月末) 時点
-
マイナンバーカードの保有枚数の、人口に対する割合
84.5%
2026年9月末時点 (人口は2026年1月1日時点)
原因から影響までの流れ
- 自治体ごとに別々のシステム・様式
- 制度が変わるたびに個別の改修
- 行政DXの遅れ・制度の断片化
- 手続きの負担・支援の遅れ
矢印は、統計的に証明された因果関係ではなく、主な伝わり方を示しています。
いま何が起きている?
住民票、税、介護保険、児童手当などの仕事には、どの自治体でもコンピューターのシステムが使われています。ただ、その中身は自治体ごとに少しずつ違っていました。デジタル庁は、このために制度が変わるたびの改修に人手とお金がかかり、クラウド (インターネット経由で使う共同のコンピューター) の利用も進みにくいと説明しています。[1]
そこで国は2021年に法律を作り、20の事務について、システムを国の決めた共通の仕様 (標準準拠システム) に合わせることにしました。移す期限は、原則として2025年度末でした。[1]
期限の時点で、対象の3万4,366システムのうち2万4,353 (70.9%) は移り終えました。残る1万13 (29.1%) は間に合わず、国が引き続き支援する「特定移行支援システム」になりました。こうしたシステムを1つでも持つ自治体は、全1,788団体のうち1,015団体 (56.8%) です。[2]
数字で見る
| 主な理由 | システム数 | 該当するシステムを持つ団体数 |
|---|---|---|
| 事業者の人手不足による開発・移行作業の遅れなど | 9,590 | 987 |
| 自治体が独自に開発したシステムで運用している | 190 | 26 |
| 今の事業者が標準のシステムを開発せず、代わりの調達の見込みも立たない | 189 | 102 |
| 大型汎用機 (メインフレーム) で運用している | 44 | 7 |
| 合計 | 1万13 | 1,015 (重複を除く) |
移れなかった理由のほとんどは、システムを作る事業者の技術者が足りなくなったことでした。デジタル庁は、移行の作業とその直後の運用に、想定より多くの技術者が必要だと分かり、事業者が日程を大きく見直したと説明しています。2026年度末までには、全体の約90%が移り終える見込みとされています。[2]
手続きの入口になるマイナンバーカードは広がっています。2026年9月末時点の保有枚数は1億472万9,857枚で、人口に対する割合は84.5%でした。都道府県別では、最も高い宮崎県が88.4%、最も低い沖縄県が74.6%です。[4]
- 移行を終えた 24,353システム
- 移れなかった (特定移行支援システム) 10,013システム
なぜ起きる?
主な伝わり方は3つあると考えられています。1つ目は、成り立ちです。約1,800ある自治体が、それぞれ自分でシステムを開発し、持ってきました。同じ法律にもとづく仕事でも、画面や帳票、データの形が少しずつ違うため、まとめて直すことが難しくなります。[1]
2つ目は、担い手の不足です。全国の自治体が同じ時期に同じ作業を進めたため、システムを作る事業者の技術者が足りなくなりました。事業者が撤退し、代わりが見つからない例もあります。[2]
3つ目は、制度そのものが分かれていることです。標準化の対象になる事務は、それぞれ別の省庁が担当し、仕様書もその省庁ごとに定めます。福祉、税、災害時の支援などをまたいで情報をつなぐには、システムだけでなく、制度や担当どうしの調整が必要になります。[1]
カードやシステムが整っても、それだけで手続きが楽になるわけではありません。紙や窓口を前提にした仕事の進め方を見直せるかどうかも関係します。何を優先すべきかは、自治体の規模や住民の年齢によっても見方が分かれます。
よくある誤解
よくある誤解
「期限が過ぎたので、自治体のシステムの標準化は失敗した」
実際は
2026年3月末までに、対象の70.9%にあたる2万4,353システムは移り終えました。残りについて国は、おおむね5年以内に移れるよう支援する方針で、2026年度末には全体の約90%が移り終える見込みとしています。評価は、費用や使い勝手も含めてこれから定まります。[2][3]
よくある誤解
「マイナンバーカードが広まれば、行政のデジタル化は完成する」
実際は
カードは本人であることを確かめる道具です。保有枚数の割合は84.5% (2026年9月末時点) に達しましたが、役所の中のシステムは2026年3月末時点で約3割が共通の仕様に移れていません。入口と中身の両方がそろって、手続きは速くなります。[2][4]
よくある誤解
「遅れているのは、自治体にやる気がないからだ」
実際は
移れなかった1万13システムのうち9,590は、システムを作る事業者の人手不足による遅れなどが理由でした。1つの自治体だけでは解決しにくい事情が大きいといえます。[2]
どんな選択肢がある?
どれかひとつが正解というわけではありません。それぞれに、期待できることと、負担や副作用があります。
国が共通の仕様とシステムを強く進める
- 期待できること
- 全国で手続きやデータがそろい、制度が変わったときの改修を一度に済ませやすくなります。自治体をまたぐ引っ越しや、災害時の支援も進めやすくなります。
- 負担・副作用
- 地域ごとの工夫や独自のサービスを続けにくくなることがあります。同じ時期に作業が集中すると、今回のように技術者が足りなくなります。
自治体の事情に合わせて、時間をかけて移す
- 期待できること
- 無理な日程によるシステムの不具合や、職員の負担を抑えられます。
- 負担・副作用
- 古いシステムと新しいシステムが並ぶ期間が長くなり、その分の費用がかかります。自治体による差が残ります。
共同のクラウドに集める
システムより先に、手続きやルールそのものを減らす
- 期待できること
- そもそも要らない申請や書類をなくせば、システムの改修も小さくて済みます。
- 負担・副作用
- 法律や担当する省庁をまたぐ見直しが必要で、合意に時間がかかります。
紙や窓口の手続きも残す
- 期待できること
- デジタルの機器に慣れていない人や、機器を持たない人も取り残されません。
- 負担・副作用
- 紙とデジタルの両方を続けるため、役所の手間と費用は減りにくくなります。
これから見るべき指標
- 標準準拠システムへの移行状況
- 移れずに残っている「特定移行支援システム」の数です。デジタル庁が公表しています。
- 移行後の運用にかかる費用
- 共通化で自治体の負担が実際に軽くなったかを見る手がかりです。デジタル庁が対策をまとめています。
- マイナンバーカードの保有枚数の割合
- 総務省が毎月、月末時点の数字を公表しています。都道府県や年齢による差も分かります。
- 標準化の基本方針の見直し
- 移行の期限や国の支援のしかたを決める方針です。直近では2024年12月に改定されました。
ほかの問題とのつながり
この課題は、次の課題の原因や結果になっています。つながりは「主な伝わり方」であり、統計的に証明された因果関係とは限りません。
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技術と未来
技術革新・DX・AI導入の遅れ
記事あり古いシステムやデータの分断、技術者の不足は、会社のデジタル化が進みにくい理由とも重なります。
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技術と未来
サイバーセキュリティ
記事あり自治体のシステムは住民の大切な情報を扱います。共通化が進むほど、守り方をそろえることが重要になります。
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政治・制度
長期政策形成・実行力
記事あり全国のシステムをそろえるには、何年にもわたって方針と予算を続ける必要があります。
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政治・制度
規制・ルールの複雑化と制度適応
記事あり紙や対面を前提にしたルールが残っていると、システムを新しくしても手続きは変わりにくくなります。
出典・更新日
データ確認日:
- [1] デジタル庁「地方公共団体の基幹業務システムの統一・標準化」 確認: 2026年10月11日
- [2] デジタル庁「移行支援期間における特定移行支援システムの数について (令和8年3月末時点)」 公表: 2026年6月 / 確認: 2026年10月11日
- [3] デジタル庁「地方公共団体情報システム標準化基本方針 改定の概要」 公表: 2024年12月 / 確認: 2026年10月11日
- [4] 総務省「マイナンバーカード交付状況について (令和8年9月末時点)」 公表: 2026年10月 / 確認: 2026年10月11日
誤りや古い数字を見つけたら、GitHub でこの記事のデータを直して Pull Request を出すか、Issue で教えてください。